流域課題への水循環政策活用の効果的な方策に関する実証的研究
概要
1.研究の背景と目的(第1章)
我が国の治水対策は, 築堤や河道拡幅等の河川改修を進めることにより, 流域に降った雨水を川に集めて, 海まで早く安全に流すことを基本として行われてきた。しかし, 昭和 40 年(1965)代, 急激な都市化の進展に伴い, 都市の脆弱化とあいまって浸水被害が頻発し, 河川整備だけでは対応が追随できないという限界に達した。これまでの線での河川整備にかわり, 昭和 50 年(1975)代に流域という面での対策, 従来の治水の概念を大きく転換する総合治水が鶴見川流域から誕生した。総合治水は, あらゆる手段により都市型水害を軽減することを目的とする。防災調整池の設置や, 自然地保全と遊水地域の盛土抑制という土地利用コントロールによる, 流出抑制を図る流域対策, 氾濫原における被害の軽減を図る安全な土地利用コントロールや住まい方に対して, 流域整備計画を策定し, 対策を実施するものである。とりわけ, 河川整備とは異なり, 流域対策の実施主体は, 制御しにくい住民の誘導そのものの領域となるため, この領域の各主体の活動性や計画の実効性(各計画の目的・施策の目標値に対する計画策定時からの改善効果など)を高めることが鍵となる。
総合治水は, 流域整備計画に流域対策という新しい手法を組み込んだにもかかわらず, 都市化の進展はさらに想定をはるかに超え, 新流域整備計画へと計画改定を余儀なくされた。しかし, 都市化の進展は著しく, 土地開発による流出量増分と対策量との不整合はさらに拡大するとともに, 自然地保全などの土地利用コントロールは思うようにいかず, 新たな枠組みが強く求められた。
そこで, 流域水マスタープランという水循環計画を全国に先駆け, 鶴見川流域の総合治水へ適用する, 全く, 新たな枠組みが, 当時の京浜工事事務所のイニシャティブによる挑戦的な試みにより行われた。流域水マスタープランは, 水循環という自然の原理・原則及び主体に着目した総合水マネジメント・流域水マネジメントを理念とすることにより, 従来の枠組みに比べ, 流域対策の要となる, 自然地の保全や遊水地域の盛土抑制が土地関連部局の自発的な取組として行われやすくなるとともに連携強化に繋がりやすくなるのが大きな特徴である。筆者は,策定に関わり, 各主体の活動性や計画の実効性が高まるよう, 首長の流域宣言を企画し, 流域水マスタープランの規範性を強くするなど鶴見川流域独自の様々な工夫を行った。流域水マスタープランは, その後, アクションプランの逐次策定など活動性の高い取組が持続的に行われ, 総合評価が実施される。計画策定時より改善効果が認められるとともに, 各主体の活動性や計画の実効性が改善されるよう計画改定が行われ, 新たな枠組みの有効性が認められる事例である。
一方, 鶴見川をはじめとする総合治水を実践する河川では, 従来の行政指導のタイプ, 特定都市河川浸水被害対策法(新法)を適用したタイプ, 総合治水条例(流域治水条例)が制定されたタイプがあり, 水循環計画の有無の組み合わせで 6 タイプに分類される。その中で, 流域水マスタープランは, 新法や宅地開発指導要綱を条例化したもの, 新法に基づく流域水害対策計画を互いに補完しあう共生関係を構築する枠組みである。水循環計画を活用した鶴見川方式が総合治水の他の枠組みと比べ, 自然地保全の向上をもたらす各種の土地利用計画を誘導する都市計画マスタープランへの影響の有無によってその有効性が認められるか評価する必要がある。
水循環計画の活用は, 鶴見川流域に限ったものではなく, 湖沼の水質改善, 地下水位回復など各流域で流域の特定課題解決のため展開されている。全国の水循環計画では, 鶴見川流域で抽出・特定した基本施策(要因)となる, 規制(制度基盤)や推進体制(組織基盤), 役割分担の明確化, PDCA, 指標による管理(モニタリング)などを用いて各主体の活動性や計画の実効性を高めている状況にある。この活動性や実効性を向上させる基本施策(要因)毎の, 先進的な工夫の視点を解明することは, 総合治水はじめ様々な流域課題解決を一層進めるものであるとともに, 懸案を持つ流域への一層の適用拡大を図る上で有用である。
