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書き出し

腸管ベーチェット病患者に対する抗TNFα抗体製剤の有効性と予測因子

宮﨑, はる香 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Efficacy and predictor of anti-TNFα agents in
patients with intestinal Behçet's disease

宮﨑, はる香
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8509号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482257
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Efficacy and predictor of anti-TNFα agents in patients with
intestinal Behçet's disease
腸管ベーチェット病患者に対する抗 TNFα抗体製剤の有効性と予測因子

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
消化器内科学
(指導教員:児玉
宮﨑

裕三 教授)

はる香

【背景】
ベーチェット病(BD)は、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚病変、眼症状、外陰部潰瘍を主症
状とし種々の臓器を侵す原因不明の炎症性疾患である。腸管 BD は消化管に病変を認めるもので、
典型的には回盲部に打ち抜き潰瘍を認める。腸管 BD では消化管穿孔や大量出血などの重大なリス
クがあるため疾患活動性のコントロールが重要となる。
これまで腸管 BD に対しては 5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイド剤、チオプリン製剤と
いった薬剤が使用されてきた。ただ、こういった治療を行っても活動性が抑えられず外科手術が
回避できないような症例を時に経験する。近年、重症あるいは既存治療に抵抗性の腸管 BD 患者に
対してインフリキシマブやアダリムマブといった抗 TNFα抗体製剤の有効性が示されている。しか
し、これらの薬剤による長期的な有効性ははっきりしていない。そこで当院における腸管 BD 患者
に対する抗 TNFα抗体製剤の有効性、治療継続率および治療継続の予測因子について後方視的に検
討を行った。
【方法】
2009 年 1 月から 2020 年 6 月の期間に当院において抗 TNFα抗体製剤(インフリキシマブ、アダリ
ムマブ)の投与を初めて受けた腸管 BD の症例を対象とした。インフリキシマブおよびアダリムマ
ブは添付文書通りのプロトコルで投与を行った。すなわち、インフリキシマブは 5 mg/kg を 0、2、
6 週、以後 8 週間隔で経静脈的に投与した。アダリムマブは初回に 160 mg、初回投与 2 週後に 80
mg、初回投与 4 週間後以降は 40 mg を 2 週に 1 回皮下注射した。
投与プロトコル通りに抗 TNFα抗体製剤を継続投与できた症例を治療継続群、プロトコルから逸脱
(増量、期間短縮、抗 TNFα抗体製剤の変更、他薬剤の追加など)した症例を治療非継続群と定義
し、まず抗 TNFα抗体製剤の継続投与の有無を検討することで有効性と安全性を評価した。
続いて疾患活動性評価指標を用いて抗 TNFα抗体製剤の有効性を検証した。この指標では、消化器
症状スコアと内視鏡スコアを組み合わせて評価を行った。消化器症状スコアは 0 点から 4 点で消
化器症状をスコア化し(0:症状なし、1:日常生活に影響なし、2:日常生活へわずかに影響があ
る、3:日常生活に影響がある、4:日常生活に非常に影響がある)
、内視鏡スコアは治療前の潰瘍
サイズと比較して 0 点から 3 点で内視鏡所見をスコア化(0:完全な粘膜治癒、1:元の潰瘍の 1/4
以下のサイズ、2:元の潰瘍の 1/4 から 1/2 のサイズ、3:1/2 以上のサイズあるいは増悪)した。
いずれのスコアも 1 点以下を著明改善(Marked Improvement)
、いずれのスコアも 0 点を完全寛解
(Complete Remission)と定義した。また内視鏡スコアが 0 点のものを粘膜治癒(Mucosal Healing)
と定義した。
主要評価項目は抗 TNFα抗体製剤導入後 48 週での治療継続率とした。副次評価項目は著明改善、
完全寛解、粘膜治癒の割合、および治療非継続の予測因子とした。
【結果】
1. 患者背景

腸管 BD で当科通院中の 51 例のうち、29 例が対象となった。男性が 14 例(48.3 %)、診断時年齢
36±14 歳(平均±標準偏差、以下同様)
、抗 TNFα抗体製剤導入時の年齢 42±14 歳であった。イ
ンフリキシマブを投与された症例が 16 例、アダリムマブを投与された症例が 13 例で合った。併
用薬としては副腎皮質ステロイド製剤 20 例(69.0 %)、5-アミノサリチル酸製剤 11 例(37.9 %)

免疫調節薬 18 例(62.1 %)
、コルヒチン 16 例(55.2 %)であった。また腹部手術の既往がある症
例は 4 例(13.8 %)であった。
2. 抗 TNFα抗体製剤の有効性、治療継続率と CRP 値との関連
48 週時点で著明改善、完全寛解、粘膜治癒を認めた症例はそれぞれ 48.3 %、37.9 %、48.3 %であ
った。導入後 96 週においてはそれぞれ 37.9 %(11 例)で著明改善、完全寛解、粘膜治癒を認め
た。抗 TNFα抗体製剤導入後 8 週、48 週での治療継続率はそれぞれ 86.2 %(25 例)、75.9 %(22
例)であった。抗 TNFα抗体製剤導入前のベースラインの CRP 値は、8 週、48 週いずれの時点にお
いても治療非継続群で有意に高かった(1.16±2.09 mg/dl vs 5.93±8.60 mg/dl、0.84±1.41
mg/dl vs 4.86±6.80 mg/dl)

