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大学・研究所にある論文を検索できる 「腎線維化を誘導するM2マクロファージの極性化機構の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

腎線維化を誘導するM2マクロファージの極性化機構の解析

篠田, 祥希 名古屋大学

2023.05.22

概要

報告番号







論文題目
















腎 線 維 化 を 誘 導 す る M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極 性 化 機 構 の 解 析

篠田

祥希

論 文 内 容 の 要 旨
マ ク ロ フ ァ ー ジ は 組 織 の 微 小 環 境 の 変 化 に 応 じ て 、 大 き く 分 け て M1 型 と M2 型 の
2 種類のサブタイプに極性化し、炎症や感染防御もしくは恒常性の維持に関与する。
慢 性 腎 臓 病 に お い て 生 じ る 組 織 硬 化 を 伴 う 線 維 化 は M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ に よ り 誘 導 さ
れ、腎臓の機能低下と密接に関係する。病態の悪化を抑制するためには線維化の制御
が 重 要 で あ る が 、 線 維 化 の 誘 導 に 関 わ る M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極 性 化 機 構 の 詳 細 は 未
だ 明 ら か で な く 、 有 効 な 治 療 法 が 存 在 し な い 。 近 年 の 研 究 に お い て 、 M2 マ ク ロ フ ァ
ージの誘導機構の解析が進められているものの、ヒトとマウスでは遺伝子発現 の変動
が異なることから、病態モデルマウスを用いて得られた知見 をヒトへ適用することに
は 困 難 が 伴 う 。 Martinez ら は ト ラ ン ス ク リ プ ト ー ム や プ ロ テ オ ー ム の 相 互 解 析 か ら 、
ヒ ト と マ ウ ス で 唯 一 共 通 す る M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の マ ー カ ー と し て タ ン パ ク 質 架 橋 化
酵 素 Transglutaminase 2 (TG2)を 見 出 し た 。TG2 は 哺 乳 類 で は 全 身 に 発 現 し て お り 、
TG2 に よ る タ ン パ ク 質 の 架 橋 修 飾 は 様 々 な 生 命 現 象 に 関 わ る 。マ ク ロ フ ァ ー ジ に お い
ては死細胞の貪食やサイトカイン分泌、細胞遊走に関わることが 過去に報告されてい
る が 、 M2 極 性 化 に お け る 機 能 は 明 ら か で な い 。 本 研 究 で は M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極
性 化 に お け る TG2 の 機 能 を 解 明 す る と 共 に 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ の TG2 が 腎 線 維 化 の 病
態形成に与える影響を検証することを目的とした。
ま ず 初 め に 、一 側 尿 管 結 紮 法( UUO)に よ り 線 維 化 を 誘 導 し た マ ウ ス を 用 い て TG2
の発現とマクロファージ誘導の相関性を検証した。蛍光免疫染色の結果から、病変部
に 存 在 す る 一 部 の マ ク ロ フ ァ ー ジ は TG2 を 発 現 す る こ と が 分 か っ た 。 UUO 処 置 12
日 後 の 腎 臓 の マ ク ロ フ ァ ー ジ 浸 潤 量 を 調 べ る と 、 野 生 型 (WT)と 比 較 し て TG2 欠 損
(KO)マ ウ ス で は 顕 著 に 減 少 し て い た 。こ の マ ク ロ フ ァ ー ジ の サ ブ タ イ プ を フ ロ ー サ イ
ト メ ト リ ー に て 解 析 し た と こ ろ 、 CD45 + CD11b + F4/80 hi CD206 + Ly6C int の M2 マ ク ロ
フ ァ ー ジ 集 団 が 有 意 に 減 少 す る こ と が 分 か っ た 。線 維 化 の 病 態 解 析 に お い て 、TG2KO