鶴見川流域と同様に, 印旛沼や熊本地域では, 従来の考え方や手法が異なる新たな枠組みが構築されている。この新たな枠組みが構築できたのはどうした基本施策(要因)が備わっていたからなのか, 「技術的根拠づくり」や「イニシャティブ」など, その基本施策(要因)を探ることは抜本的な改革や改善などの政策決定や重大な政策決定を行う上で有用である。
一方, 徳島県においては, 吉野川の無堤地区解消が流域の最重要課題であり, この解決に不可欠な早明浦ダム再編についての課題に直面していた。吉野川の治水の歴史は労苦の歴史であり, 徳島県の犠牲のもとに四国の利水は成り立っているとの意識が根強くある中, 早明浦ダム建設の合意形成は極めてセンシブルで困難が予想された。鶴見川流域の実践の知見, 全国の水循環計画に見られる知見を徳島県に適用した流域水管理条例, 水循環計画を制定・策定することを通じ, 基本施策(要因)の一つ「社会規範」を重視した「利水は治水の犠牲のもとに成り立つ」という理念の提案を行った結果, 合意形成を円滑に図ることができた。また, 治水の問題を包括的に進める上で流域治水の考え方を導入するにあたり, 基本施策(要因)の一つ「法律や条例, 計画等の一体的な制度(規制と計画の工夫)」を踏まえた, 滋賀県に次いだ災害危険区域の指定において, 要配慮者利用施設の避難計画作成義務と制度の準備をまずは行うという, 規制強度の弱い緩やかな規制を行った。これらの事例を通じて基本施策(要因)の適用性を実証することにより, 新たな枠組み構築, 活動性や実効性を高める知見を深めることは有用である。
さらに, 徳島県では, 南海トラフ巨大地震による地震津波, 中央構造線活断層地震が大きな懸念であり, 分野が異なる防災分野において, 新たな枠組みを構築する基本施策(要因)の一つ「イニシャティブ」「技術的根拠づくり」, 活動性, 実効性を高める基本施策(要因)の一つ「法律や条例, 計画等の一体的な制度(規制と計画の工夫」について, 国より先駆けて行った津波シミュレーションによる津波高の算定事例, 避難時間を考慮した海岸堤防高さによる段階的整備の事例, 南海トラフ巨大地震による地震津波, 中央構造線活断層地震の2つの土地利用規制の事例により, その適用性の実証を行い知見を深めることが, 分野を超える政策への適用を行う上で有用である。
本研究は, 筆者が鶴見川, 本省, 徳島県それぞれで関わった, 鶴見川流域での水循環計画活用の実践知, 全国の水循環政策, 水循環計画事例, これらの知見を生かした徳島県での適用から得られた知見により, 今後の総合治水にとどまらず, 流域課題解決の水政策全般, さらにこの領域を超えた防災政策の形成に貢献しうるのではないかという強い想いのもとで流域課題への水循環政策活用の効果的な方策に関する実証的研究を行ったものである。なお, 本論文は9章から構成され, 鶴見川流域水マスタープランの特徴的な取組である基本施策(要因)が新たな枠組み構築, 各主体の活動性や計画の実効性を高める要因であるという仮説を立て検証を進めている。
2.鶴見川流域における総合治水の歴史と新たな枠組み(第2章)
従来の枠組みと新たな枠組みを規制誘導領域(制度基盤),計画誘導領域(制度基盤),組織基盤により対比し,新たな枠組みにおいて, 規制(新法と条例)で対応できない部分(自然地保全・盛土抑制)を流域水マスタープランが水循環という共通目的化と具体施策の充実により一体的に補完する「共生の関係」をつくるとともに, 制度・組織基盤の両面において質的に枠組みの転換が行われていることを明らかにした。新たな枠組みは, 治水分野を超えて, 利水(平常時の水量),自然環境の保全・再生,防災(危機管理),水教育(リテラシ-向上)などの視点を取り入れて, 治水・利水・環境分野にわたって総合的に対策を行うことにより, 流域の諸課題を包括的・複合的に解決することで, 総合治水の課題解決を進めていくものであることを示した。
