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大学・研究所にある論文を検索できる 「下痢型過敏性腸症候群における腸内細菌叢と脳形態」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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下痢型過敏性腸症候群における腸内細菌叢と脳形態

山田 晶子 東北大学

2021.03.25

概要

【目的】過敏性腸症候群(IBS)は機能性消化管疾患であり、繰り返し起こる腹痛や便通異常をその特徴とする。脳と腸そして腸内細菌叢には互いに影響しあう脳腸細菌叢相関という関係があり、IBSの病態にはこの関係が重要な役割を担っている。IBS患者は、健常者と比較してその脳形態が異なっていると複数の先行研究で報告されており、脳形態は男女で異なっているとされている。また、腸内細菌叢もIBS患者と健常者で異なっており、IBS患者の中でもそのサブタイプにより増減している腸内細菌が異なる。これまでの研究は、対象者が女性のみの結果やIBSのサブタイプを混合した結果がほとんどである。したがって、男女の差やIBSのサブタイプ別の解析が必要な脳形態や腸内細菌叢との関係についての検討はいまだ十分ではない。そこで本研究では、下痢型IBS(IBS-D)における腸内細菌叢の脳形態への影響を検討した。

【方法】健常男性50名、IBS-Dの男性50名を対象に脳形態画像と腸内細菌叢の解析、自己記入式質問紙による心理行動検査を行った。脳形態画像を用い、健常群とIBS-D群における灰白質容量の群間差を総脳容量により補正し、年齢と体重を共変量としたtwosamplet検定により検討した。また、先行研究で差があるとされた腸内細菌、この研究で差があった腸内細菌、年齢と体重を共変量としたmultiple regressionでwhole brain解析をした。腸内細菌叢の解析にはAlineardiscriminantanalysiseffectsize(LEfSe)解析を行った。心理行動検査について、全ての変数はShapiro-Wilk検定により正規性を検定し、正規分布に従う変数の群間差はWelchのt検定を行い、正規分布に従わない変数はMann-WhitneyのU検定を行った。

【結果】健常群とIBS-D群におけるIBS重症度と心理傾向の差を調べた結果、健常群よりIBS-D群の方が有意に高値だったのは、IBSSI、VSI、STAI、ASI、TAS-20(感情の同定困難)、SDS、POMS(緊張-不安、怒り-敵意、疲労、混乱、Total Mood Disturbance(TMD))、NEO-FFI(神経症傾向)であった。健常群よりIBS-D群の方が有意に低値だったのは、IBS-QOL、POMS(活気)、NEO-FFI(調和性)であった。灰白質容量の差を調べた結果、健常群よりIBS-D群の方が増大していた脳部位は、右小脳VIであった。灰白質密度の差を調べた結果、健常群よりIBS-D群の方が高かった脳部位は、左舌状回、右中帯状皮質、右小脳VIであった。LEfSe解析の結果、両群で有意差があった腸内細菌は、Streptococcus属、Fusobacterium属、Blautia属、Lachnospira属であった。そして、先行研究で差があるとされた腸内細菌の構成比、この研究で差があった腸内細菌の構成比、年齢と体重を共変量としたmultiple regressionでwhole brain解析をした結果、全対象者において、Veillonella属と有意な負の関係にあったのが右中側頭回であること、IBS-D群において、Bifidobacterium属と有意な負の関係にあったのが右中後頭回であることがわかった。健常群において、有意な関係はなかった。

【結論】健常群とIBS-D群では、腸内細菌に影響される脳形態に違いがあることがわかった。腸内細菌が産生した短鎖脂肪酸が、受容体などを介し神経や脳に影響を与えていることが考えられる。今後更に脳の構造的違いに関与する潜在的な代謝物を測定するために、メタボロミクス解析を併用し、縦断的分析を加えることで、IBSならびに健常者の脳構造に対する腸内細菌の影響を確定し得ると予測する。

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