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大学・研究所にある論文を検索できる 「静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変化 : 立位撮影機能搭載MRIを用いて」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変化 : 立位撮影機能搭載MRIを用いて

丸山, 将史 筑波大学

2022.11.25

概要

【背景】
足部は地面と人体をつなぐ唯一の身体部位であり,地面から加わる荷重に対しアーチ構造が機能的に変形することにより衝撃吸収の役割を果たす.また,荷重に対する足部の高さの変位や内側への変位が足部の衝撃吸収機構を反映する指標であるとする先行研究の報告から,荷重に対するアーチ構造の変形様相はアーチ構造の頂点に位置する舟状骨の高さの変位や内側への変位,および足高・足幅の変位を体表から測定することで評価されてきた.一方,この計測値は生体足に存在する多数の骨配列変化の結果であることから,足部衝撃吸収機構を詳細に検討するためには,舟状骨を含めた生体足における他の骨配列変化を計測する必要があると考えられる.
舟状骨と後足部の解剖学的な連結機構を背景に,静的荷重に対する後足部の骨配列変化は,舟状骨の配列変化と関連する重要な挙動であると考えられている.加えて,舟状骨と後足部の骨配列変化の関連性から,足部衝撃吸収機能が低下した者に対して内側ヒールウエッジ (HW) を処方し,足部の骨配列変化を制動する方法が広く実施されており,下肢傷害への有効な対応策であることが報告されている.しかし,技術的・侵襲的な問題に起因して,静的荷重条件下におけるヒト生体内の舟状骨と後足部の骨配列変化の様相や,HW が足部骨配列変化に与える影響は明らかになっていない.また,足部機能の評価指標であるアーチ高と荷重に対するアーチ構造の変形様相との間には,「アーチ高が低い者ほどアーチの変位が大きく,アーチ高が高い者ほどアーチの変位が小さい」という関係が成り立つことが報告されている.以上より,アーチ高は静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変化の様相や,HW が足部骨配列変化に与える影響と関連を有する可能性があるが,アーチ高とこれらの項目との関連性も明らかでない.
足部衝撃吸収機構を詳細に検討するうえで生体足における骨配列変化の計測 が不可欠であることや,アーチ高の評価を基にインソール処方等の下肢傷害への対応策が選択されていることを踏まえると,上記の未解明項目を検討することは足部衝撃吸収機構の解明や,足部機能の評価に基づいた下肢傷害への有効な対応策の確立に貢献する知見となり得る.近年,立位撮影機能搭載 MRI が開発され,荷重位と非荷重位における身体内部の形状解析が可能となり,舟状骨や後足部の骨配列を計測する手法が提案された.これらの手法を用いることにより,非侵襲的な方法にて静的荷重条件下におけるヒト生体内の舟状骨と後足部の骨配列変化の計測が可能になった.そこで,本研究の目的は立位撮影機能搭載 MRI を用いて,静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変化の様相,および HW の使用が足部骨配列変化に与える影響を検討したうえで,アーチ高とこれらの項目との関連性を明らかにすることを目的とした.

【研究課題 1】「静的荷重条件下におけるヒト生体内の舟状骨と後足部の骨配列変化」研究課題 1 では,静的荷重条件下におけるヒト生体内の舟状骨と後足部の骨配列変化の関連性を検討し,アーチ高とこれらの骨配列変化の関連性を明らかにすることを目的に検討を実施した.立位撮影機能搭載 MRI にて,健常成人男性 42 名の右足部を荷重位と非荷重位の 2 肢位で撮像した.得られた MRI 画像から,舟状骨および後足部の骨配列変化の指標である,舟状骨・距骨・後足部外反の移動距離と舟状骨・距骨の移動方向角度を下記の手順にて計測した.まず,舟状骨・距骨の移動距離と移動方向角度を算出するために,荷重位と非荷重位における舟状骨・距骨の高さと内側点の位置を計測した.次に,荷重位と非荷重位における各項目の値の差を求めることで,舟状骨・距骨の高さの変位と内側点の変位を算出し,これらの値から舟状骨・距骨の移動距離と舟状骨・距骨の移動方向角度を算出した.なお,舟状骨・距骨の高さの変位は直角三角形における縦辺を,内側点の変位は横辺を示しており,移動距離は斜辺の長さ を示している.また,舟状骨・距骨の移動方向角度は直角三角形における縦辺と斜辺のなす角度を示し,舟状骨・距骨の移動方向角度が低値を示すほど,舟状骨や距骨はより鉛直下方向へ移動することを意味する.次に,後足部外反の移動距離を算出するために,hindfoot alignment view (HAV) を計測し,荷重位と非荷重位における HAV の値の差を求めることで後足部外反の移動距離を算出した.さらに,三次元足型測定機にて,アーチ高の指標である arch height ratio(AHR) を計測した.まず,舟状骨と後足部の骨配列変化の関連性を検討したところ,舟状骨と距骨の移動距離との間,舟状骨と距骨の移動方向角度との間に,それぞれ有意な正の相関関係が認められた (舟状骨の移動距離 vs 距骨の移動距離, r = 0.90, P < 0.01, 舟状骨の移動方向角度 vs 距骨の移動方向角度, r =0.59, P < 0.01).また,舟状骨・距骨の移動距離と後足部外反の移動距離との間に,それぞれ有意な相関関係が認められた (舟状骨の移動距離 vs 後足部外反の移動距離, r = 0.42, P < 0.01, 距骨の移動距離 vs 後足部外反の移動距離, r =0.40, P < 0.01).次に,AHR と足部骨配列変化の関連性を検討し,AHR と舟状骨の移動方向角度との間には有意な正の相関関係が認められたものの (r = 0.48,P < 0.01),その他の項目においては有意な相関関係が認められなかった (AHRvs 舟状骨の移動距離, r = 0.23, P = 0.15, AHR vs 距骨の移動距離, r = 0.20, P =0.21, AHR vs 距骨の移動方向角度, r = 0.13, P = 0.40).以上の結果から,静的荷重条件下における舟状骨の配列変化と後足部の骨配列変化は互いに関連する挙動であることが示され,アーチ高が低い者ほど舟状骨の移動方向角度が鉛直下方向へ向けられることが明らかになった.以上の知見は,足部衝撃吸収機構の理解に基づき,下肢傷害への対応策を検討するための基礎的知見となり得る.