3.全国の総合治水から見た鶴見川流域の新たな枠組みの特徴(第3章)
総合治水を実践している流域において, 制度手法の組み合わせから6つのタイプに分類した上で, タイプ別に従来の総合治水の取組の弱い分野「自然地保全」「盛土の抑制」「安全な土地利用・住まい方」などにおける特徴を明らかにした。その上で, 鶴見川流域では, 新法や条例の規制制度を中核に据え, 水循環計画(流域水マスタープラン)により一体的な制度として,「共生の関係」を構築した全国唯一の計画であること, 水循環計画が規制制度では対応出来ない領域(自然地保全)への補完性が高いこと, 水循環計画を総合治水の枠組みに積極的に活用する鶴見川方式は, 他の総合治水の制度手法から見て, 水循環や総合治水の保水・遊水機能確保について, 都市計画マスタープランに多岐に位置づけられ影響を及ぼし他の土地利用計画への誘導が考えられることから有効であることを明らかにした。他の水循環計画を有する流域においても,水循環計画が規制制度や他の計画との連携, 緩やかな連携による補完性の役割を持つことを明らかにした。
4.鶴見川流域における総合治水への水循環計画活用から得られた知見と実証(第4章)
鶴見川の特徴的な取組を新たな枠組み構築や各主体の活動性を高め, 計画の実効性を向上させる「基本施策(要因)」として抽出するとともに, 各主体の活動性や計画の実効性の評価により,その向上が認められたことを踏まえ, 次の点を明らかにした。
流域水マスタープランは, 水循環という理念が網羅する自然環境や生物多様性保全が, 土地関連部局の政策目的として導入されやすくなり, 従来に比べ, 自然地の保全や遊水地域の盛土抑制が土地関連部局の自発的な取組として施策に反映されやすい。水循環計画の根幹的な機能「総合水マネジメント・流域水マネジメント」は, 各主体に着目し主体間・施策間の総合調整をされやすくすることで各主体間の連携を強化し, 行政部局や市民の自発的な取り組みにつながることを示した。
新たな枠組み構築の基本施策(要因)には,大きく「新た枠組みを構築させるマネジメント力」「組織基盤の存在」「組織基盤の存在」の3つがある。「新た枠組みを構築させるマネジメント力」として,「リスクなどの察知,技術的根拠づくり, イニシャティブ」「社会からの受容性の高い理念・枠組みの提案」が,「制度基盤の存在」として,「法律や条例, 計画等の制度基盤」「地域での歴史的背景, 実践行動, 慣習等の社会規範」が,「組織基盤の存在」として,「推進体制」があるとともに, 特に, 総合治水発足に誕生した計画・事業制度, 総合治水の4半世紀に及ぶ実践から生まれた社会規範, 行政部局間の連携組織である, 総合治水対策協議会の存在など制度・組織基盤は, それを土台にして新たな枠組みが構築されたことから, 土台としての役割として, 重要な基本施策(要因)であることを示した。
活動性や実効性を高める基本施策(要因)には, 大きく「制度・組織基盤の存在」と「マネジメント力」があり,「制度基盤の存在」として,「法律や条例, 計画等の一体的な制度(規制と計画の工夫)」「地域での歴史的背景, 実践行動, 慣習等の社会規範」が,「組織基盤の存在」として,「推進体制」「市民の主体的参加を可能とする環境づくり」「財政確保(活動支援)」「中核となる組織やキーパースンのリーダーシップ」が,「マネジメント力」では,「マネジメント機能」として,「総合調整」「役割分担の明確化」「関連計画との連携意識」「PDCA サイクル」「リテラシー向上のための教育・文化充実」「危機管理の視点導入」が,「モニタリング機能」として,「指標によるモニタリング」「市民協働の指標」があることを示した。
