湖沼に生息する細菌・ウイルスのメタゲノム解析
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
湖沼に生息する細菌・ウイルスのメタゲノム解析
Metagenomics of prokaryotes and viruses in freshwater systems
京都大学 化学研究所 化学生命科学研究領域 岡崎 友輔
研究成果概要
本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、主に湖沼に生
息する微生物の環境ゲノム解析を行っている。対象データは琵琶湖をはじめとする国内外の
湖沼にて収集された、環境中の細菌・ウイルスに由来するメタゲノム・メタトランスクリプトーム情
報、および湖沼より単離された真核微生物のゲノムシーケンス情報である。スーパーコンピュ
ータにインストールされたバイオインフォマティクスソフトウェアを用いて、シーケンスリードのク
オリティーコントロール、アセンブリ、ビニングを経たゲノム構築および遺伝子予測、加えてリー
ドマッピングに基づくゲノム相対存在量・遺伝子相対発現量の決定、ゲノム微小多様性の解析
を行った。さらにスーパーコンピュータ上に整備されている各種バイオインフォマティクスデー
タベースを活用し、配列アライメントおよび隠れマルコフモデルに基づく遺伝子の機能予測を
行った。特に、Nanopore および PacBio シーケンサーより出力されたロングリードシーケンスデ
ータを用いた解析に注力している。これを細菌のメタゲノム解析に応用することで、高品質な
ゲノムの構築、さらには環境中の細菌ゲノム上の構造多型の実態を明らかにした。当該領域
にコードされた遺伝子の情報等から、ウイルス感染に対する防御が細菌ゲノム多様化の主要
因の一つである可能性を示し、成果を論文として発表した。その一方で、湖に生息する外来の
大型緑藻のゲノム解析にも取り組んでいる。ゲノムサイズが非常に大きなことが予想されている
が、Illumina, Nanopore, PacBio の 3 つのプラットフォームから得られたゲノムシーケンス情報を
組み合わせ、本システムの豊富なソフトウェアと計算資源を活用しながら、その解析に挑戦し
ている。
発表論文(謝辞あり)
Okazaki Y, Nakano S, Toyoda A, Tamaki H. (2022) Long-read-resolved, ecosystem-wide
exploration of nucleotide and structural microdiversity of lake bacterioplankton genomes.
mSystems, e00433-22. ...