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大学・研究所にある論文を検索できる 「胃の神経内分泌細胞癌と混合型神経内分泌腫瘍における臨床病理学的検討およびエクソーム解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

胃の神経内分泌細胞癌と混合型神経内分泌腫瘍における臨床病理学的検討およびエクソーム解析

Ishida, Sonoko 神戸大学

2021.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2023-03-03

Neuroendocrine carcinoma and mixed
neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm of
the stomach: a clinicopathological and exome
sequencing study

Ishida, Sonoko
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2021-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8105号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/D1008105
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

<背景>

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

神経内分泌新生物は、高分化で緩徐な臨床経過を辿る神経内分泌腫瘍

(
N
E
T
)、低分化

で悪性度の高い神経内分泌癌 (
NEC)、神経内分泌成分と非神経内分泌成分の混合型腫瘍

(MiNEN) に分けられます。
神経内分泌分化を有する NETと NECが単一の病理学的組織に属するのか、発生臓器
によって分子学的差異があるのか、これらはいまだ明確になっていません。しかしなが
ら、次世代シークエンシング技術が発展するにつれて解明の糸口が見えてきました。肺
と膵臓においては、 NECに NET関連遺伝子の変異が見られないことから、 NECと NET

N
e
u
r
o
e
n
d
o
c
r
i
n
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aandmixedneuroendocrine—
non-neuroendocrine
neoplasmo
ft
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g
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landexomes
e
q
u
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c
i
n
gs
t
u
d
y

が生物学的に異なることが示唆されています。さらに、 NETにおける MENJ遺伝子変
異の発生率は臓器によって異なり、 ATRX
および DAXX
の変異は膵臓の NETにほぼ限
定されていることから、臓器によって分子学的動態が異なることも示唆されています。
これまでは肺や膵臓で主に研究がなされており、他臓器における遣伝学的研究はまだ十

胃の神経内分泌細胞癌と混合型神経内分泌腫瘍における
臨床病理学的検討およびエクソーム解析

分ではありません。本研究では、全エクソームシーケンシングを用いて胃の NEC と

MiNENの分子病理学的分析を行いました。
<方法>

神戸大学にて 2

0
0
0年から 2
0
1
7年の間に外科的切除を受けた胃 NEC(
n=7
) と胃

MiNEN (
n=6
) の症例を抽出し、これら 1
3症例を研究対象としました。
組織スライドの免疫染色(クロモグラニン A、シナプトフィジン、 CD56) にて神経内
分泌分化を確認し、

K
i
6
7
i
n
d
e
xおよび核分裂像(個/lOHPF)も調べました。さらに、 p53

と HER2の免疫染色も追加しました。
マイクロサテライト不安定性 (
M
S
I
)解析を行い、 M
S
I
h
i
g
hの症例においてはミスマ
ッチ修復 (
M
M
R
.
)タンパクの評価のため、 MLHl、MSH2、MSH6
、PMS2の免疫染色も
神戸大学大学院医学研究科医科学専攻

行いました。

外科学講座食道胃腸外科学

全エクソームシーケンシングを行うにあたり、 MiNENでは神経内分泌成分と非神経内

(指導教員:掛地吉弘教授)

分泌成分を分けることができるものについてはそれぞれより DNAを抽出して行いまし



石田苑子

<結果>

胃 NECおよび MiNENの臨床的特徴を表 1に、病理学的特徴は表 2に要約しました。

NECでは、 2例が小細胞型神経内分泌癌であり、 4例が大細胞型神経内分泌癌でした。
症例 1および 5では、腺癌成分も認められましたが、腫瘍全体の 1
0%未満であり、これ
は MiNENの診断基準には満たしていないため、 NECと診断しています。

MiNEN症例では、神経内分泌成分は全ての症例で大細胞型神経内分泌癌であり、腫瘍
全体に対する割合は 3
0%から 50%でした。全ての症例において、 NET成分は含まれて
いませんでした。非神経内分泌成分部は全ての症例で腺癌でした。

