ミトコンドリア機能改善薬MA-5によるサルコペニア抑制効果の検討

概要

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学
（

位 論 文 要 約
A b s t r a c t ）

博士論文題目 Title of dissertation

ミトコンドリア機能改善薬 MA-5 によるサルコペニア抑制効果の検討

東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
外科病態学講座整形外科学分野
氏名 Name

阿部

高久

サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量および筋力の低下と定義され、健康寿命の大きな阻害因子である。
超高齢社会を迎えた本邦において、サルコペニアは既に軽視できない医療・社会問題であり、治療法の確
立が喫緊の課題である。近年サルコペニアの病態に骨格筋ミトコンドリアの機能低下が大きく関与してい
ることが明らかとなり、治療の標的として注目されている。
Mitochonic Acid-5（MA-5）は新規ミトコンドリア病治療薬として開発されたインドール化合物である。
MA-5 はミトコンドリア内膜に存在するタンパク質ミトフィリン（mitofilin）に作用することでアデノシ
ン三リン酸（adenosine triphosphate: ATP）合成酵素の重合化を促進し、ATP 産生効率を高めると同時に
活性酸素種の産生を低下させる。本研究では老年マウスに MA-5 を投与することで、サルコペニアを抑制
する効果が得られるかを検証した。92 週齢のオス C57BL/6J マウスを使用し、MA-5 投与群（MA-5 群）には
MA-5 50 μg/mg/日を 9 週間投与し、対照群（Ctrl 群）には同量の蒸留水を投与した。経過に伴い Ctrl 群
ではトレッドミルの走行時間が著明に短縮したのに対し、MA-5 群では走行時間が維持された。筋量に関し
ては両群間に有意な差はなかったが、免疫染色を行うと MA-5 群でミオシン重鎖（myosin heavy chain: MHC）
IIa の割合が増加し遅筋化が誘導されていた。コハク酸脱水素酵素（succinate dehydrogenase: SDH）染
色では、MA-5 群で有意に染色面積が増加しており、ミトコンドリア呼吸鎖の活性化が示唆された。また、
電子顕微鏡によりミトコンドリアの形態を観察すると、MA-5 群では加齢に伴い生じるミトコンドリア内の
空胞形成が有意に減少していた。しかし、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応（RT-qPCR）ではミトコン
ドリアの生合成、融合、分裂（ミトコンドリアダイナミクス）に関与する既知の遺伝子の発現量に差はみ
られなかった。運動機能が改善したメカニズムを検証するため RNA sequencing を行うと、有酸素運動お
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よびレジスタンス運動を行った後と同様の遺伝子発現が生じていることが明らかになった。すなわち MA-5
を投与すると、ミトコンドリアの機能改善および形態異常が抑制され、運動を行った場合と類似した遺伝
子の発現パターンを示すことにより、加齢に伴う運動機能の低下が抑制されると考えられた。本研究によ
り MA-5 は骨格筋の機能を改善させ、サルコペニアの根本的な治療薬となる可能性が示唆された。 ...