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大学・研究所にある論文を検索できる 「Individual differences in the aftereffects of tACS targeting occipital alpha oscillations」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Individual differences in the aftereffects of tACS targeting occipital alpha oscillations

澁澤, 柊花 大阪大学

2022.03.24

概要

背景:脳活動は様々な時空間的スケールでリズミカルな活動パターンを示す.なかでも,安静時にヒトの後頭領域で顕著に観察されるアルファ波と呼ばれる8-13Hz帯域の成分は,様々な知覚や認知機能との関連が報告されている.経頭蓋交流電気刺激(transcranialalternatingcurrentsimulation;tACS)は頭皮上に貼り付けた電極に微弱な交流電流を流す非侵襲脳刺激技術である.後頭領域にアルファ周波数でtACSを与えると,アルファ波に関連する機能変調が起こるほか,刺激後にも効果が残存する事後効果(aftereffects)が見られるという報告が複数ある.しかし,tACSは被験者間の効果のばらつきが大きく,再現性が低いといった問題がある.

目的:本研究は,後頭のアルファ波を対象としたtACS事後効果の個人差の要因を検討することを目的とした.まず,脳磁図(Magnetoencephalogram;MEG)計測環境下においてtACSを行うための実験系を構築した.次に,tACS条件と擬似刺激条件で刺激前後のMEG計測を行い,条件間における刺激前後のアルファ波パワーの変化の違いを評価した.

方法:【計測環境構築】はじめに,既存のtACSセットアップは電磁場シールド環境内にノイズを誘引し,MEG計測に支障をきたすことを定量的に示した.そのうえで,ノイズを抑制するための改善策を提案し,tACSセットアップによるノイズレベルとヒトのアルファ成分を比較した.【tACS事後効果の個人差】tACS実験における刺激周波数を決定するため,安静時MEGデータを取得し,後頭センサから被験者固有のアルファ波周波数を推定した.その後,18名においてtACS条件と擬似刺激条件にて40分間のMEG計測を2日間に分けて行った.被験者は画面に映る十字型の固視点を注視し,ランダムに起こる回転運動を検出した時にボタンを押すように指示された.40分間の計測のうち,途中20分間にtACS•擬似刺激のどちらかを与えた.前後の10分間の計測データはアルファ波パワーの計算のために用いた.

結果:【計測環境構築】ヒトのアルファ波パワーは231.9±41.9(fT/cm)/Hzであった.一方,改善前のノイズレベルは122.。±98.0(fT/cmh/Hzと標準偏差が大きく,ノイズが大きいトライアルではヒトの脳磁場信号の強度と同程度になった.セットアップ改善の結果,21.5±5.3(fT/cm)7Hzとなり,セットアップ由来のノイズをヒトの脳磁場信号の揺らぎ以下に抑えることができた.【tACS事後効果の個人差】tACS実験にて記録したMEGデータを10秒ごとに分割してスペクトル解析をした結果,刺激条件によらずアルファ帯域に2つのピークが確認され,その2つのピークがそれぞれ側頭/後頭に由来する群(ガ=10)と側頭後頭/頭頂に由来する群(ガ=8)に分けられた.それらのピーク周波数は全被験者で一貫して低い方から順に側頭,後頭,頭頂となった.両群の2つのピークそれぞれのパワー値をtACS前後で比較した結果,側頭/後頭群の側頭パワーは擬似刺激前後で増加し,tACSによって増加が抑制された一方で,後頭パワーはtACS条件のみパワーが増加した.側頭後頭/頭頂群では,側頭後頭パワーは刺激条件によらず増加し,頭頂パワーは刺激条件によらず刺激前後の変化は認められなかった.

考察:tACSによるアルファ波パワーの変調効果は電流刺激の周波数とピーク周波数の関係によって異なっていた.この結果は,長期増強(LTP)と長期抑制(LTD)の機序によって説明可能であると考える.tACSの事後効果は神経発火のタイミング依存的な可塑性に由来し,刺激周波数が固有周波数よりわずかに低い場合にはLTPが,わずかに高い場合にはLTDが起こると考えられている.本実験は刺激周波数決定のための固有周波数の推定を周波数分解能0.5Hzで行ったため,被験者固有の2つのピークを切り分けることができず,さらにはMEG信号では側頭成分が強く観察されることから,後頭センサには後頭成分に加え側頭成分が混在していた.そのため,多くの被験者で実際の後頭周波数よりわずかに低い周波数で刺激を行っていた.その結果,後頭ではLTPが起き,tACS前後でアルファ波パワーが上昇した可能性がある.一方,側頭ではLTDが起きtACS前後でアルファ波パワーが減少した結果,擬似刺激時でも観察された疲労によるアルファ波パワーの増加を抑制した可能性がある.また,頭頂成分と刺激周波数では数Hzの乖離があったため可塑性が誘導されなかったと解釈できる.本研究は,tACSの事後効果の個人差は個人のアルファ波の空間的および周波数的特性によって説明されることを示した.電流刺激周波数の慎重な選定と複数の周波数成分を切り分けることで,より効果的なtACSの活用が期待される.

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