NECと MiNENそれぞれの神経内分泌成分と非神経内分泌成分の占有パターンでは、
2

症例 9のみで両細胞が混在する c
o
m
b
i
n
e
dp
a
t
t
e
r
nを示し、その他の症例では成分同士が

えられるようになってきました。胃においては、現時点で消化管 NETの遺伝子変異の報

衝突しているように隣接し合う c
o
l
l
i
s
i
o
np
a
t
t
e
r
nを示していました。

告が少なく、本研究においても同様の比較は困難でした。

免疫染色では、 p
53の異常発現(陽性あるいは LOSS) が 9例 (69%)で認められ、全

胃に限定した NETの遺伝子変異の報告は検索しうる範囲では 4研究のみあり、それら

ての MiNEN において腺癌成分と神経内分泌成分で共に異常発現が認められました。

をまとめると TP53(
3
/
2
2例
; 14%

) RBJ(
2/22;9%

) SMAD4(
2
/
2
2
;9%)と散発的

HER2は 1例の腺癌成分でのみ陽性でした。

な報告に留まっています。また、膵 NET関連遺伝子も胃 NETでは MENJ(
1
/
1
5
;7%



MSI解析では、 MiNENの 1例でのみ J
.
Y
I
S
l
h
i
g
hを示しました。この症例の免疫染色で
は MSH2と MSH6で発現消失しており、 MLHlとPMS2では発現が維持されていまし

ATRX(
1
/
1
5
;7%

) TSC2(
1
/
1
5
;7%

) PETN(
1
/
2
2
;5%)と稀でした。
このように胃 NETに特徴的な遺伝子変異は同定されていない状況ではありますが、本
症例の胃 NEC/MiNENと共通する傾向は見られず、 TP53以外の変異の頻度が低いと



全エクソームシーークエンスでは、 TP53変異を 8症例 (62%
)で認めました。 TP53変異

、 NEC(
2
/
7症例、 29%) よりも MiNEN(
6
/
6症例、 100%)でより多く見られまし

いう点では胃腺癌と似通っています。従って、膵臓や肺と同様に、胃においても NEC/

MiNENは NETよりも腺癌に近い関連があると考えられます。

た (
P=
0
.
0
3
9
)。 TP53変異と p53免疫染色においては、 1例を除き、相関関係が見られ
ました。 APC変異は 2つの症例で認められました。 M
S
I
h
i
g
hMiNENには 8つの変異

しかしながら、本研究では、 M
S
I
h
i
g
hMiNENの 1例で MENJとATRXの変異が見ら

があり、そのうちの 2つは NET関連遺伝子 (MENJ,ATRXJ) の変異でした。 RBJ変異

れました。本研究と同様に NEC/MiNENに NET関連遣伝子変異を認めたことから、

は 1例で認められました。他の遣伝子変異は、それぞれ 1つずつの症例で観察され、検

腺癌が NET関連遺伝子の変異を獲得して神経内分泌分化をきたした可能性があるとし

出された遺伝子変異は表 3にまとめています。

ている報告が今までごく僅かにあります。反対に、 NETでも NEC関連遣伝子変異を認
めた例もあり、このように NECと N E Tの両方の変異を持ち合わせている腫瘍につい

<考察>

ては、今後さらなる遺伝子学的解析が必要であると考えます。

本研究では、胃 NEC/MiNENにおいて、 TP53変異が多いことが示されました。本研
究の胃 NEC/MiNENの TP53変異率 (62%
)は、肺小細胞癌の頻度 (
9
5%以上)や肺

