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大学・研究所にある論文を検索できる 「種雄牛および種雄鶏の繁殖能力向上に向けた5-アミノレブリン酸の利用に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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種雄牛および種雄鶏の繁殖能力向上に向けた5-アミノレブリン酸の利用に関する研究

谷口 慎 広島大学

2022.03.03

概要

5-アミノレブリン酸(5-ALA)は,4番目の炭素にカルボニル基を持つデルタ型のアミノ酸で,植物,動物,藻類,光合成細菌などに存在している。5-ALAが8つ集まりプロトポルフィリンIXになり,このポルフィリン環に様々な金属イオンが挿入された金属ポルフィリンは多様な機能をもつ。また,ポルフィリンに鉄イオン(Fe2+)が配位した鉄ポルフィリンはヘムと呼ばれ,様々なたんぱく質の補因子として利用されており,動物細胞においてきわめて重要な役割を果たしている。

本研究の目的は,5-ALAの家畜への利用,特に雄の精液性状に対する効果を検討することであり,実際に種雄牛候補牛および種雄鶏を用い,5-ALA飼料添加試験,精液希釈液への添加試験を実施した。具体的には,肉用牛(黒毛和種)において精液性状が不良な種雄牛候補牛への5-ALA給与試験を実施し,精液性状に改善が見られるかどうかを検討した(試験1)。種雄牛候補牛へ5-ALA給与試験を行い,精液性状にどのような影響があるのか検討した(試験2)。鶏においては,高齢日本鶏を用いた5-ALA添加飼養試験を実施し,高齢により生殖機能の低下した個体の精液性状が改善するかどうかを検討した(試験1)。通常廃用となる500日齢雄鶏を用いた5-ALA添加飼養試験で精液性状の向上が認められるかどうかを検討した(試験2)。最後の試験では,精液希釈液への5-ALA添加試験を実施し,5-ALAの精子に対する直接的な影響を検討した(試験3)。

第2章の種雄牛候補牛を用いた試験1において,精液性状が不良な牛への給与試験(5-ALAを1日0.1g/日添加)を実施した。その結果,全頭において精子奇形率の改善が見られた。また,前進運動精子率についても,給与前よりも給与後に高い値を記録した日が存在した。

第2章の試験2では,性成熟直後(12~14か月齢)の種雄牛候補牛に対して5-ALA給与試験(添加量は試験1と同様)を行った。なお,給与区分を,対照区(5-ALA無添加),試験A区(初回採精時から2か月間5-ALA給与),試験B区(採精時1か月前より3か月間5-ALA給与)とした。その結果,試験A区および試験B区は対照区に比べ有意に奇形率は低く,また試験B区は試験A区よりも有意に低い奇形率を示した。精子運動性においては,試験B区,試験A区,対照区の順で高い値を示した。精液採取回数に対する採取時の精子活力の割合も同様に試験B区,試験A区,対照区の順番であった。凍結融解後の精子奇形率は,試験B区,試験A区,対照区の順に低い値を示し,それぞれの区間に有意差が認められた。

第2章の結果から,種雄牛候補牛への5-ALAの経口給与は,精液性状の向上に対して有効であると考えられた。

第3章の種鶏を用いた試験1では,高齢鶏における5-ALA給与(5-ALAが飼料に対して5ppmとなるよう調整した飼料140g/1羽/日を給与)試験を実施した。3か月間の給与試験の結果,5-ALA給与によって全供試鶏とも精子密度に顕著な改善効果は認められなかったが,密度が向上した個体が約5割存在した。また,5-ALA給与前後のテストステロン濃度を計測したが,有意な差は認められなかった。

第3章の試験2では,500日齢の雄鶏を用い5-ALA添加給与試験を行った。飼料の給与量は実験1と同様であり,5-ALA濃度は10ppmとなるよう調整し,試験期間を3か月間とした。その結果,精子の運動性,密度および奇形率においても,処理区は対照区に比較し,給与による有効性が認められる個体が多く見られた。運動精子率と前進運動精子率については,給与3か月後の値は給与前に比較し平均値が高くなり,給与3か月後の精子密度は給与前と比較し有意に高くなった。精子奇形率は給与前に比べ給与後の方が低い値を示し,給与後1.5か月後では給与前との間に有意差が認められた。

第3章の試験3では,鶏精液希釈液への5-ALA添加試験を実施し,精液に対する5-ALAの直接的効果を検討した。その結果,0.05mM添加区が,全ての濃度区(0,0.01,0.05および0.1mM)の中で最も高い運動性を示し,ミトコンドリア活性も有意に上昇することが明らかになった。しかし,精子のATP産生に対する5-ALA処理の影響は対照区に比べて有意に低い値を示した。また,カフェイン添加およびグルコース添加における精子の運動性は5-ALA添加区に比べて有意に低い値を示した。

第3章の結果から,500日齢以上の種雄鶏への5-ALAの経口給与は,精液性状の向上に対して有効であり,5-ALAは,精子のミトコンドリアに直接作用し,運動性を高める効果があると考えられた。

以上,本研究の結果をまとめると,種雄牛への5-ALA給与は精液性状に向上をもたらすこと,また,鶏に対しての5-ALA給与は精液性状に向上をもたらし,希釈精液への5-ALA添加は,運動性を高める効果があると考えられた。

今後,5-ALAについてより詳細な研究および商品としての価格の低下が進めば,広く他の動物の繁殖にも利用できると思われる。また,5-ALAは生体内でも生成される天然のアミノ酸であるため,動物に対しての安全性は高く,動物への繁殖性向上に広く利用できると考えられる。

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