リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Short-Term Outcomes from a Randomized Screening Phase II Non-inferiority Trial Comparing Omentectomy and Omentum Preservation for Locally Advanced Gastric Cancer: the TOP-G Trial」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。
リケラボ

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Short-Term Outcomes from a Randomized Screening Phase II Non-inferiority Trial Comparing Omentectomy and Omentum Preservation for Locally Advanced Gastric Cancer: the TOP-G Trial

村上 仁志 横浜市立大学

2023.02.28

概要

1. 序論
胃癌は世界的に減少傾向にあるものの癌死のうち４位を占め，未だに死亡率の⾼い癌腫 である（Sung et al., 2021）．局所進⾏胃癌に対する治療の中⼼は⼿術治療であり，治癒を⽬的とする際は他の消化器癌同様，完全な原発巣の切除と領域リンパ節の切除を⾏うため間膜を含めた⼀括切除が基本となる（胃癌治療ガイドライン第 6 版; ⽇本胃癌学会編, 2021）．胃は特殊な間膜構造をしており，⼤弯側ではその間膜が延⻑して⼤網および網嚢を形成している．⼤網は腹膜播種をよく認める部位であり，動物モデルでは腹腔内に移植された癌細胞が⼤網にあるリンパ機関の腹腔内への開⼝部に集まることが⽰され，また胃癌患者における⼤網への微⼩転移が免疫染⾊や RT-PCR などにおいてしばしば検出される事が報告されている(Hagiwara et al., 1993; Kodera et al., 2002; Oosterling et al., 2006)．再発形式の多くを占める腹膜播種の制御は進⾏胃癌治療において重要な課題であり，外科医は網嚢を含めた⼤網の完全切除を習慣的に⾏ってきた．このうち網嚢部分の切除効果を科学的に検証した第 III 相試験(JCOG1001)の結果により網嚢切除が否定されたため (Kurokawa et al., 2018)，狭義の⼤網部分の切除効果に対する疑問が残されることとなっ た．いくつかの後⽅視研究では⼤網切除が⼿術時間，出⾎量，⼿術合併症を増加させる事を⽰しており(Hasegawa et al., 2013; Kim et al., 2014; Ri et al., 2020)，全⾝疾患となった腹膜播種に対して⼤網切除の効果は限定的とする考え⽅があるが，⼤網切除の省略に関しても第Ⅲ相試験による科学的な検証が必要となる．そのため我々は⼤網切除術と⼤網温存⼿術を⽐較する⼤規模第 III 相試験の前段階として，⼤網切除術と⼤網温存術を⽐較するた めの多施設ランダム化第 II 相試験(TOP-G 試験)を計画実施した．今回は副次評価項⽬である短期成績についての検証を報告する．

2. 実験材料と⽅法
進⾏胃癌における⼤網温存の安全性を確認する事を⽬的とし，標準治療である⼤網切除群（♙ 群）と⼤網温存群（B 群）を⽐較する多施設共同ランダム化試験をデザインした．原発巣からの⽣検検査にて胃癌が証明された臨床診断において深達度 T2-T4a，リンパ節転移度 N0-N2 の症例を対象とした．術前，術中の 2 段階で登録が⾏われ，術中所⾒による術式，深達度診断にて層別化，ランダム化割り付けが⾏われた．⼿術アプローチは開腹のみで，腫瘍の局在により胃全摘術もしくは幽⾨側胃切除術が選択され，D2 リンパ節郭清が⾏われた．♙ 群では標準治療である⼤網切除が実施され，B 群ではリンパ節郭清に必要な右胃⼤網動脈より３cm を切除範囲とし⼤網が温存された．試験の主要評価項⽬としては 3 年無再発⽣存が設定されたが，今回の検討では短期成績として副次評価項⽬である⼿術時間，出⾎量，死亡率を含めた合併症発⽣率が⽐較検討された．本研究は UMIN- CTR に UMIN000005421 として登録され，横浜市⽴⼤学附属病院及び関連 10 施設が参加し，各々の施設において倫理審査による承認を受け施⾏された(横浜市⽴⼤学における承認番号：B160201022)．