胃腺癌おいては、 E
p
s
t
e
i
n
B
a
r
rv
i
r
u
s(EBV) 陽性タイプ、 M
S
I
h
i
g
hタイプ (21%)、ゲ

大細胞神経内分泌癌の頻度 ( 80%
)よりも低く、膵臓 NEC/MiNENの頻度 ( 60%


ノム安定性タイプ (20%
)、および染色体不安定性タイプ (50%)の 4つの分類が提唱さ

および大腸 NEC/MiNENの頻度 ( 50%) とは同程度でした。 TP53変異は NECより

れています。染色体不安定性タイプの胃腺癌においては TP53以外の変異は少ないとさ

も MiNENでより多く認められました。症例 1においては、全エクソームシークエンス

れており、本研究の NEC/MiNENも同様の結果を得ており、ここでも類似が示唆されま

で TP53
変異が認められなかったにもかかわらず、免疫染色においては p
53陽性でした。




これは、非エキソン部の遺伝子変異によって p
53の正常発現が阻害されていることを示
唆しています。

<結論>

RBI変異の頻度は、肺小細胞癌 (
9
5%以上)、肺大細胞神経内分泌癌 ( 40%
)、膵臓

本研究は、胃の NECおよび MiNENにおいて TP53変異が高頻度であり、他の遺伝子

NEC(-40%
)で高く、大腸 NEC/MiNENでは少ない変異です。本研究では 1例での

変異は少ないことを明らかにしました。胃の NECおよび MiNENは分子学的に胃腺癌

み RBI変異を認めました。

に類似していると考えられます。 NET関連遣伝子の変異は 1例で認められ、胃の NEC

TP53および RBIの変異の頻度に基づくと、胃 NEC/MiNENは肺または膵臓の NEC

および MiNENにおける NET関連遺伝子の関与は完全に除外はできませんでした。

/MiNENよりも、大腸 NEC/MiNENに類似していると考えられます。
しかし、大腸 NEC/MiNENでは BRAF(37%)
、 KRAS(21%

) APC(16%)の変異
も多く認められていますが、本研究の胃 NEC/MiNENでは少なかったです。この違い

、 2臓器間の NEC/MiNENにおける分子学的特徴の可能性があります。
また、、 BRAF
、KRAS
、および APCは大腸癌の一般的なドライバー遺伝子ですが、胃腺
癌においては TP53以外の遺伝子変異は頻度が低く (<10%
)、あまりみられません。
これまで、膵臓や肺では NECと NETの遺伝子変異を比較し、異なる腫瘍であると考

4

3

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

〔背景と目的〕

論文審査の結果の要旨
受付番号

論文題目

T
i
t
l
eo
f
D
i
s
s
e
r
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a
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i
o
n

甲第

3081 号

l
氏一三]石田苑子

N
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n
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eneoplasmo
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q
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c
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n
gs
t
u
d
y
胃の神経内分泌細胞癌と混合型神経内分泌腫瘍における
臨床病理学的検討およびエクソーム解析

神経内分泌新生物は、高分化で緩徐な臨床経過を辿る神経内分泌腫瘍 (
N
E
T
)、低分化で
悪性度の高い神経内分泌癌 (
N
E
C
)、神経内分泌成分と非神経内分泌成分の混合型腫瘍
(
M
1
N
E
N
) に分けられる。

神経内分泌分化を有する NE•T と NEC が悪性度の異なる同一腫瘍なのか、それとも発生機
序が異なる腫瘍であるか、明確になっていない。しかしながら、次世代シークエンシン
グ技術が発展するにつれ、肺と膵臓においては遣伝子学的に NECと NETが異なる腫瘍で
あることが示唆されている。
これまでは NECと NETの関連性は肺や膵臓で主に研究がなされており、他臓器における
遺伝学的研究はまだ十分ではない。本研究では、全エクソームシーケンシングを用いて
NECや MiNENの遺伝学的特徴を明らかにした。

〔方法〕
神戸大学にて 2000年から 2017年の間に外科的切除を受けた胃 NEC (n=、
7
) と胃 MiNEN
主 査
審査委員

Examiner

C
h
i
e
fExaminer
副 査

V
i
1
c
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e
x
a
m
1
n
e
r
副 査

V
i
c
e
e
x
a
m
i
n
e
r

栢本弓
喝ゎ祁ジ
虚咋玄

(要旨は 1, 0 0 0字∼ 2, 0 0 0字程度)

