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大学・研究所にある論文を検索できる 「ニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における血清中可溶性PD-L1の予後予測効果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

ニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における血清中可溶性PD-L1の予後予測効果

脇田, 直人 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Prognostic Value of Serum Soluble PD-L1 in
Metastatic Renal Cell Carcinoma Patients
Treated With Nivolumab

脇田, 直人
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8689号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485873
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Prognostic Value of Serum Soluble PD-L1 in Metastatic
Renal Cell Carcinoma Patients Treated With Nivolumab
ニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における
血清中可溶性 PD-L1 の予後予測効果

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
腎泌尿器科学
指導教員:黒田 良祐 教授
脇田

直人

【背景/目的】
現在、転移性腎細胞癌に対する全身治療の選択肢は年々増加しており、その中でも PD-L1 阻
害剤、PD-1 阻害剤、CTLA-4 阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤は治療の中心となっ
てきている。しかし、免疫チェックポイント阻害剤による治療により非常に良好かつ長期的
な治療効果を認める症例を経験する一方で、治療効果を認めず早期に病勢進行を認める症例
も存在する。そのため治療効果の予測因子が求められているが現時点では確立したバイオマ
ーカーは存在していない。
PD-L1 は腫瘍細胞や T 細胞上に発現する膜貫通型タンパクであり、腫瘍免疫や免疫応答に関
連している。以前より免疫組織染色によって評価した腫瘍細胞や腫瘍浸潤リンパ球における
PD-L1 の発現が患者背景、予後、治療効果と関連していることは報告されている。しかし、
免疫組織染色による PD-L1 の発現は繰り返し評価を行うことや画一的に評価することが難し
いことが問題点であった。
近年、PD-L1 が可溶性の形態で血液中にも存在することが報告されている。また、いくつか
の癌種においては可溶性 PD-L1 が予後や治療効果と関連していることが報告されている。し
かし、腎細胞癌患者における可溶性 PD-L1 の予後予測効果についてははっきりしていない。
そこで我々はニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における可溶性 PD-L1 と予
後や治療効果との関連を評価することとした。
【方法】
神戸大学医学部附属病院において 2017 年 11 月から 2019 年 4 月までに転移性腎細胞癌に対
して 2 次治療以降にニボルマブの投与を行った患者を対象として前向き研究を行った。研究
を行うに際して神戸大学臨床研究審査委員会の承認を得ている(承認番号 C180067)。同意取
得後、ニボルマブ治療開始前に血液検体を採取している。採取した血液検体は遠心分離を行
い、血清のみを-80℃で保存し、研究用全自動高感度免疫測定装置 HI-1000 (シスメックス株
式会社)を用いて可溶性 PD-L1 の測定を行った。標的病変については CT もしくは MRI によ
る画像検査で評価した。ニボルマブの投与は全例において 2 週間ごとに 240 ㎎の用量で投与
を開始し、ニボルマブの投与は病勢進行、副作用等により主治医が継続困難と判断するまで
継続している。ニボルマブの投与を継続している症例においては治療開始後 4 週、12 週、24
週、48 週の検体を用いて可溶性 PD-L1 を測定した。患者背景については年齢、性別、BMI、
KPS、ステージ、転移臓器、原発巣の病理組織診断、IMDC リスク分類、ニボルマブの治療
ラインについて記録した。
治療開始前の可溶性 PD-L1 の値を、以前の報告を参考に 0.23ng/ml をカットオフとして 2 群
に分けて治療効果、予後の比較を行った。標的病変の治療効果判定については RECIST ガイ
ドラインに沿って完全奏功、部分奏功、安定、進行で評価した。奏効率は完全奏功もしくは
部分奏功を認めた症例の割合とした。無増悪生存期間、全生存期間についてはカプランマイ
ヤー法を用いて比較を行った。
【結果】

