遺伝子情報を用いた海洋生態学研究
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
遺伝子情報を用いた海洋生態学研究
Research on marine ecology using genetic information
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 生命理工学センター
西村 陽介
研究成果概要
昨年度に引き続き、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、メタゲノム
データを活用した微生物生態系の研究と、微生物配列情報解析ツールの開発を行った。
優占する系統群の多くが未培養である海洋微生物の研究において、培養を行わずにゲノ
ム多様性や代謝戦略、進化の過程を解明できるメタゲノム解析が注目されている。公開された
海洋メタゲノムデータを網羅的に利用するとともに、メタゲノムからゲノムを再構築する独自の
手法を開発することで、2,057 メタゲノムから 52,325 個の原核生物ゲノムを再構築した。これら
のゲノムは海洋微生物生態系を理解する上で貴重なリファレンスとして利用されている。
実際に、これらの原核生物ゲノムを活用して、北極域に存在する窒素固定細菌の生態学
的分布や代謝ポテンシャルを明らかにし、論文発表を行った。
メタゲノムデータから、光受容体等の有用な微生物遺伝子資源の探索を行うために、
莫大な配列データから特定の遺伝子ファミリーの配列を抽出し、遺伝子系統分類を行う
ための解析パイプラインを開発した。開発したツールを用いて、様々な環境に由来する
公開されたメタゲノムデータやメタトランスクリプトームデータから、200,000 以上の
微生物型ロドプシン配列を網羅的に収集し、その系統分類を行うとともに、既知のロド
プシン機能の文献情報を収集し、ロドプシンの情報基盤を整備している。
発表論文(謝辞あり)
1.
Yosuke Nishimura and Susumu Yoshizawa. 2022. ' The OceanDNA MAG catalog contains
over 50,000 prokaryotic genomes originated from various marine environments.' Scientific
Data 9:305. doi:10.1038/s41597-022-01392-5
2.
#Takuhei Shiozaki, #Yosuke Nishimura, Susumu Yoshizawa, Hideto Takami, Koji
Hamasaki, Amane Fujiwara, Shigeto Nishino, Naomi Harada. 2022. ‘Distribution and
survival strategies of diazotrophs in the Arctic Ocean revealed by global-scale
metagenomic analysis.’ bioRxiv 2022.10.28.514325. doi:10.1101/2022.10.28.514325
3.
Kento Tominaga, Nana Ogawa-Haruki, Yosuke Nishimura, Hiroyasu Watai, Keigo
Yamamoto,
Hiroyuki
Ogata,
Takashi
Yoshida.
2023. ...