マ ウ ス で は α-smooth muscle actin の 発 現 や コ ラ ー ゲ ン の 蓄 積 が WT と 比 較 し て 有 意
に 減 少 し て お り 、線 維 化 の 抑 制 が 確 認 さ れ た 。同 様 に 、TG2 の 活 性 阻 害 剤 を 投 与 し た
WT マ ウ ス に お い て も M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 減 少 と 線 維 化 の 抑 制 が 見 ら れ た 。 以 上 の
結 果 か ら 、TG2 は M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 誘 導 と 腎 線 維 化 の 病 態 形 成 を 促 進 す る こ と が
示唆された。
で は 、 線 維 化 し た 腎 臓 で 増 加 す る M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ は ど こ か ら 来 る の だ ろ う か ?
全 身 で GFP を 発 現 す る GFP ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス か ら 骨 髄 を 単 離 し 、 WT マ ウ
ス に 移 植 し て そ の 由 来 を 検 証 し た と こ ろ 、CD45 + CD11b + F4/80 hi CD206 + M2 マ ク ロ フ
ァ ー ジ の 90%以 上 は 骨 髄 細 胞 に 由 来 し た 。 こ の 結 果 を 踏 ま え 、 WT と TG2KO マ ウ ス
の 骨 髄 を 入 れ 替 え て 腎 線 維 化 を 誘 導 し た と こ ろ 、 TG2KO マ ウ ス 由 来 の 骨 髄 細 胞 が 移
植 さ れ た マ ウ ス で は 腎 線 維 化 の 病 態 形 成 が 顕 著 に 抑 制 さ れ た 。 一 方 、 WT マ ウ ス の 骨
髄 が 移 植 さ れ た TG2KO マ ウ ス で は 逆 に 病 態 が 悪 化 し た 。 さ ら に 、 WT マ ウ ス の 骨 髄
由 来 マ ク ロ フ ァ ー ジ ( BMDM) か ら M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ を 誘 導 し た 後 、 UUO 処 置 し
た TG2KO マ ウ ス の 腎 被 膜 下 に 移 植 し た と こ ろ 、 や は り 腎 線 維 化 の 病 態 は 悪 化 し た 。
一 方 で TG2KO マ ウ ス 由 来 の M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 移 植 で は 、 腎 線 維 化 の 病 態 に 影 響
は 見 ら れ な か っ た 。以 上 の 結 果 か ら 、TG2 を 介 し て 誘 導 さ れ る 骨 髄 由 来 マ ク ロ フ ァ ー
ジが線維化の病態進展に必須であることが証明された。
次 に 、 M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極 性 化 に お け る TG2 の 役 割 を 調 べ る た め 、 マ ウ ス お よ
び ヒ ト 由 来 マ ク ロ フ ァ ー ジ を IL-4 に よ り 処 理 し て M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ を 誘 導 し た 。
BMDM を TG2 阻 害 剤 で 処 理 す る と 、 極 性 化 に お け る M2 マ ー カ ー の 発 現 増 加 が 有 意
に 抑 制 さ れ た 。ま た 、ヒ ト 単 球 細 胞 株( THP-1)由 来 マ ク ロ フ ァ ー ジ に お い て も 、TG2
の 発 現 抑 制 や 活 性 阻 害 は 極 性 化 を 抑 制 し た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、TG2 の 架 橋 活 性 に は
ヒ ト と マ ウ ス に 共 通 し た 分 子 機 構 に よ り M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極 性 化 を 促 進 す る 役 割
があることが示唆された。
TG2 が M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極 性 化 を 誘 導 す る 分 子 機 構 を 解 明 す る た め 、TG2 の 架
橋活性に依存して発現が変動する因子をトランスクリプトーム解析により網羅的に探
索 し た 。IL-4 処 理 下 で TG2 依 存 的 に 55 個 の 遺 伝 子 が 発 現 増 加 し 、35 個 が 減 少 す る こ
と を 見 出 し た が 、 中 で も Arachidonate-15-Lipoxygenase( ALOX15) の 発 現 は IL-4
処 理 に よ る 増 加 率 が 最 も 大 き く 、TG2 の 活 性 阻 害 に よ り 顕 著 に 減 少 し た 。ALOX15 に
よ る M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極 性 化 制 御 に つ い て 検 証 す る た め 、 ALOX15 の 活 性 阻 害 剤
を 処 理 し た と こ ろ 、 M2 マ ー カ ー の 発 現 は 抑 制 さ れ た 。 一 方 で ALOX15 の 代 謝 物 で あ
る 15(S)-HETE を 処 理 す る と M2 マ ー カ ー の 発 現 が 増 加 し た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、TG2
は ALOX15 の 発 現 誘 導 を 介 し て M2 極 性 化 を 促 進 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、線 維
化 し た 腎 臓 で の ALOX15 発 現 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 細 胞 数 は TG2KO マ ウ ス に お い て 顕 著
に 減 少 し た こ と か ら 、ALOX15 を 介 し た TG2 の M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ 極 性 化 の 誘 導 は マ
ウスの腎線維化モデルでも再現された。
以 上 の よ う に 本 研 究 で は 、 TG2 が ALOX15 の 発 現 誘 導 と M2 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 極
性化制御を介して線維化の病態形成を促進することを明らかにした。これまで、腎線

維 化 に お い て TG2 は 細 胞 外 基 質 の 架 橋 に よ る 安 定 化 や TGF-β の 活 性 化 を 介 し て 病 態
進 展 に 関 わ る こ と が 報 告 さ れ て い た 。こ れ に 対 し 、本 研 究 で は TG2 が M2 マ ク ロ フ ァ
ージの極性化を促進し、線維化の病態進展に関わる新たな知見を見出した。さらに、
こ の よ う な TG2 を 介 し た 極 性 化 の 制 御 機 構 は ヒ ト と マ ウ ス で 共 通 す る 現 象 で あ り 、腎
線維化の病態分子機構の更なる理解や新規治療法開発への貢献が期待される。

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