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大学・研究所にある論文を検索できる 「海洋生物由来新規天然物の効率的発見とその起源生物に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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海洋生物由来新規天然物の効率的発見とその起源生物に関する研究

日置, 裕介 名古屋大学

2023.07.13

概要

報告番号



















論文題目

海洋生物由来新規天然物の効率的発見とその起源生物
に関する研究



日置



裕介

論 文 内 容 の 要 旨
1.

序論
海洋生物が作り出す化学物質(海洋天然物)は,生体防御や捕食・共生に関わる特

異な生物活性を示すものが多く,化合物探索の資源として魅力が高い。このような海
洋天然物の多くは,化合物が単離された元の海洋生物自身ではなく,共生もしくは食
物連鎖の関係にある海藻や微生物が生産するとされるが,培養法の確立や生態系内に
おける化合物追跡等の課題により,その真の生産者を特定することは一般に困難であ
る 。本 研 究 で は ,LC-MS/MS 分 析 と 分 子 ネ ッ ト ワ ー ク 解 析 を 活 用 し ,海 棲 軟 体 動 物 ア
メ フ ラ シ ( Aplysia kurodai ) 由 来 新 規 天 然 物 の 効 率 的 発 見 を 行 う と と も に , ア メ フ ラ
シの食性に着目した包括的な海藻の二次代謝成分解析と分子生物学的アプローチによ
り,アメフラシ由来天然物の起源の解明を目指した。
2.

ア メ フ ラ シ 由 来 新 規 aplaminone 類 の 単 離 ・ 構 造 決 定
三重県志摩市あづり浜にて採取したアメフラシをエタノール抽出し,酢酸エチルと

水を用いて分配した。このうち,これまで化合物探索が十分に行われてこなかった水
層 に 注 目 し ,TSK G-3000S ポ リ ス チ レ ン 系 ゲ ル に よ る 脱 塩・分 画 後 ,各 画 分 の ヒ ト 結
腸 が ん 細 胞 株 HCT-116 に 対 す る 細 胞 毒 性 を 評 価 し た 。 活 性 を 示 し た 50 お よ び 75%
エ タ ノ ー ル 溶 出 画 分 に つ い て LC-MS/MS 分 析 お よ び 分 子 ネ ッ ト ワ ー ク 解 析 に よ る 化
合 物 の 包 括 的 解 析 を 行 っ た 結 果 , 既 知 の 臭 素 化 ド ー パ ミ ン ア ナ ロ グ aplaminone 類 1,
2 と と も に 複 数 の 新 規 aplaminone 類 縁 体 の 存 在 が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら の 画 分 を 各 種
ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ り 更 に 精 製 す る こ と で , 極 微 量 物 質 と し て 新 規 aplaminone
類 5 種 を 単 離 し た 。 こ れ ら の う ち , 特 に isoaplaminone (3) は イ ソ プ レ ン 骨 格 の 炭 素
鎖末端に逆プレニル基を持つという生合成的観点から珍しい構造的特徴を有してい
た 。単 離 し た aplaminone 類 は い ず れ も HCT-116 細 胞 に 対 し て 細 胞 毒 性 を 示 し ,そ の

IC 50 値 は 0.65–7.0 μ M で あ っ た 。
3.

ア メ フ ラ シ の 食 性 に 着 目 し た 海 藻 二 次 代 謝 成 分 の 包 括 的 LC-MS/MS 解 析
続いて,これらアメフラシ由来の細胞毒性物質の起源を探る研究に着手した。生態

観察に基づき,アメフラシが餌とする海藻に注目して,三重県あづり浜にて採取した
海 藻 16 種 の 酢 酸 エ チ ル 層 を LC-MS/MS 分 析 に 供 し た 結 果 , 紅 藻 ク ロ ソ ゾ ( Palisada

intermedia ) か ら 既 知 の aplaminone 類 1, 2 が 検 出 さ れ た 。 さ ら に 三 重 県 志 摩 半 島 の
4 つ の 海 域 [ あ づ り 浜 (A), 麦 崎 (M), 坂 手 島 (S), 浮 島 (U)] に て ア メ フ ラ シ と 3 種
の ソ ゾ 類 を 採 取 し ,同 様 に 抽 出・分 析 を 行 っ た 結 果 ,太 平 洋 側 の 海 域 A お よ び M で 採
取したアメフラシとソゾ類からのみ 1 および 2 が検出された。また,アメフラシ由来
の 強 力 な 細 胞 毒 性 マ ク ロ リ ド aplyronine A( ApA)に つ い て も ,海 域 A に て 採 取 し た
ア メ フ ラ シ と 1 種 の あ る ソ ゾ 類 ( ソ ゾ 類 X) に の み 特 異 的 に 検 出 さ れ た 。 一 方 で , 伊
勢 湾 側( 海 域 S, U)で 採 取 し た ア メ フ ラ シ と ソ ゾ 類 か ら は 上 記 の 化 合 物 は 検 出 さ れ な
か っ た 。 以 上 の 結 果 か ら , aplaminone 類 と aplyronine A は ア メ フ ラ シ が 餌 と す る 紅
藻ソゾ類から食物連鎖を経てアメフラシに移行しており,それらの真の生産者は志摩
市周辺の海域に植生するソゾ類に特異的に付着・共生する微生物である可能性が示さ
れた。
4.

