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大学・研究所にある論文を検索できる 「[研究トピックス]博士論文概要 : タイムスケールに着目した太陽高エネルギー粒子イベントに関する観測的研究(博士論文)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

[研究トピックス]博士論文概要 : タイムスケールに着目した太陽高エネルギー粒子イベントに関する観測的研究(博士論文)

木原, 孝輔 京都大学

2023.04

概要

11 研究トピックス
11.1 博士論文概要
タイムスケールに着目した太陽高エネルギー粒子イベントに関する観
測的研究(博士論文)
太陽は、その表面で起こるさまざまな活動現象を介して、光(電磁波)や粒子を惑星間空
間へと放出しています。これらによる惑星間空間や地球への影響は、総称して宇宙天気と
呼ばれています。宇宙天気における
重要な要素の一つが、太陽高エネル
ギ ー 粒 子 (Solar Energetic Particle;
SEP)です。SEPとは、太陽から放出さ
れる高エネルギー粒子(電子、陽子、
イオンなど)であり、いわゆる放射線
粒子です。地球周辺にまで到達した
粒子は、宇宙飛行士や航空機乗員
の放射線被曝、人工衛星の故障(図
図 1. 太陽高エネルギー粒子(SEP)による撮像素子への影響。
1)などを引き起こすため、その発生機
平常時(右)に比べ、撮影画像に大きくノイズが混入している(左)。
構の解明や予測が求められていま SOHO 衛星の観測機器 LASCO/C3 で撮影 ©NASA
す。
SEPが発生する原因の一つは、コロナ質量放出(Coronal Mass Ejection; CME)と呼ばれ
る、太陽表面からのプラズマの放出現象です。太陽表面から放出されたプラズマは、太陽
の上層大気(コロナ)中のプラズマを押しのけながら惑星間空間へと進みます。この際、放
出されたプラズマの前面には衝撃波が形成されます。この衝撃波が、粒子を高エネルギー
にまで加速する加速機構だと考えられています。このように、CMEとSEPには深い関係があ
り、例えばCMEの放出される速度と、地球付近で観測される陽子フラックスの間には正の
相関があることが知られています。ただし、SEPはイベントごとでの特徴差が非常に大きく、
同じような速度で放出されたCMEが由来になっていても、陽子フラックスが4桁程度までば
らつくことがあり、SEPの特徴を決定づける要素はまだ完全には解明されていません。中で
も、CMEが発生してから、SEPがいつ地球周辺にまで到達し、どの程度継続するのか、など
のタイムスケールは、SEPを予報するという観点からも重要な一方、どのようにして決定する
のかが未だに明らかになっていない重要な要素の一つです。
このような背景から、本博士論文では、SEPのタイムスケールに着目した研究を行いまし
た。まずはSEPのタイムスケールにどのような傾向があるかを調べる統計解析を実施し
(Kihara et al., 2020)、次に、粒子(陽子)が地球に到達するまでの時間がどのように決定さ
れるのか、を明らかにするためのイベント解析を行いました(Kihara et al., 2023)。

34

統計解析でのタイムスケールに関する主要な成果
は、2006年から2017年までに観測された134例の
SEPイベントから得られました。中でも、SEPの発生
源となったCMEが発生してから、地球軌道で粒子
が観測されるまでの時間(粒子到達時間)は、CME
の発生位置と強く結びついていました(図2)。太陽か
ら放出される粒子は、太陽面から伸びる磁力線に
沿って惑星間空間を伝搬します。この磁力線は太
陽を中心に、惑星間空間を放射状に伸びています
が、太陽が自転しているため、渦を描くように分布し
ていると考えられています。CMEが、この観測者に
接続している曲がった磁力線の足元付近で発生し
たとき、粒子到達時間は特に短くなる傾向にあるこ
とが分かりました。

図 2. 粒子到達時間の分布。縦軸は粒子到達
時間、横軸は CME が磁力線の足元から見て
どの経度で発生したかを示す。(Kihara et
al., 2020)

一方で、前述の通りSEPはイベントごとの特徴差が非常に大きいことで知られています。
図2の中央下部を見たとき、磁力線の足元付近でCMEが発生していても、粒子到達時間
は30分から6時間程度までばらつきを持って分布しています。なぜこのばらつきが発生する
のか?を解明することは、SEPの特徴差を説明し、ひいてはSEP全体の特性を説明する上
でも重要な課題です。同じような放出位置、放出速度のCMEが由来であるものの、異なる
粒子到達時間で観測された2つのSEPイベントに対して、CMEや太陽面、太陽電波の観測
などを総合した結果、CMEが放出されてから、粒子が放出されるまでに時間がかかった
SEPイベントで、粒子到達時間が平均よりも長くなっていることが判明しました。このイベント
では、CMEが一般的なものに比べて緩やかに加速しており、CMEが駆動する衝撃波にお
ける加速効率が緩やかであった、というモデルで、粒子到達時間の遅れが説明可能である
ことを示しました。

Kihara et al. (2020); Kihara, K., Huang, Y., Nishimura, N., et al. 2020, ApJ, 900, 75. doi:10.3847/1538-4357/aba621
Kihara et al. (2023); Kihara, K., Asai, A., Yashiro, S., et al. 2023, ApJ, 946, 21. ...

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