つづいてカプランマイヤー法を用いて治療継続率を分析し、抗 TNFα抗体製剤の種類別(インフリ
シマブ vs アダリムマブ)
、ベースラインの CRP 値別(<1.0 mg/dl vs ≧1.0 mg/dl)でログランク
検定を行った。インフリキシマブ群とアダリムマブ群では有意な差は見られなかったが、ベース
ラインの CRP 値≧1.0 mg/dl の群では治療継続率が有意に低かった。
3. 抗 TNFα抗体製剤の治療非継続の予測因子
抗 TNFα抗体製剤導入後 48 週時点での治療非継続と関連のある因子の同定を行った。単変量解析
では、性別(男性 vs 女性)
、診断時年齢(40 歳以上 vs 40 歳未満)
、診断から抗 TNFα抗体製剤
導入までの期間(5 年以上 vs 5 年未満)、抗 TNFα抗体製剤の種類(インフリキシマブ vs アダリ
ムマブ)
、副腎皮質ステロイド製剤(20 mg/日以上)併用の有無(あり vs なし)は治療非継続に
有意な差がみられなかったが、抗 TNFα抗体製剤導入前のベースラインの CRP 値(1.0 mg/dl 以上
vs 1.0 mg/dl 未満)については CRP 値 1 mg/dl 以上の群で非継続の割合が有意に高かった。多変
量解析でも同様の結果が得られ、抗 TNFα抗体製剤導入前のベースラインの CRP 値 1.0 mg/dl 以
上は抗 TNFα抗体製剤の治療非継続の予測因子であった。
【考察】
BD は原因不明の疾患であるが、遺伝素因や環境因子、そしてその結果引き起こされる免疫異常が
関与していると考えられている。ゲノムワイド完全解析では IL23R-IL12RB2、IL-10、STAT4 といっ
た疾患感受性遺伝子が同定されている。IL12 や IL23 はそれぞれ Th1 系、Th17 系の免疫反応を引
き起こすサイトカインであり、その結果として TNFαを含む炎症性サイトカインが産生される。ま
た STAT4 は Th1 免疫反応において必要な転写因子である。このように TNFαは BD の病態において
重要な役割を果たしていると考えられる。実際に、BD 患者では血中および組織内の TNFα発現が

増加することが示されている。
インフリキシマブやアダリムマブは TNFαに対するモノクローナル抗体であり、腸管 BD に対して
有効であることが示されている。本研究では、腸管 BD 患者に対する抗 TNFα抗体製剤導入後 48 週
時点の治療継続率は約 76%、著明改善の割合は約 48%であった。既報では臨床的改善率は 40-60%と
されており、評価基準や適格患者の違いによる差はあるものの、既報とほぼ同等の結果であると
考える。
また今回の研究では、腸管 BD 患者において抗 TNFα抗体製剤導入前の CRP 値が高値の症例では抗
TNFα抗体製剤の治療継続率が低いことが明らかとなった。
既報では CRP 値は BD の疾患活動性と相関するとされている。CRP は、感染や組織障害の結果マク
ロファージや単球などの自然免疫細胞から産生される IL6 の刺激により肝臓で産生される急性期
蛋白である。IL6 はナイーブ T 細胞の Th17 細胞への分化に関与しており、前述の通り IL23 もまた
Th17 細胞への分化に重要な役割を果たしている。
Th17 細胞から産生された IL17 は IL6 と共に「IL6
発現」の正のフィードバックを行っており、このようなメカニズムが自己免疫疾患の進行に関与
していると考えられる。そのため BD の活動性と CRP 値は相関しており、治療前の CRP 値が高値の
症例では疾患活動性を抑えるためにより多くの抗 TNFα抗体製剤が必要であり、維持療法時におい
て抗 TNFα抗体製剤のトラフ値を十分に保つことができず二次無効となり、治療継続率が低くなる
のではないかと考えられる。
【結語】
腸管 BD 患者に対する抗 TNFα抗体製剤導入後 48 週での治療継続率は 75.9%であった。抗 TNFα抗
体製剤導入前の CRP 値が高値の症例では、治療継続率が有意に低かった。

神 戸 大 学 大 学院 医学(
系)
研究科(博士課程)

論 文審 査 の 結
受付番号

甲 第 3253号

果 の 要 旨

氏 名

宮崎はる香

腸管ベーチェッ ト病患者に対する抗 TNFo
:抗体製剤の有効性と予測因子

E
f
f
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rofanti-TNFaagentsi
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論文題目 │
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主 査

沖 す寸 ?



