リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Estrogen receptor α in T cells controls the T-cell immune profile and glucose metabolism in mice with gestational diabetes mellitus」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Estrogen receptor α in T cells controls the T-cell immune profile and glucose metabolism in mice with gestational diabetes mellitus

田中 智子 富山大学

2020.03.24

概要

【目的】 妊娠糖尿病 (GDM)は妊娠期に発症あるいは初めて認められた糖尿病に至らない耐糖能異常であり、現在日本では7-9%、全世界では約14%の妊婦が診断され、その増加が問題となっている。GDMの合併症には妊娠高血圧症や早産などの産科的リスクだけでなく、胎児仮死や巨大児などの児に対する短期的リスクに加え、将来の肥満や2型糖尿病の発症リスクが増大することから、妊娠中の厳重な血糖管理が必要とされている。GDMの病態基盤は、児に対する母体からの栄養供給に必要とされる母体での生理的なインスリン抵抗性の増大に対し、インスリン分泌が相対的に不足した際に発症すると考えられており、ゲノムワイド関連解析(GWAS)でG DM患者に集積が認められる一塩基多型は、ほとんど2型糖尿病でのインスリン抵抗性とインスリン感受性に関連する遺伝子と一致することが示されているが、その発症機転には不明な点も多い。

インスリン抵抗性を誘導する主因の 1 つとして、内臓脂肪組織を中心とするインスリン標的臓器での慢性炎症の関与が示唆されている。正常状態の内臓脂肪組織には 2 型ヘルパーT 細胞 (Th2)、過剰な免疫反応を抑制する制御性 T 細胞(Treg)、M2 マクロファージが優位に局在し、これらがインスリン感受性の維持に寄与する。しかし肥満病態では 1 型ヘルパーT 細胞(Th1)、 IL17 産生型ヘルパーT 細胞(Th17)、M1 マクロファージが優位に浸潤し、これらによる慢性炎症の進展がインスリン抵抗性の増悪に関与する。さらに、GDM 患者の血清では Th17 の増加、 Treg の減少や機能低下が報告され、慢性炎症を介したインスリン抵抗性増悪機構が示唆されている。

女性ホルモンのエストロゲンは、生殖や妊娠の維持に重要な作用を示すだけでなく、糖代謝を含む全身の恒常性維持に重要な作用を示す。エストロゲンは様々な免疫細胞に対する調節作用が知られており、特に T 細胞免疫への調整作用が明らかとされてきた。実際、エストロゲンはナイーブT 細胞をTreg へ誘導すること、Th17 細胞産生への分化を抑制するその制御機構が報告されている。さらに妊娠期に増加するエストロゲンは、子宮での Treg を増加させることで胎児に対する免疫寛容の成立に寄与することが示唆されている。しかし、GDM で認められるT 細胞の免疫異常の原因は未知であり、エストロゲンの関与も知られていない。そこで、本研究では T 細胞に対するエストロゲン作用が T 細胞免疫を調整し、妊娠中の糖代謝制御に寄与する可能性を着想し、マウスを用いて本仮説の実証を試みた。

【方法】 CD4 T細胞に発現する主なエストロゲン受容体はエストロゲン受容体α(ERα)であることから、CD4-creマウスとERα-floxマウス(FL)の交配によりT細胞特異的にERαを欠損するマウス(KO)を作製し、妊娠糖尿病病態下における糖代謝とT細胞免疫に及ぼす影響を解析した。対照マウスにはFLを用いた。

GDM モデルマウスを作製するため、文献に基づき雌性の KO および FL マウス(8-9 週齢)に 60 kcal%の高脂肪食(HFD)を 4 週間負荷後、免疫を賦活化するアロ妊娠のため雄性 BALB/cマウスと交配させ、その後も HFD の給餌を継続した。非妊娠 FL マウス(FL)、非妊娠 KO マウス(KO)、妊娠 FL-GDM マウス(FL-GDM)、妊娠 KO-GDM マウス(KO-GDM)の 4 群のマウスに対し、妊娠 13.5 日目にグルコース負荷試験(GTT)、16.5 日目にインスリン負荷試験(ITT)を行い、妊 18.5 日目に解剖した。内臓脂肪組織と脾臓の T 細胞サブセットはフローサイトメトリーを用いて解析した。さらに内臓脂肪組織と肝臓の組織学的解析、および炎症性関連遺伝子発現解析を行った。

【成績】 KO マウスは FL と比較し妊娠率、胎児体重に差異を認めず、その後の体重推移、解剖時の脾臓と内臓脂肪の組織重量にも変化を示さなかった。妊娠により肝臓重量は著明に増大したが、FL-GDM と KO-GDM 間に差異を認めなかった。KO マウスは ITT では変化を示さなかったが、GTT において KO-GDM は FL-GDM と比較して有意な耐糖能の悪化を示した。フローサイトメトリーの解析では、脾臓の各T 細胞サブセットには FL と KO で変化を示さず、また内臓脂肪組織の Th1 細胞と Treg の割合にも有意な変化を認めなかった。一方内臓脂肪での Th17 は、 FL-GDM に比べ KO-GDM で有意に増加した。またこの結果に関連し、KO-GDM の内臓脂肪ではマクロファージマーカーの Emr1 と炎症性サイトカイン Tnfa の発現増加を主体とする慢性炎症の亢進を認めた。一方、肝臓における慢性炎症関連遺伝子の発現には変化を認めなかった。また、子宮におけるTreg 数は、FL-GDM と比べ KO-GDM で減少した。

【総括】 GDM病態下の内臓脂肪において、T細胞に対するERαを介したエストロゲン作用はTh17細胞の増加および慢性炎症を抑制し、糖代謝維持に寄与することが示唆される。またKO-GDMはTh17細胞の増加に伴う内臓脂肪の慢性炎症を呈すことから、本マウスはヒトのGDMで認められる免疫異常と類似する表現型を示す、新たなGDMモデルマウスとなる可能性が考えられる。また、KO-GDMの脾臓ではT細胞サブセットに変化を認めなかったことから、全身でのT細胞分化に対するエストロゲンの寄与は低いと考えられる。一方、妊娠マウスの子宮におけるT regの増加はKO-GDMで認めなかったことから、妊娠中の子宮へのTreg誘導にはエストロゲンの寄与が示唆されるが、妊娠維持機構にはこれらのTregが不可欠ではないことが明らかとなった。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る