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大学・研究所にある論文を検索できる 「聴性誘発脳磁界N100m反応からみた音楽による対側耳マスキング効果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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聴性誘発脳磁界N100m反応からみた音楽による対側耳マスキング効果

白倉 真之 東北大学

2021.09.24

概要

背景:対側の耳に提示された音は、中枢性マスキングのメカニズムを介して、同側の耳に提示された信号音に反応する聴性誘発脳磁界 N100m に影響を与えることが知られている。信号音により誘発される N100m がマスキングを受ける結果減弱するが、様々な音刺激の中で音楽や断続的なノイズによるマスキング効果に、古典的な末梢性マスキングおよび中枢性マスキング現象以外の要因が関与している可能性を示唆している。音楽による効果が最も大きいが、これらの刺激による詳細なメカニズムは不明である。また、右半球から得られる N100m 振幅に対してある特定の音圧の対側音による効果が指摘されているが、これらの対側音効果のより詳細な特徴については、まだ十分に明らかにされていない。

目的:音楽の効果に焦点を当て、右半球と左半球の聴覚皮質の活性化を分離できる脳磁図(Magnetoencephalography:MEG )を用い、一側のトーンバースト刺激音で誘発された N100m の潜時と振幅に対する、音圧を変化させた場合の対側音楽刺激と対側ノイズ刺激の効果を比較検討した。また、それに付随して P50m、P200m への影響も検討した。

方法:対象者は、耳疾患や神経学的疾患の既往のない、12 名の健常成人であり、性別は男性 12 名である。年齢分布は 23 から 62 歳で、平均年齢は 37.2 歳で標準偏差は 11.2 歳である。対象者は全員右利きである。聴性誘発脳磁界を誘発する刺激音は左耳に持続時間 500 ミリ秒 のトーンバーストを使用し、対側妨害音として右耳に音楽あるいはノイズを用いた。刺激音は音圧 70 dB SPL で固定し、対側妨害音は 30 から 80 dB SPL まで 10 dB ごとに調査した。被験者にはトーンバースト聴取後にボタンを押すことを指示した。200 チャネル、ヘルメット型脳磁計を用い左右半球の聴性誘発脳磁界の主たる活動 N100m を測定し、二乗平均平方根:Root Mean Square (以下 RMS)値での振幅および潜時を求めた。振幅と潜時において、対側妨害音を有する条件として音楽条件とノイズ条件に加え、対側妨害音なし条件をコントロール条件としてその差分を求め、音圧と対側妨害音種別を含めた統計学的解析を行った。N100m に付随して P50m や P200m も同様にデータが得られた被検者について解析した。また、対側妨害音に対するアブミ骨筋反射閾値、心理音響閾値も測定した。

結果:対象全 12 名中、右半球では全 12 名の波形を得た。一方、左半球では 8 名で音楽およびノイズ条件どちらとも波形を得た。 左右いずれの半球でも N100m の振幅では音圧に反比例して低下を認め(p < 0.001)、対側妨害音種別では音楽条件がノイズ条件と比較し低下した(p = 0.003)。また、潜時では対側妨害音種別の音楽条件はノイズ条件と比較し延長した(p < 0.001)。交互作用はいずれも認めなかった。多重比較では、右半球(n=12)の 30 から 80 dB 全ての音圧において音楽条件はノイズ条件に比し振幅の低下を示した(p < 0.05)。また、40, 50,60, 80 dB の音圧では音楽条件はノイズ条件に比し潜時の延長を示した(p < 0.05)。左半球(n=8)では、同様に40 から80 dB で振幅の低下を示し(p < 0.05)、60 dB と80 dB を除く条件での潜時の延長を示した(p < 0.05)。P50mと P200m では左半球において 12 名中 3 名と出現率が低く対象から除いた。P50m(右半球)では 12 名中 7 名で記録し、振幅の対側妨害音種別の要素で有意差を得た(p = 0.023)。P200m(右半球)では 12 名中 7 名で記録し、振幅は対側妨害音種別の要素で(p < 0.001)、潜時は対側妨害音種別の要素で有意差を得た(p = 0.009)。ボタン押し反応において各群の有意差は認めなかった。

考察:聴覚誘発反応は、刺激音の反対側の耳に提示された妨害音により、オリーブ核蝸牛神経束やアブミ骨筋反射のような末梢的なメカニズムと、中枢的なメカニズムの両方で影響を受ける。本研究で明らかになった対側妨害音(音楽)の N100m への影響の多くは、参加者の刺激に対する選択的な注意により増強されたものと考える。本研究では、N100m を誘発するために左耳で提示した刺激音であるトーンバースト音に注意を払い、これを聞いた後に応答ボタンを押すように被験者へ指示した。対側妨害音である音楽が参加者の刺激音への注意を妨害し、刺激音への注意力を低下させたと考える。本研究における対側妨害音であるノイズ条件の効果が相対的に小さかったのは、ノイズと音楽では使用した刺激音に対する注意を妨害する力が異なるためであり、これら 2 つの刺激間のサリエンシーの違いに関係していると考える。しかし、音楽の音圧が N100m の振幅に有意な効果を示したのに対し、N100m の潜時には有意な効果を示さなかった理由は明らかではない。これが注意や顕在意識のメカニズムに関連した効果の特徴的な所見であるかどうかについては、さらなる調査が必要である。

結論: 音楽条件は、ノイズ条件に比べて有意に N100m を抑制し、妨害音の音圧が上昇するにつれてその影響も強化された。対側妨害音である音楽で刺激音であるトーンバースト音の N100m が抑制されるメカニズムは、注意に関連した抑制である可能性がある。

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