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大学・研究所にある論文を検索できる 「Meta-Analysis of Gut Dysbiosis in Parkinson’s Disease」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Meta-Analysis of Gut Dysbiosis in Parkinson’s Disease

西脇, 寛 名古屋大学

2021.07.16

概要

【緒言】
 パーキンソン病は運動障害を主症状とする進行性神経変性疾患である。その運動障害には、主に振戦・動作緩慢・筋強剛・姿勢の不安定性の 4 つがある。また、パーキンソン病は自律神経障害による非運動症状(便秘、嘔吐、起立性低血圧、異常発汗、排尿障害)と精神症状(鬱病、不安障害、幻視、認知症)を呈することが知られている。パーキンソン病の病態生理に目を向けると、パーキンソン病は神経細胞内の α シヌクレイン凝集体(レビー小体)の異常蓄積により中脳黒質にあるドパミン産生神経細胞が失われることで引き起こされる。α シヌクレイン凝集体は自律神経系・下部脳幹・大脳皮質・嗅球、皮膚、唾液腺、腸管粘膜などの非神経組織でも観察される。パーキンソン病の発生機序について、腸管での α シヌクレインの異常蓄積から始まり、その後中脳に α シヌクレインが上行するという Braak 仮説が提唱されている。この仮説を支持する事実として以下の 3 つが挙げられる。1 つ目は剖検によりレビー小体が迷走神経背側核から中脳黒質に上行することがわかったこと、2 つ目は便秘、REM 睡眠行動障害、鬱病はパーキンソン病の運動症状が現れる 20 年・10 年・5 年前からそれぞれ生じることが多く、この事実はレビー小体が迷走神経から青斑核へと上行するという事実と一致していること、3 つ目は腸管剖検からパーキンソン病患者の粘膜下神経叢で αシヌクレイン凝集体の異常蓄積が観察されることである。
 現在まで 10 報以上のパーキンソン病患者の腸内細菌叢解析についての論文が報告されているが、結果はそれぞれの研究で異なり国を超えてパーキンソン病に関連する細菌を同定することは困難であった。そこで我々は、腸内菌叢のメタ解析手法を開発し、国の違いを超えてパーキンソン病で変化する腸内細菌の同定を行った。

【方法】
 我々は、過去最多のパーキンソン病患者の腸内細菌解析を行った(患者 223 人、健常者 137 人)。次に、腸内細菌叢全体の構成にどの因子が影響を与えているかを調べるために、PERMANOVA(Permutational Multivariate Analysis Of Variance)解析を行った。具体的には、1)パーキンソン病、2)パーキンソン病・年齢・性別・BMI・便秘、3)6 つのパーキンソン病治療薬(レボドパ/カルビドパ、COMT 阻害剤、MAO-B 阻害剤、抗コリン薬、ドパミンアゴニスト、アマンタジン)の 3 通りで腸内細菌叢全体に影響を与える因子を調べた。さらに、国を超えて腸内細菌叢を統合解析するノンパラメトリックなメタ解析手法を開発し、以前に報告されているアメリカ・フィンランド・ロシア・ドイツの 4 か国の腸内細菌叢のデータと合わせてメタ解析を行った。加えて、腸内細菌叢が関係する代謝経路を推定する新規手法 KOSEA(KEGG orthology set enrichment analysis)を開発した。

【結果】
 PERMNOVA 解析によりパーキンソン病・年齢・性別・便秘は腸内細菌叢全体の構成に影響を及ぼすが、BMI は影響を及ぼさないことがわかった(Table.1)。また、6 つのパーキンソン病治療薬のなかで COMT 阻害剤のみが腸内細菌叢全体の構成に影響を与えることがわかった(Table.1)。5 か国のメタ解析により、genus レベルで 4 菌種と family レベルで 2 菌種が国の違いを超えて増加し、一方 genus レベルで 4 菌種が減少していることがわかった(Figure.1)。さらにこれらの 10 菌種に対して腸内細菌叢に影響を与える可能性のある交絡因子(年齢・性別・BMI・便秘・COMT 阻害剤)の影響を調整したところ、Akkermansia, Catabacter が増加し、Faecalibacterium, Roseburia, Lachnospiraceae ND3007 group が減少す ることが わかった (Figure.2) また、 Lactobacillaceae はパーキンソン病の影響で増加するのではなく COMT 阻害剤の影響で増加することがわかった。メタ解析に含めることができなかった 12 の研究結果を調べたところ、複数の研究で Akkermansia の増加と Faecalibacterium と Roseburia の減少を認めた。また、KOSEA による腸内細菌叢の代謝経路解析により、腸内細菌叢による短鎖脂肪酸代謝がパーキンソン病で変化していることを同定した(Table.2)。

【考察】
 Akkermansia の増加によってムチン層が分解され腸管の透過性が亢進することによって腸管神経叢に α シヌクレインが異常凝集し、中脳黒質まで異常凝集した α シヌクレインが上行する可能性が示された。加えて、短鎖脂肪酸産生菌の減少によって中枢神経の炎症を制御しにくくなる可能性も示された。また以前より腸内細菌叢のメタ解析の研究は行われてきたが、それらはパラメトリックな手法を用いたものであった。今回開発したノンパラメトリックなメタ解析手法は、今後別の疾患で国を超えて原因菌を同定するのに役立つと思われる。さらに、今回開発した腸内細菌叢の代謝パスウェイを推定する KOSEA 法は今後広く腸内細菌叢の代謝パスウェイ解析に役立つことが期待される。今回明らかにした腸内細菌叢の病態を今後さらにモデル動物などを用いてパーキンソン病の病態分子機構を解明していくことが期待される。

【結論】
 本研究では細菌叢データを統合するメタ解析手法、および細菌叢が関係する代謝経路を推定するための KOSEA を開発した。開発手法により、パーキンソン病患者の腸内細菌叢では国の違いを超えて、ムチン層分解菌である Akkermansia が増加し SCFA産生菌である Faecalibacterium と Roseburia が減少することを明らかにした。

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