3. 結果
2011 年 4 ⽉から 2018 年 10 ⽉の間に計 251 例の症例がランダム化登録され，腹膜播種や開腹歴による除外の後，最終的に ♙ 群に 122 例，B 群に 125 例が登録され解析された．患者背景と臨床病理学的背景は両群にばらつきなく，術式も均等に分散されたが B 群でやや脾摘が多く⾏われた．♙ 群に⽐較し B 群ではやや⼿術時間が短く（中央値 225 分 vs 204 分，p=0.022），出⾎はやや少ない傾向であった（中央値 260mL vs 210mL，p=0.073）．合併症発⽣率はほぼ同等で両群ともに 10％以下であった（♙ 群 vs B 群：8% vs ９％， p=1.00）．両群で死亡例を認めなかった．

4. 考察
今回の研究は我々の知る限り局所進⾏胃癌における⼤網切除と⼤網温存を⽐較した最初のランダム化⽐較試験である．この臨床試験は⽐較的良くコントロールされた背景因⼦の中，これまでの胃癌⼿術に対する⼤規模臨床試験と遜⾊ない質で⼿術治療が⾏われた事が確認された．短期成績の結果における両群間の⽐較では，⼤網温存により⼿術リスクが軽減されることが期待されたが，⼿術時間の短縮や出⾎量の低下が認められたのみで合併症発⽣率は同等であり，⼿術リスクは同等であることが⽰唆された．

論文の公開元へ

関連論文

関連論文をもっと見る

参考文献

1. Clinical diagnosis of metastatic gastric tumors: clinicopathologic findings and prognosis of nine patients in a single cancer center. Kobayashi, O., Murakami, H., Yoshida, T., Cho, H., Yoshikawa, T., Tsuburaya, A., Sairenji, M., Motohashi, H., Sugiyama, Y., Kameda, Y. World J Surg. 28(6):548-51, 2004.

2. The efficacy of gastrectomy for large gastric cancer. Kobayashi, O., Tsuburaya, A., Yoshikawa, T., Osaragi, T., Murakami, H., Yoshida, T., Sairenji, M. Int J Clin Oncol. 11(1):44-50, 2006.

3. Changes in vitamin D after gastrectomy. Rino, Y., Yamamoto, Y., Wada, N., Yukawa, N., Murakami, H., Tamagawa, H., Yamada, T., Ohshima, T., Masuda, M., Imada, T. Gastric Cancer. 10(4):228-33, 2007.

4. Phase II Study of S-1 Monotherapy as a First-line, Combination Therapy of S-1 plus Cisplatin as a Second-line, and Weekly Paclitaxel Monotherapy as a Third-line Therapy in Patients with Advanced Gastric Carcinoma: Phase II Study of S-1, S-1 plus Cisplatin, and Weekly Paclitaxel in Patients with Advanced Gastric Carcinoma. Rino, Y., Yukawa, N., Wada, N., Suzuki, M., Murakami, H., Yamada, T., Nakayama, H., Yamamoto, N., Sato, T., Yamada, R., Ohshima, T., Masuda, M., Imada, T. Clin Med Oncol. 2:375-83, 2008.

5. Risk of hemorrhage using LigaSure AtlasTM ‒ a pitfall of laparoscopic surgery-, report of two cases. Murakami, H., Rino, Y., Yukawa, N., Masuda, M., Kanazawa, A., Yamada, T., Satoh, T., Yamamoto, N., Oshima, T., Imada, T. 横浜医学, 60, 19-23, 2009

6. Paraneoplastic neurological syndrome in a patient with gastric cancer. Murakami, H., Rino, Y., Yamanaka, S., Baba, Y., Sekiguchi, T., Yukawa, N., Oshima, T., Sugano, N., Matsuura, H., Masuda, M., Imada, T. Gastric Cancer. 13(3):204-8, 2010.

