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大学・研究所にある論文を検索できる 「Anti-thyroid antibodies and thyroid echo pattern at baseline as risk factors for thyroid dysfunction induced by anti-programmed cell death-1 antibodies: A prospective study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Anti-thyroid antibodies and thyroid echo pattern at baseline as risk factors for thyroid dysfunction induced by anti-programmed cell death-1 antibodies: A prospective study

Okada, Norio 岡田, 則男 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
 近年、悪性腫瘍の治療薬として免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)が登場した。その有効性の一方で免疫関連副作用(irAEs)の発生が問題となっている。免疫機序を介すると考えられるirAEsは全身の臓器で認められ、肺、皮膚、腸管、肝臓、神経そして内分泌器官で有害事象が発生する。特に抗programmed cell death-1(PD-1)抗体のpembrolizumab(Pem)やnivolumab(Niv)では、甲状腺機能異常症(TD)が頻度の高い副作用として報告されている。我々は、ICIs開始前の甲状腺自己抗体がNivによる甲状腺障害の高リスクマーカーであることを報告したが、Pemにおいても同様であるかは不明である。また、ICIs開始前に甲状腺自己抗体が陽性である患者の中で、さらに甲状腺障害の高リスク者を判別できる指標はない。甲状腺エコーにおいて、甲状腺の内部エコーの不均一はリンパ球の浸潤と甲状腺濾胞細胞の破壊を示唆することが報告されているが、irAEsとしての甲状腺障害における意義は明らかではない。

【目的】
 抗PD-1抗体投与前の甲状腺自己抗体と甲状腺内部エコーの不均一が、ICIs関連TDの予測因子になり得るかを明らかにする。

【対象と方法】
 内分泌irAEsの臨床的特徴を明確にするため、名古屋大学医学部附属病院で2015年11月からPemおよびNivを含むICIsで治療された患者における前向き研究を開始した(UMIN000019024)。本研究は、2018年10月31日までに当院で抗PD-1抗体のPemまたはNivを使用開始した全例を対象とし、本研究の同意を得られた209例(Pem62例、Niv147例)を対象とした(Fig. 1)。癌腫は悪性黒色腫(n=41)、非小細胞肺癌(n=91)、尿路上皮癌(n=8)、腎細胞癌(n=21)、頭頸部癌(n=28)、胃癌(n=19)、そしてホジキンリンパ腫(n=1)であった(Table. 1, 2)。抗PD-1抗体投与開始前と開始後6週毎に24週後まで甲状腺機能[FT3、FT4、TSH、抗サイログロブリン抗体(TgAb)および抗TPO抗体(TPOAb)、およびTSH受容体抗体(TRAb)]を測定、24週以降は臨床上必要と判断した場合に甲状腺機能を評価した。投与開始前の甲状腺自己抗体(TgAbおよびTPOAb)のいずれかが陽性であった場合は甲状腺エコーを施行した。なおTDは破壊性甲状腺炎と甲状腺機能低下症と定義し、診断は日本甲状腺学会診断ガイドラインを用いた。

【結果】
 抗PD-1抗体209例中、19例(9.1%)で破壊性甲状腺炎または甲状腺機能低下症、1例で甲状腺機能亢進症(バセドウ病の既往がありPem投与開始時は寛解状態の患者)が認められた。CTCAEv4.0に基づいた重症度分類のGrade(G)は、Nivの1例がG3であった以外は全例がG1かG2であった。なお24週以降にTDの発症は認めなかった。投与開始前の甲状腺自己抗体陽性44例におけるTDの累積発症率は、陰性例に比べ有意に高値[15/44(34.1%)vs. 4/165(2.4%), p<0.001](Fig.2C)であった。TDの累積発症率の内訳はPemでは[4/18(22.2%)vs. 0/44(0%)(0%), p<0.01](Fig. 2A)、Nivでは[11/26(42.3%)vs. 4/121(3.3%), p<0.001](Fig. 2B)であった。また抗PD-1抗体における陽性的中率(PPV)および陰性的中率(NPV)は、それぞれ15/44(34.1%)および161/165(97.6%)であった。
 ここで甲状腺自己抗体は高リスクマーカーであることが示されたが、発症率は34.1%であったため、さらなる高リスクマーカーの候補として甲状腺のエコー所見に着目した。甲状腺自己抗体陽性44例について甲状腺内部エコーの評価を行い、均一(Regular echo pattern)、不均一(Irregular echo pattern)の2つに分類した(Fig. 3A, B)。44例中2例は内部エコーが評価不能であり除外された。抗PD-1抗体42例における内部エコー不均一例のTDの累積発症率は、均一例に比べ有意に[13/23(56.5%)vs.1/19(5.3%), p=0.001](Fig.3E)であった。内部エコー不均一例のTDの累積発症率の内訳はPemでは[3/6(50.0%)vs. 0/10(0%), p<0.05(]Fig. 3C)、Nivでは[10/17(58.8%)vs.1/9(11.1%), p<0.05](Fig. 3D)であった。また抗PD-1抗体におけるPPVおよびNPVは、それぞれ13/23(56.5%)および18/19(94.7%)であった。

【考察】
 これまでの既報ではTDの定義は研究により様々であったが、本研究では日本甲状腺学会の診断ガイドラインを用いた。TDの発症率はPemで8.1%、Nivで10.2%であり、この同様な発生率は抗PD-1抗体のクラス効果であることが示唆された。投与開始から発症までの期間は、最長でPemで166日、Nivで126日であり投与開始から6ヶ月以内に発症することが示された。また9例が一時的な甲状腺中毒症の後に甲状腺機能低下症に至り、7例が甲状腺中毒症期なく甲状腺機能低下症に至った。最終的に甲状腺機能低下症に至った15例は全例(1例は補充開始前に転院)が継続したレボチロキシン補充療法を要した。抗PD-1抗体による甲状腺中毒症は、炎症による甲状腺濾胞構造の破壊に起因するため甲状腺機能低下症に至りやすいと考えられた。
 投与前の甲状腺自己抗体の存在と甲状腺内部エコーの不均一が重要であることから、甲状腺に対する自己免疫反応が、抗PD-1抗体によるTDの病因に関与している可能性が高い。エコー輝度の低下や内部エコーの不均一がリンパ球浸潤を示すことを考慮すると、甲状腺に浸潤していたリンパ球が抗PD-1抗体によって活性化され、破壊性甲状腺炎の原因となっていることが強く示唆された。
 本研究から、抗PD-1抗体によるTDは投与開始後24週以内に認められ、そのリスクは投与開始前の甲状腺自己抗体と甲状腺内部エコー所見により判別できることが示された。

【結語】
 甲状腺自己抗体と甲状腺内部エコーを評価することで抗PD-1抗体によるTDのリスクを判別できる。

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