[研究トピックス]飛騨DST共同利用報告 : SUNRISE-3との共同観測から迫る彩層磁気活動現象
概要
SUNRISE-3との共同観測から迫る彩層磁気活動現象
SUNRISE-3実験は口径1mの望遠鏡を搭載した気球を、スウェーデン・キルナからカナダ
ま で 大 西 洋 上 空 の 高 度 約 37 k m を 1 週 間 飛 翔 さ せ て 太 陽 を 観 測 す る 計 画 で あ る 。
SUNRISE-3にはSUSI (紫外線偏光分光装置)・SCIP(近赤外偏光分光装置)・TuMag(可
視偏光撮像装置)と呼ばれる3つの観測装置が搭載され、光球から彩層までの磁気大気
情報をシームレスに取得できる。国立天文台では主にSCIPの開発を進めてきた。
本研究課題では、SUNRISE-3では得ることができないHe I 1083による偏光分光観測を
飛騨天文台DSTを用いて行うことでさらに詳細な磁気大気構造を求めることを目標として、
2022年6月および7月に観測スロットを用意して頂いた。
国内およびMax Planckでの開発・試験を経て2022年4月以降に、エスレンジ射場におい
て全機器を組み立てたあと最終試験が行われた。現地においては太陽光試験や模擬フラ
イト試験に加えて、観測タイムラインの決定などを行った。NASA気球関係の物品到着の
遅延や、同時期にフライトが予定されていたXL-Caliburのフライト待ち、Compatibility testと
呼ばれる通信関係の最終試験などを経て、フライト機会の最終日である7月10日にようやく
飛翔させることができた。しかしながらフライト時の高度軸の故障により太陽に望遠鏡を向
けることができず放球から5時間後に運用を停止した。科学観測は行えなかったが、フライ
ト中のHKデータを確認し、SCIPの動作に問題はなかったことは確認できた。
望遠鏡回収後の健全性確認の結果、幸いなことに各機器はほぼ無傷であることが確認さ
れた。現在は2024年に再フライトすることを目指して各参加機関で準備を進めている。再フ
ライト時には同様の共同観測を申請する予定である。
(松本琢磨(名古屋大学) 記)
図1. ...