7. A Phase II Study of S-1 Monotherapy as a First-line Combination Therapy of S-1 Plus Cisplatin as a Second-line Therapy, and Weekly Paclitaxel Monotherapy as a Third-line Therapy in Patients with Advanced Gastric Carcinoma: A Second Report. Rino, Y., Yukawa, N., Murakami, H., Wada, N., Yamada, R., Hayashi, T., Sato, T., Ohshima, T., Masuda, M., Imada, T. Clin Med Insights Oncol. 24(4): 1-10, 2010.

8. Detection of gastric cancer cells in the blue lymph node and lymphaticus under sentinel lymph node biopsy using dye technique alone. Rino, Y., Ohshima, T., Yoshihara, K., Yukawa, N., Wada, N., Murakami, H., Sugano, N., Matsuura, H., Woo, T., Masuda, M., Imada, T. Hepatogastroenterology. 57(99-100): 395-7, 2010.

9. Primary placement technique of jejunostomy using the entristar™ skin-level gastrostomy tube in patients with esophageal cancer. Rino, Y., Yukawa, N., Murakami, H., Sato, T., Takata, K., Hayashi, T., Oshima, T., Wada, N., Masuda, M., Imada, T. BMC Gastroenterol. 11: 8, 2011.

10. Pneumopericardium from esophageal-pericardial fistula due to cancer recurrence. Kasama, K., Rino, Y., Murakami, H., Suzuki, S., Isomatsu, Y., Masuda, M. Asian Cardiovasc Thorac Ann. 19(6):444, 2011.

11. Short-term results of a phase II study of preoperative docetaxel/cisplatin/S-1 therapy for locally advanced gastric cancer. Tsuchida, K., Sato, T., Aoyama, T., Atsumi, Y., Kano, K., Maezawa, Y., Kazama, K., Numata, M., Yamada, T., Tamagawa, H., Murakami, H., Oshima, T., Saeki, H., Cho, H., Yukawa, N., Yamamoto, Y., Masuda, M., Rino, Y. Jpn J Clin Oncol. 51(3):371-378, 2021.

12. S-1/CPT-11 併⽤療法が著効し治癒切除が可能となった進⾏直腸癌の 1 例．村上仁志, ⼭川昌美, 韓 仁燮, ⽻⿃慎祐, 鈴⽊ 誠, 岩崎博幸, ⾼梨吉則： 癌と化学療法 34(10): 1667-1669, 2007．

13. 胃癌に対する S-1 投与中に発⽣した間質性肺炎の 1 例． ⼭本直⼈, ⼤島貴, 佐藤勉, 牧野洋知, ⾦澤周, ⼭⽥貴允, 村上仁志, 湯川寛夫, 永野靖彦, 藤井正⼀, 國崎主税, 塚原利典, 利野靖, 益⽥宗孝, 今⽥敏夫： 癌と化学療法 35(11): 1935-1937, 2008.

14. 胃癌治療における S-1/CDDP 併⽤化学療法の外来施⾏の可能性について 利野靖, 村上仁志, 湯川寛夫, 和⽥修幸, ⼤島貴, 松浦仁, 菅野伸洋, 荒井宏雅, 益⽥宗孝, 今⽥敏夫： 癌と化学療法 36(11): 1829-1831, 2009.

15. 当科における腹腔鏡補助下胃切除術-導⼊から 10 年の成績-. 村上仁志，利野靖，湯川寛夫，菅野伸洋，松浦仁，益⽥宗孝，今⽥敏夫： 横浜医学, 61, 77-81, 2010

16. 湯川寛夫，利野 靖，菅野伸洋，⼭⽥六平，村上仁志，佐藤 勉，松浦 仁，⼤中⾂康⼦，益⽥宗孝： 横⾏結腸癌術後 6 年で⼤動脈周囲リンパ節単独再発し化学療法が奏効した 1 例 ⽇本外科系連合学会誌，35(6),904-909,2011

17. 内視鏡下クリッピングが有効であった頚部結核性リンパ節炎による⾷道⽪膚瘻の１例菅野伸洋，湯川寛夫，沼澤慶太，阿部泰伸，加藤晃史，⼤中⾂康⼦，松浦仁，村上仁 志，佐藤勉，⼭⽥六平，⼤島貴，利野 靖，益⽥宗孝： 横浜医学，62, 29-34, 2011

18. 短期間に⾃然退縮傾向を⽰した lymphocytic mastopathy の 1 例 深堀道⼦, 村上仁志, 井上広英, 熊 寛, 深野史靖, ⽥村功, 鈴⽊紳⼀郎, 下⼭潔乳癌の臨床 28(6): 637-643, 2013.

