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大学・研究所にある論文を検索できる 「封入体筋炎におけるミトコンドリア機能異常の検討とその治療薬開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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封入体筋炎におけるミトコンドリア機能異常の検討とその治療薬開発

及川 善嗣 東北大学

2020.03.25

概要

【研究背景】
近年高齢化ともに筋力の低下や萎縮などが社会問題となっているが診断や治療法が確立していない。筋疾患のなかで封入体筋炎(sIBM)は 50 歳以降に多く発症する慢性進行性の筋疾患でありその病態は不明で特定なマーカーや有効な治療法が確立していない。近年、sIBM においてミトコンドリアの機能異常がその病態進展に関与している可能性が報告された。そこで私は患者の血清の解析と、単離筋芽細胞を用いて sIBM の病態解明を試みることにした。また私の所属する研究グループでは日本発世界初の新規メカニズムのミトコンドリア病治療薬候補 MA-5 (特許第 6284159 号、特許第 6372817 号) が開発されている。そこで sIBM 患者単離筋芽細胞を用いてその有用性を検証することにした。臨床検体は東北大学病院倫理委員会の承認を得て sIBM 患者 9 例から血清を採取しさらにそのうち 3 症例から筋芽細胞、1 例から皮膚線維芽細胞を単離した。

【方法】
1)sIBM 患者の血清中のミトコンドリア病の診断マーカーGDF15 (growth differentiation factor 15) 値を測定して sIBM 患者のミトコンドリア機能が低下しているかどうかを確認すること

2)sIBM 患者筋芽細胞用いてミトコンドリア機能異常の有無と酸化ストレスに対する脆弱性を検討すること

3)ミトコンドリアの構造・動態はその機能に影響することから共焦点顕微鏡および電子顕微鏡を用いて MA-5 によるミトコンドリアのクリステ構造の変化とダイナミクスを検討すること

4)上記のミトコンドリア異常に対する MA-5 の効果を検討すること

5)sIBM 筋芽細胞の単離は侵襲性が高くまた技術と労力が必要になることからより単離の容易な皮膚線維芽細胞を用いても筋芽細胞と同等の評価できるかどうかを検討する事を目的とした。

【結果】
1)sIBM 患者の血清中では正常者と比べて GDF15 値が有意に上昇していた。
他のミトコンドリア病マーカーである FGF21 は変動しなかった。従って GDF15 は sIBM のマーカーとして有用である可能性が示唆された。

2)細胞外フラックスアナライザーを用いた検討から sIBM 患者由来筋芽細胞ではミトコンドリア呼吸の有意な低下が認められ、ATP の産生が抑制されており、MA-5 は低下した ATP を回復させた。
また sIBM 患者由来筋芽では BSO による酸化ストレスに脆弱であり細胞死が誘導され、それに対して MA-5は保護効果を示した。

3)sIBM 患者の培養筋芽細胞は正常と異なり酸化ストレスによりミトコンドリアが断片化した。
またミトコンドリアダイナミクスを計測したところ sIBM 患者の培養筋芽細胞では正常人由来の細胞に比較しその 移動速度が遅いことを確認した。MA-5は断片化したミトコンドリアの形態を改善し、 移動速度の上昇が観察された。

4)sIBM の患者皮膚線維芽細胞でも筋芽細胞と同様にミトコンドリア機能、形態並びにダイナミクスの異常とMA-5の有効性が確認された。

以上より sIBM 患者ではミトコンドリアの構造・機能並びにダイナミクスが低下しており、MA-5 はその低下したミトコンドリア機能を回復させることで細胞死を抑制することが明らかとなった。今後 MA-5 はミトコンドリア病治療薬のみならず sIBM の治療薬候補となりうる可能性が示唆された。

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