Aplaminone 類 生 合 成 遺 伝 子 の 探 索
Aplaminone 類 は 臭 素 化 ド ー パ ミ ン ア ナ ロ グ で あ る こ と か ら , tyrosine か ら 3- O -

methyldopamine を 経 て , 臭 素 原 子 や フ ァ ル ネ シ ル 基 の 導 入 , N , N -ジ メ チ ル 化 等 の 種
々 の 酵 素 反 応 に よ り 生 合 成 さ れ る と 考 え ら れ る 。 Aplaminone 類 の 生 合 成 経 路 お よ び
真 の 生 産 者 を 解 明 す る た め , そ れ ら が 検 出 さ れ た 海 域 M の ミ ツ デ ソ ゾ ( Laurencia

okamurae ) の メ タ ゲ ノ ム か ら 臭 素 原 子 の 導 入 に 関 与 す る と 考 え ら れ る 芳 香 族 ハ ロ ゲ
ナーゼ遺伝子の検出を試みた。
海域 M および U で採取したミツデソゾのメタゲノムを鋳型とし,微生物由来のハ
ロ ゲ ナ ー ゼ 遺 伝 子 を 標 的 と す る 縮 重 プ ラ イ マ ー を 用 い て PCR を 行 っ た 結 果 , 予 想 通
り 海 域 M の ミ ツ デ ソ ゾ メ タ ゲ ノ ム に お い て 標 的 遺 伝 子 ( 約 300 bp) の 増 幅 が 見 ら れ
た 。 一 方 で , aplaminone 類 が 検 出 さ れ な か っ た 海 域 U の メ タ ゲ ノ ム に お い て は 標 的
遺 伝 子 の 増 幅 が 見 ら れ な か っ た こ と か ら ,海 域 M の メ タ ゲ ノ ム か ら 検 出 さ れ た ハ ロ ゲ
ナ ー ゼ 遺 伝 子 は aplaminone 類 生 合 成 遺 伝 子 の 一 部 で あ る 可 能 性 が 示 さ れ た 。
5.

ApA 生 合 成 遺 伝 子 の 探 索
ア メ フ ラ シ 由 来 の ア ク チ ン 結 合 性 マ ク ロ リ ド で あ る ApA は ,そ の 構 造 か ら ポ リ ケ チ

ド 生 合 成 酵 素 ( PKS)に よ り 生 合 成 さ れ る と 考 え ら れ る 。 ま た ,ApA の ア ク チ ン 結 合
側 鎖 ( C-24–C-34) は , tolytoxin や scytophycin 等 の シ ア ノ バ ク テ リ ア 由 来 ア ク チ ン
結合性ポリケチド化合物と類似した構造を持つ。以上の背景と上述した海藻抽出物の
LC-MS/MS 分 析 結 果 か ら , ApA は 海 域 A の ソ ゾ 類 X に 特 異 的 に 付 着 ・ 共 生 す る シ ア

ノ バ ク テ リ ア の PKS に よ り 生 合 成 さ れ る と 推 測 さ れ る 。こ の 仮 説 を 証 明 す る た め ,ア
ク チ ン 結 合 側 鎖 に 特 徴 的 な N -ホ ル ミ ル 基 を 導 入 す る 酵 素 ( FT ド メ イ ン ) の 遺 伝 子 を
標 的 と す る 縮 重 プ ラ イ マ ー を 設 計 し , 設 計 し た プ ラ イ マ ー を 用 い た PCR に よ る ApA
生 合 成 遺 伝 子 の 探 索 を 行 っ た 。 ま た , PKS に 普 遍 的 に 見 ら れ る ケ ト シ ン テ ー ス ( KS)
遺 伝 子 の 検 出 も 並 行 し て 行 っ た 。そ の 結 果 , 海 域 A の ソ ゾ 類 X メ タ ゲ ノ ム か ら FT お
よ び KS 遺 伝 子 が 検 出 さ れ ,そ れ ら の 配 列 は tolytoxin の ア ク チ ン 結 合 側 鎖 の 生 合 成 遺
伝 子 ttoC の FT お よ び KS 遺 伝 子 と 高 い 相 同 性 を 示 し た 。 以 上 の 結 果 か ら , 今 回 検 出
さ れ た 遺 伝 子 は ApA の 生 合 成 に 関 与 す る 遺 伝 子 で あ る 可 能 性 が 示 さ れ た 。

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