【研究課題 2】「内側ヒールウエッジ (HW) が静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変化に与える影響」研究課題 2 では,HW が静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変 化に与える影響を検討し,アーチ高と HW による足部骨配列変化への影響との関連性を明らかにすることを目的に検討を実施した.健常成人男性 25 名を対象に,平坦なインソール (FI) を使用する FI 条件と HW を使用する HW 条件の2 条件における MRI の撮像を実施した.なお,測定の順番はランダムに決定し,各条件の測定は 1 日以上の間隔をあけて実施した.研究課題 1 と同様の方法にて,FI 条件と HW 条件における舟状骨・後足部の骨配列変化の各項目を計測し,条件間での比較検討を行った.その結果,HW 条件の後足部外反と舟状骨の移動距離,および舟状骨の高さの変位は,FI 条件における各項目の値に比して,それぞれ有意に低値を示した (後足部外反の移動距離, P = 0.01, 舟状骨の高さの変位, P < 0.01, 舟状骨の移動距離, P < 0.01).次に,アーチ高と HW が足部骨配列変化に及ぼす影響との関連性を検討するために,HW 条件と FI 条件における各項目の値の差を求めることで HW による各項目の変化量を算出し,AHR と HW による各項目の変化量との関連性を検討した.その結果,AHR とHW による舟状骨の変位の各変化量との間に,それぞれ有意な正の相関関係が認められた (AHR vs 舟状骨の高さの変位の変化量, r = 0.54, P < 0.01, AHR vs 舟状骨の内側点の変位の変化量, r = 0.40, P < 0.05, AHR vs 舟状骨の移動距離の変化量, r = 0.65, P < 0.01).以上の結果から,HW の使用は後足部外反と舟状骨の移動距離,特に舟状骨の高さの変位を制動することと,HW による舟状骨の変位の制動量はアーチ高が低い対象者において大きくなることが明らかになった.このことから,アーチ高が低く荷重に対するアーチ構造の変位が大きい者に対して,HW を処方することはアーチ全体の安定性を高めることにつながり,結果として効果的な下肢傷害への対応策になることが考えられた.

【まとめ】
本研究では立位撮影機能搭載 MRI を用いて,静的荷重条件下におけるヒト生体内の足部骨配列変化の様相,および HW の使用が足部骨配列変化に与える影 響を検討したうえで,アーチ高とこれらの項目との関連性を明らかにすることを目的に検討を行った.研究課題 1 では,静的荷重条件下における舟状骨と後足部の骨配列変化の関連性を検討し,静的荷重条件下における舟状骨の配列変化は,後足部の骨配列変化と関連性を有することが示された.また,アーチ高と足部骨配列変化の関連性を検討し,アーチ高が低い者ほど,舟状骨の移動方向角度がより鉛直下方向へ向けられることが明らかになった.研究課題 2 では,HW の使用が静的荷重条件下における足部骨配列変化に及ぼす影響を検討し,HW の使用は静的荷重条件下における後足部外反と舟状骨の移動距離,特に舟状骨の高さの変位を制動することが示された.また,アーチ高と HW が足部骨配列変化に及ぼす影響との関連性を検討し,アーチ高が低い者ほど,HW の使用による舟状骨の変位の制動量が大きな値を示すことが明らかになった.以上の成果は,静的荷重条件下におけるヒト生体内の舟状骨と後足部の骨配列変化の様相や,HW が足部骨配列変化に与える影響を示すもので,足部骨配列機能の評価に基づいた下肢傷害への有効な対応策の確立に貢献する知見となる.

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