転移性腎細胞癌を有する 43 例が今回の研究に参加した。17 例(39.5%)において可溶性 PD-L1
の値が 0.23ng/ml 未満であり(可溶性 PD-L1 低値群)、26 例(60.5%)において可溶性 PD-L1 が
0.23ng/ml 以上(可溶性 PD-L1 高値群)であった。観察機関の中央値は 26.2 か月。年齢の中央
値は 66 歳であり、32 例(74.4%)が男性あった。原発巣の病理組織診断は 37 例(86.0%)が淡明
細胞型腎細胞癌、5 例(11.6%)が非淡明細胞型腎細胞癌であった。ニボルマブの投与について
は 28 例において 2 次治療として使用されており、15 例において 3 次治療以降の使用であっ
た。
治療効果については可溶性 PD-L1 低値群において可溶性 PD-L1 高値群よりも有意に奏効率
が良好であった(41.2% vs 7.7%; p=0.0191)。無増悪生存期間の中央値については可溶性
PD-L1 低値群において 5.7 か月(2.3-38.6)、可溶性 PD-L1 高値群において 2.3 か月であり
(1.8-17.8)、両群間に統計学的な有意差は認めなかった。一方で、全生存期間の中央値につい
ては可溶性 PD-L1 低値群においては未到達(34.7-未到達)、可溶性 PD-L1 高値群において 24.6
か月(10.9-未到達)であり、可溶性 PD-L1 低値群において優位に長かった(p=0.0323)。
【考察】
今回の研究では、ニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における血清中の可溶
性 PD-L1 と予後、治療効果の関連について評価を行った。可溶性 PD-L1 低値群において、
可溶性 PD-L1 高値群と比較してニボルマブ投与後の画像評価による奏効率は有意に良好であ
り、ニボルマブ投与後の全生存期間も有意に延長していた。
これまで免疫組織染色によって評価した腫瘍細胞や腫瘍浸潤リンパ球の PD-L1 発現が腎細胞
癌患者において、患者背景、予後、治療効果と関連していることは報告されている。しかし
免疫組織染色による評価は侵襲性からも繰り返し評価を行うことが難しく、原発巣と転移巣
の発現の違いや逐次治療を行う中での発現の変化について評価を行うことが困難であった。
また同一症例においても染色を行う部位で発現の違いを認めるため画一的な評価が難しく、
症例間での発現の違いを客観的に比較することも難しかった。一方で可溶性 PD-L1 は血液検
査により簡便に評価を行うことができ、近年腎細胞癌を含めたいくつかの癌腫において、予
後や治療効果との関連が報告されている。今回の研究においても転移性腎細胞癌患者におい
てニボルマブの治療効果と可溶性 PD-L1 の値に関連を認めており、今後腎細胞癌患者に対す
る全身治療の薬剤選択におけるバイオマーカーとなる可能性も考えられた。
一方で、今回の研究においては治療中の可溶性 PD-L1 の推移と治療効果には関連が認められ
なかった。可溶性 PD-L1 が腫瘍病変の病勢のみを反映しているわけではなく、可溶性 PD-L1
発現の機序については不明な部分もあり今後の課題と考える。
今回我々は前向き試験として評価を行ったが、研究の限界として研究対象の患者数が少ない
ことがあげられる。また、可溶性 PD-L1 の値で分けた 2 群間においても患者背景のマッチン
グを行っていない。しかし、長期の観察期間において治療前の可溶性 PD-L1 とニボルマブ投
与後の予後の関連について評価を行うことが可能であった。
【結論】

以前より PD-L1 の発現は予後予測因子となる可能性が指摘されていた。今回我々は可溶性
PD-L1 がニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における治療効果や予後の予測
因子となる可能性を示した。腎細胞癌患者に対する全身療法の選択肢が増えている中で、適
切な逐次治療を選択することは重要である。可溶性 PD-L1 の測定は簡便かつ低侵襲で行うこ
とができ、腎細胞癌治療における治療効果予測のバイオマーカーとしての有用性について更
なる研究が望まれる。

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

甲第3
2
9
1号

Prog
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論文題目
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脇田直人

氏 名

ニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者に
おける血清中可溶性 PD-Llの予後予測効果
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審査委 員

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副 査

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神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)
(要旨は 1,000
字∼ 2,000
字程度)