水循環計画に伴う活動性を評価する項目を抽出し, その評価項目である「活動の頻度(協議会開催)」「計画の改定状況」「制度基盤の強化状況(規制制度)」「組織基盤の強化状況(推進体制)」において, 活動性の向上が認められること, 水循環計画の実効性の評価では, 総合評価と改定が行われ, 新たな枠組みの継続性が認められたこと, 法令の規制が及ばない領域に対しフォローアップが実施され, 一部では計画の成果が認められるとともに, 成果の不十分な課題には, 活動性や実効性が改善されるよう, 新計画に対応策が盛り込まれたことにより, 水循環計画の実効性が向上したと言えることから, 鶴見川流域で抽出した基本施策(要因)は,各主体の活動性や計画の実効性を高める要因であることを示した。また, 基本施策(要因)の実効性を高める視点として,「規範性を高める工夫」等が重要であることを明らかにした。
5.全国の水政策(国の審議会答申等)から見た基本施策(要因)の整理(第5章)
流域水マスタープラン策定前後に分けて整理した結果, 鶴見川流域が全国に先駆け, 水循環の視点, 総合水マネジメント(総合調整)を理念として導入し, 鶴見川流域で導入されている各基本施策(要因)の重要性が時代を追って指摘され, 浸透されていることを明らかにした。
6.全国の水循環計画から見た基本施策(要因)の評価・分析(第6章)
鶴見川流域で抽出・特定した基本施策(要因)が, 全国の水循環計画でも実効性を高める基本施策(要因)として組み込まれているとともに, 水循環計画に多く組み込まれている「大きな特徴」若しくは「特徴」の基本施策(要因)がある一方, 組み込まれる割合が少ない「特徴にまで至っていない」基本施策(要因)があることを示した。「大きな特徴」には「, 水循環や4つのタイプの理念の具備」「総合化」「関連計画との連携の意識」「PDCA」「リテラシーの向上」「指標による管理」が,「特徴」には,「推進体制」「推進体制への市民参画」「アクションプラン等の活用」「教育・文化の充実まで踏み込んだリテラシー向上」「2種類の指標による管理」であることを明らかにした。
鶴見川流域の事例を踏まえた,活動性の評価因子を活用した活動性の評価や,「制度・組織基盤」の度合いや「マネジメント力」の度合いを全国の水循環計画を基本施策(要因)毎に評価することにより, 活動性に対する2つの基本施策(制度・組織基盤, マネジメント力)との関係を重回帰分析した結果, 中分類の基本施策(要因)「制度基盤(28 %)」「組織基盤(28 %)」,「マネジメント機能(16 %)」「モニタリング機能(28 %)」いずれも活動性に対し強い影響を及ぼしており, 重要な基本施策(要因)であることを明らかにした。
鶴見川流域水マスタープランが全国の水循環計画から見て, 当プランが1つの計画のみだけで様々な工夫がなされており, 優れた計画であること, これらが活動性や実効性を高めたものであることを示した。
7.基本施策(要因)の徳島県治水問題解決への適用性の実証(第7章)
鶴見川流域で抽出・特定した基本施策(要因)及ぶその実効性を高める工夫の視点は, 徳島県における治水問題解決への水循環政策の適用においても, 重要な基本施策(要因)であり視点である。とりわけ, 治水の労苦や水争いに関する地域の歴史に根ざした,「社会規範」を重視した考え方「利水は治水の犠牲のもとに成り立つ」は, 合意形成に大きな影響を及ぼし, 社会規範を十分に考慮した,「社会からの受容性の高い理念」でなければ合意形成が困難であること, 社会規範に関わるセンシブルな問題に「イニシャティブ」が不可欠であることを明らからにした。この理念は,「総合調整」のもとに生み出されたものであり, これらの基本施策(要因)が特に重要であることを明らかにした。