(
n= 6
) の症例を抽出した。これら 1
3症例に対し、免疫組織化学染色、マイクロサテ

ライト不安定性 (
M
S
I
) 解析、全エクソームシーケンシングを行った。全エクソームシー
ケンシングを行うにあたり、 MiNEN では神経内分泌成分と非神経内分泌成分を分けるこ
とができるものについては、それぞれより D
N
Aを抽出して解析を行った。

〔結果と考察〕
I
. 冑 NEC/M1•NEN の祷徴について
全エクソームシークエンスでは、 TP53変異の頻度が最も高く、 8症例 (
6
2
%)で認めら
れた。 TP53変異は、 NEC (
2
/
7症例、 29%)よりも M1NEN (
6
/
6症例、 100%)でより多く
見られた (
P=0
.0
3
9
)。 TP53変異と p53免疫染色においては、 1例を除き、相関関係が
見られた。本研究の胃 NEC/MiNENの TP53変異率は、肺における頻度よりも低く、膵臓
や大腸の NECIMiNENの頻度と同程度であった。
全エクソームシークエンスでは、 RBJ変異は 1例 (
8
%)しか認められなかった。これは、


I変異が高頻度で認められる肺や膵臓に比べ、低頻度である大腸 NEC/MiNEN と類似

していた。
本研究の胃 NEC/MiNENを大腸 NEC/MiNENと比較してみると、 BRAF変異と KRAS変
異において、胃 NEC/MiNENの方が低頻度であった。
以上より、胃 NECIMiNENは大腸 NEC/MiNENと特徴が似ていたが、完全に同一では
なかった。 NEC/MiNENは臓器によって特徴が異なることが示唆された。
I
I
. 腺癌との比較

胃腺癌においては、 TP53以外の遺伝子変異は頻度が低いと報告されている (<10%


本研究では、胃 NEC/M1NENにおいても TP53変異以外に特徴的な遣伝子変異は見られな
かづた。したがって、肺や膵臓と同様に、胃においても NEC/MiNENは腺癌に類似して
いる可能性がある。

また、、本研究の MiNENにおいて、腺癌成分と NEC成分を分離して全エクソームシーク
エンスを行えた例は、症例 10-14の 4例であった。全ての症例において、両成分で TP53
変異を認めた。 APCと ZNF521では、それぞれ 1例ずつ、両成分で変異を認めた。 CTNNBJ、
KMT2C
、P
T
E
N
,
、SPENでは、それぞれ 1例ずつ、 NEC成分のみで変異を認めた。腺癌成分

でのみ認められる変異はなかった。以上より、これら MiNENの NEC成分は、腺癌にもと
もとあった遺伝子変異にさらなる遣伝子変異が加わり、神経内分泌分化を獲得した可能
性が示唆される。
皿 胃 NETとの比較
本研究では、 M
i
N
E
N
_の 1例で NET関連遺伝子である MENJ、ATRXの変異が見られた。胃
NET の遺伝子変異の報告は少なく、 TP53(
3
/
2
2例
; 14%)
、 RBJ (
2
/
2
2
; 9%) 、SMAD4
(
2
/
2
2
; 9%)と特徴的な遺伝子変異は見られない。また、膵 NET 関連遺伝子も胃 NET

では MENJ (
1
/
1
5
; 7%)
、 AT
肛 (
1
/
1
5
; 7%) 、 TSC2(
1
/
1
5
; 7%)
、 PETN(
1
/
2
2
; 5%)
と稀であった。本研究と胃 NETの遺伝子変異を比較するにはまだ症例数が足りないため、
今後の更なる症例集積と解析が望まれる。
〔総括〕
胃の NEC及び MiNENにおいて、 TP53変異が高頻度で認められ、他の遺伝子変異は少な
いことが明らかになった。また、胃の NECおよび MiNENは、胃腺癌に類似していること
が示唆された。
本研究は、胃 NEC及び胃 MiNENの遺伝学的特徴について研究したものであるが、従来
ほとんど行われていなかった全エクソームシークエンスを用いて遺伝子変異を解析し
た報告である。稀な疾患に対してその遺伝学的特徴を明らかにしたことについて重要な
知見を得たものとして価値ある集積であると認める。
よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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