〈背景〉
現在、転移性腎細胞癌に対する全身治療の選択肢は年々増加しており、その中でも免疫チェ
ックポイント阻害剤は治療の中心となってきている。しかし、免疫チェックポイント阻害剤による治
療により非常に良好かつ長期的な冶療効果を認める症例が存在する一方で、治療効果を認めず
早期に病勢進行を認める症例も存在する。そのため治療効果の予測因子が求められているが現
時点では確立したバイオマーカーは存在していない。

PD-Llは腫瘍免疫や免疫応答に関連している腫瘍細胞や T細胞上に発現する膜貫通型タン
パクである。以前より免疫組織染色によって評価した腫瘍細胞や腫瘍浸潤リンパ球における

PD-Llの発現が患者背景、予後、治療効果と関連していることは報告されている。しかし、免疫組
織染色による PD-Ll の発現は繰り返し評価を行うことや画ー的に評価することが難しいことが問
題点であった。
近年、 PD-Ll が可溶性の形態で血液中にも存在することが報告されている。また、いくつかの
癌種においては可溶性 PD-L1が予後や治療効果と関連していることが報告されている。しかし、
腎細胞癌患者における可溶性 PD-L1の予後予測効果についてははっきりしていない。そこで筆
者らはニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患者における可溶性 PD-L1と予後や治療
効果との関連を本研究で評価している。
〈方法〉
筆者らは神戸大学医学部附属病院においてニボルマブによる治療を行った転移性腎細胞癌患
者を対象とした前向き研究を行っている。ニボルマブ冶療開始前と治療中の血液検体を採取し、

I
1
0
0
0を用いて血清中の可溶性 PD-L1を測定している。
研究用全自動高感度免疫測定装置 H
.
2
3
ng/
m
lをカットオフ値として
以前の報告を参考に、治療開始前の可溶性 PD-Llの値について 0
可溶性 PD-Ll低値群と可溶性 PD-L1高値群の 2群に分けて治療効果と予後の比較を行ってい


〈結果〉
結果として、治療効果については可溶性 PD-Ll低値群において可溶性 PD-Ll高値群よりも
有意に奏効率が良好であったと筆者らは報告している。また無増悪生存期間については、両群
間に統計学的な有意差は認めなかったが、全生存期間については可溶性 PD-Ll高値群と比較
して、可溶性 PD-L1低値群において優位に長かったと報告している。これらの結果から筆者らは
転移性腎細胞癌患者における治療前の可溶性 PD-Llが治療効果や予後の予測因子となる可能
性があると述べている。
本研究において研究対象の患者数が少なく、可溶性 PD-L1低値群と可溶性 PD-Ll高値群の

2群間における患者背景のマッチングは行っていない。全生存期間の予測因子についても多変
量解析において !MDCリスク分類が有意な予測因子となっており、可溶性 PD-Llの有用性を述
べるには !MDCリスク分類等の患者背景をマッチングさせた上での評価が必要ではあると考える。

しかし前向きに行った研究において、十分な観察期間を確保した本研究の結果については一定
の価値があると考える。
また本研究において、治療開始後の可溶性 PD-L1の値についても測定を行っている。しかし、
治療開始前後の可溶性 PD-Llの変化と画像検査での病変のサイズ変化との間には有意な関連
を認めていない。筆者らは可溶性 PD-Ll が癌の病勢のみを反映しているのではなく、炎症反応
や免疫反応を反映している可能性を指摘している。現時点では可溶性 PD-Ll発現の機序につい
ては解明されておらず、今後可溶性 PD-L1を用いた評価を行う上での課題であると考える。
腎細胞癌患者に対する全身療法の選択肢が増えている中で、適切な逐次治療を選択すること
は重要であると考える。可溶性 PD-Llの測定は簡便かつ低侵襲で行うことができ、腎細胞癌治療
における治療効果予測のバイオマーカーとしての有用性について更なる研究が望まれる。
〈結論〉
本研究は患者数や患者背景のマッチングについてはまだ検討の余地があるが、転移性腎細胞
癌患者における可溶性 PD-Llの予後予測効果を明らかにし重要な知見を得たものとして価値あ
る集積であると認める。
よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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