流出抑制においては, 鶴見川流域における水循環計画活用の手法は有効であるが, 安全な土地利用・住まい方では, 一定程度の強度の規制が必要であることから, 流出抑制と安全な土地利用・住まい方の両面の機能を持つ「流域治水」には, 水循環計画では限界がある。そこで, 徳島県では, 規制を持つ流域水管理条例を中核に据えた「水循環政策の枠組み」を新たに構築し, 「流域治水」において有力な手段であることを示した。
8.基本施策(要因)の防災分野への適用性の実証(第8章)
鶴見川流域で抽出した基本施策(要因)の「法律や条例, 計画等の一体的な制度(規制や計画の工夫)」「イニシャティブ」「技術的根拠づくり」が, 水循環政策と異なる防災分野でも, その重要性が認められた。規制と計画が工夫し合い, 互いに補完しあう一体的な制度づくりにおいて, 計画の工夫だけでなく, 規制の工夫も重要である。津波災害警戒区域, 中央構造線活断層地震における特定活断層調査区域の指定においては, 徳島県流域水管理条例の要配慮者利用施設への規制と同様, 当施設の避難確保を第1優先とした緩やかな規制としたものであり,規制の一つの有力な工夫を明らかにした。国に先駆けた津波高の算出, その後の国の断層モデルを活用した, 詳細な地形データを入れた丁寧な算定, 及び, 財政的な地域固有の問題を抱えた, 海岸堤防の暫定整備は, 国の指針がない中, 地域の強い要請に迅速に応えなければならない地域のイニシャティブによる技術的根拠づくりであり,新たな枠組み構築の重要な基本施策(要因)であることを実証した。規制の対象となる, 津波災害警戒区域の範囲や特定活断層調査区域の範囲, 規制方法は, 科学的知見による断層モデル構築, 活断層区域範囲の技術的な特定や被害の予測などに基づく根拠によって成立しており,「制度と技術が一体化」して新たな枠組みを構築していることを示した。
9.本研究の総括と今後の展望(第9章)
本研究は, 鶴見川方式の水循環計画の活用が, 総合治水の枠組みが複数有る中で有力な手法であることを示すとともに, 鶴見川流域のように枠組みの中核に据えなくても, 連携させることで, 流出抑制に重点を置く総合治水を補完する効果が期待できることを示したことにある。しかし, 今後, 地球温暖化による洪水被害の激甚化や頻発化が予想される中, 都市圏に重点を置いた総合治水特定河川以外の流域においても, 適応策として流域治水の重要性がより一層増す中で, 流出抑制と安全な土地利用・住まい方の両方に重点を置く流域治水では, 規制を有さない水循環計画だけでは限界があり, 徳島県流域水管理条例と流域水管理計画を組み合わせた水循環政策が,実効性を高める, より望ましい手法であることを明らかにした。
基本施策(要因)の重回帰分析では, 鶴見川流域の特徴的な取組から抽出・特定した個々(小分類)の基本施策(要因)が決定的に活動性に影響を及ぼすものはなく, 総合力として考えることが重要であり, 流域で「あたりまえ」に実践されている取組やその工夫が重要である。特に, 基本施策(要因)の徳島県治水問題への適用で明らかになった, 流域課題の解決に障害となる歴史的認識, いわゆる社会規範や社会から受容性の高い理念を重視すべきである。
基本施策(要因)の防災分野への適用では, 新たな枠組み構築には, 基本施策(要因)「イニシャティブ」「技術的根拠づくり」が不可欠である。とりわけ, 規制制度にはイニシャティブが不可欠であり,「規制制度が技術と一体」であることを踏まえる必要がある。基本施策(要因)「法律や条例, 計画等の一体的な制度(規制と計画の工夫)」では, 生命に直結する土地利用規制では, 一定強度の規制が不可欠であり, 規制の工夫が重要となる。まずは, 要配慮者利用施設の避難確保を第1優先とした, 緩やかな規制をかけることが重要である。
鶴見川流域は, 全国のトップランナーとして水循環計画を活用した課題解決先進流域である一方, それがゆえの課題を全国に先駆け直面する課題先進流域でもある。その課題は全国の教訓となるべきものとして, 提示を行っている。