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fExaminer
審査委員

Examiner

副 査

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副 査

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及晶枯}
人1
各 名i
i

(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)

ベーチェット病 (
B
D
) は種々の臓器を侵す原因不明の炎症性疾患であり、腸管 BDでは回盲部を中心
に類円型の打ち抜き潰瘍を認めることが特徴である 。外科手術に至る症例もあることから、内科的なコ
ントロールが重要となる。今回の研究は、重症あるいは既存治療に抵抗性の腸管 BD 患者に対して有効
性が示されている抗 T
NFo
:抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマプ)の長期的な有効性や効果予測
因子について後方視的に検討した。

2
0
0
9年 1月から 2020年 6月の期間に神戸大学医学部附属病院(以下、当院)において抗 TNFo
:抗体
NFo
:抗体製剤を継続
製剤の投与を初めて受けた腸管 BDの症例を対象とした。投与プロトコル通りに抗 T
投与した症例を治療継続群、投与プロトコルから逸脱した症例を治療非継続群と定義した。抗 T
NFo
:抗
体製剤の継続投与の有無を検討することで有効性と安全性を評価した。また疾患活動性評価指標を用い
て抗 T
NFo
:抗体製剤の有効性を検証した。主要評価項目は抗 TNFo
:抗体製剤導入後 48週での治療継続の
有無とした。副次評価項目は所見の著明改善、完全寛解、粘膜治癒の割合、および治療非継続の予測因
子とした。
腸管 BDで当科通院中の 51例 のうち 2
9例が対象となった。男性 1
4例女性 1
5例、診断時の平均年齢

3
6歳、罹病期間は平均 6年であった。インフリキシマブを投与された症例が 1
6例、アダリムマブを投
与された症例が 1
3例であった。副腎皮質ステロイド製剤が 6
9.
0 %、5
-A
S
A製剤が 37.9%、免疫調節薬

2
.1%、コルヒチンが 5
5.
2%の症例で併用されていた。
が6
8週での治療継続率は 7
5.
9% (
2
2例)であった。4
8週時点で著明改善、完全究
主要評価項目である 4
8.
3%、3
7.
9%、4
8
.3%であった。蒋入後 96週では著明改善、
解、粘膜治癒を認めた症例はそれぞれ 4
完全寛解、粘膜治癒を認めたのはいずれも 3
7.
9
%であった。ベースラインの CRP値は、 8週
、 4
8週いず
れの時点においても治療非継続群で有意に高かった。治療継続率について、抗 TNFo
:抗体製剤の種類別
(インフリシマブ

VS

アダリムマプ)、ベースラインの CRP値別(<1
.0mg
/d1vs ~ 1
.0 mg/d1
) で比較

を行ったところ 、インフリキシマプ群とアダリムマブ群では有意な差は見られなかったが、ベースライ
ンの CRP 値 ~ 1
.0 mg/dlの群では治療継続率が有意に低かった。

抗T
NFa抗体製剤迎入後 48週時点での治療非継続と関連のある因子の同定を行った。性別、診断時年

4
0歳以上
) 、診断から抗 T
N
Fo
:抗体製剤導入までの期間 (
5年以上)、抗 T
N
Fo
:抗体製剤の種類、副
齢 (
瞥皮質ステロイド製剤 (
2
0mg/日以上)併用の有無は治療非継続に有意な差がみられなかったが、ベー
スラインの CRP値については CRP値 1mg/dl以上の群で非継続の割合が有意に高かった。
炉I
L12RB2
、I
L-JO
、STAT4といった BDの疾患感受性追伝子が同定
ゲノムワイド完全解析の結果 IL23

されており、それらの遺伝子変異の結果として T
h
l系や Thl
7系の免疫応答が活性化し T
N
F
o
:が産生さ
れる。BDでは病態の一部に T
NFo
:が関与 していることか ら抗 T
N
F
o
:抗体製剤は有効であると考えられ、
本研究では既存研究と概ね同等の有効性を示した。本研究では、腸管 BDにおいて CRP値が高値の症例
では抗 TN
Fa抗体製剤の治療継続率が低いことが明 らかとな った。 BDで活性化している Thl7系の下流

L
1
7や I
L
6があり、 I
L
6は CRP産生のシグナルでもある。 さらに I
L6は Thl
7への分化促進や I
L
6
には I

の産生の正のフィードバックを行うなどしている。CRP値が高値の症例では疾患活動性を抑えるために
はより多くの抗 TNFa抗体製剤が必要であると考えら治療継続率が下がったものと思われる。
本研究は,腸管 BDに対する抗 TNFa抗体製剤の有効性と安全性を評価したものであるが、従来、
検討されていなかった、投与前 CRP値が高値であることが、腸管 BD に対する抗 TNFa製剤の有
効性を減弱させる予測因子であるという重要な知見を得たものとして価値ある集積であると認め
る。 よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める 。

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