19. 腹膜播種を伴った⾍垂・S 状結腸印環細胞癌に対する薬物療法の経験 原⽥真吾, ⼟⽥知史, 澁⾕泰介, ⼟井雄喜, 菊池章友, 森康⼀, 藪下泰宏, 渡辺卓央, 村 上仁志, ⻑⾕川誠司, 福島忠男, 池秀之, 中⼭崇 癌と化学療法 42(10): 1268-1270, 2015.

20. ⾼齢者⼤腸癌症例に対する鏡視下⼿術の有⽤性 藤川善⼦, ⻑⾕川誠司, ⼟井雄喜, 澁⾕泰介, 森康⼀, 藪下泰弘, 三箇⼭洋, 渡辺卓央, ⼟⽥知史, 村上仁志, ⾍明寛⾏, 福島忠男, 池秀之, 今⽥敏夫, 益⽥宗孝： 癌と化学療法 42(12): 2142-2144, 2015.

21. HER2 陽性胃癌の特徴と治療成績 ⼟⽥知史, 村上仁志, ⼟井雄喜, 菊池章友, 森康⼀, 原⽥真吾, 藪下泰宏, 渡辺卓央, ⻑ ⾕川誠司, 福島忠男, 池秀之, 中⼭崇, 利野靖, 今⽥敏夫, 益⽥宗孝： 癌と化学療法 42(10): 1289-1291, 2015.

22. 多発遠隔リンパ節転移を伴う進⾏胃癌に対し化学療法後に救済⼿術を施⾏し⻑期⽣存 が得られた 1 例 嶋⽥裕⼦, 林勉, 南澤恵佑, 澁⾕泰介, 根本⼤⼠, 横井英⼈, 和⽥朋⼦, 渡辺卓央, ⾼川 亮, 村上仁志, ⻑⾕川誠司, 福島忠男, 池秀之, 利野靖, 益⽥宗孝： 癌と化学療法 43(12): 1908-1910, 2016.

23. Capecitabine+CDDP+Trastuzumab 療法により CR を得たHER2 陽性進⾏再発胃癌の 1 例． 橋本⾄, 村上仁志, 有坂早⾹, 菅原裕⼦, 瀬上顕貴, ⾼川亮, 林勉, 嶋⽥和博, 平川昭平, ⻑⾕川誠司, 福島忠男, 池秀之, 今⽥敏夫, 利野靖, 益⽥宗孝： 癌と化学療法 44(12): 1455-1457, 2017.

24. 急性胆嚢炎術後に診断された胆嚢悪性リンパ腫の 1 例． 須藤友奈, ⾼川亮, 古波藏かおり, 橋本⾄, 横井英⼈, 菅原裕⼦, 有坂早⾹, 瀬上顕貴,林勉, 嶋⽥和博, 村上仁志, 平川昭平, ⻑⾕川誠司, 福島忠男, 池秀之, 今⽥敏夫： 癌と化学療法 45(1): 85-87, 2018.

25. 多発肝転移を契機に診断された回腸 Neuroendocrine Tumor (NET) G1 の 1 例． 橋本⾄, ⻑⾕川誠司, 池⽥孝秀, 菅原裕⼦, ⾼川亮, 稲垣⼤輔, 村上仁志, ⼤佛智彦, 上 ⽥倫夫, 池秀之, 福島忠男, 今⽥敏夫, 利野靖, 益⽥宗孝： 癌と化学療法 45(13): 1964-1966, 2018.

参考文献をもっと見る