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大学・研究所にある論文を検索できる 「遠隔看護の実践に向けて看護基礎教育に求められるICT 教育内容に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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遠隔看護の実践に向けて看護基礎教育に求められるICT 教育内容に関する研究

豊増, 佳子 筑波大学

2022.11.22

概要

目的:
 Socity5.0を迎え、ICTが社会インフラとして整備される中で遠隔看護の必要性が高まっている。ICTが生み出した新たな看護技術である遠隔看護の実践に向けての看護基礎教育の内容を探求する。

方法と結果:
 <研究1>は、遠隔看護の実践・研究者による、遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育内容のコンセンサス形成である。まず<研究1-1>では、遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育の内容に対するコンセンサス測定のため、遠隔看護に関連する研究報告をしている遠隔看護の研究者を対象としたデルファイ法調査を行った。質問紙は、van Houwelingen(2006)による遠隔看護の実践に必要なコンピテンシー(以下、能力)7カテゴリ52項目を援用し、原文に和訳を付けた調査用紙を作成した。この52項目についての看護基礎教育における教育の必要性と、この52項目以外での遠隔看護や看護基礎教育で求められる能力に関する自由意見を問うた。<研究1-2>では、遠隔看護の研究者による最終コンセンサス形成のため、研究1-1のデルファイ法調査の第3次調査までの協力者24名を対象者とした。研究1-1のデルファイ法調査の最終結果をもとに、遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育の内容に対する最終的なコンセンサス形成と今後の看護基礎教育を展望した。
 結果、<研究1-1>のデルファイ法の第1次調査の配布数は128、回収数33(回収率25.8%)、第2次調査の配布数33、回収数26(回収率78.8%)、第3次調査は配布数26、回収数24(回収率92.3%)だった。最終段階のノミナル・グループ法では、対象24で参加者7(参加率29.2%)だった。デルファイ法では、95%前後の回答者が、「必ず学ぶ」とした項目は、Communication skills「コミュニケーションスキル(技術)」の中の、「コミュニケーションに集中し、明確な問いかけを通じて患者の問題を明らかにするスキル」だった。<研究1-2>のノミナル・グループ法による最終合議は、デルファイ法における結果の順位について、大枠で3段階の優先順位の決定だった。さらに、必要な能力の各項目について、重複と考えられる項目の整理、大概念の項目に関する詳細内容の検討、更に追加すべき項目等の検討など、日本の状況や技術発展も考慮してのプログラムの検討や展望が必要であることが議論された。

 <研究2>は、遠隔看護の研究者による研究1の遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育内容のコンセンサス形成の結果を、看護基礎教育者の知見から検証することである。まず<研究2-1>では、看護基礎教育者へのフォーカス・グループ・インタビュー調査を行う導入・依頼のための事前調査として、関東圏の看護基礎教育経験のある看護師資格を有する大学教員を対象とした。調査票は、遠隔看護の実践・研究者による研究1の結果検証のため、研究1と同じvan Houwelingen(2006)による52の能力項目を使った。ただし、研究1の最終結果に基づいて「看護基礎教育で学ぶ」「可能であれば看護基礎教育で学ぶ」「遠隔看護の実践家が学ぶ」の3枠で再配列した調査用紙を作成し、看護基礎教育者の視点からの判断や意見を求めた。<研究2-2>では、看護基礎教育者の視点による遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育内容の最終検証と更なるアイデア収集のため、研究2-1の調査票協力者でフォーカス・グループ・インタビューへの協力意向表明者を対象とした。フォーカス・グループ・インタビューでは、研究2-1の看護基礎教育者の事前調査票結果も参考にしながら、遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育内容のコンセンサスを検証して、今後の看護基礎教育を展望した。
 結果、看護基礎教育者への配布数は568名で調査票回収数88(回収率15.5%)だった。そのうち85名がこれからの看護基礎教育での学習が必要と回答し、その理由として「ICT活用が進展する状況とニーズの高まり」「ICT活用ニーズが高まる具体的状況」があげられ「専門職者としての看護師には早急に教育が必要」としていた。ただし、「ICTは道具の1つで基本的看護の学びのみで精一杯・十分」「看護教員がICTを活用する看護の教授困難」などが「教育の必要性はあるが看護基礎教育での教育には条件つき」の理由にあげられていた。看護教育者が教育の必要性が高いとする上位20項目は<研究1>でも上位22項目中に含まれる項目だった。
 フォーカス・グループ・インタビューでは、調査票調査時における意向表明者21名のうち最終的に4~5名のグループで3回開催して計14名が参加し、教育の現状や今後の教育の必要性についてディスカッションした。調査項目の順位結果への同意を得て、上位20項目のほか下位の6項目と新たに提案された14項目を追加して計40項目を抽出した。また、教育組織の状況に合わせて教育内容の検討が可能になるような最低項目数や段階的目安を提示する示唆を得た。現行の各領域の教育との連動、ICT活用のメリット・デメリットや看護実践の対面・非対面での違いの体験学習など、教育方法に関する具体的アイデアも得た。

全体考察:
 本研究では、遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育における教育内容を、遠隔看護に必要な能力を参考に計40項目抽出し、それらを「法律・規制、倫理」「ICT:情報通信技術」「データ・情報」「コミュニケーション」「臨床・看護実践の基礎」「遠隔看護実践の基礎」の6カテゴリの知識・技術・態度に再構造化した。これら遠隔看護の実践に向けた看護基礎教育における教育内容は、看護学と情報学の融合である看護情報学の知識・技術と関連が深いため、教育内容の中心に配置して図式化した。
 看護基礎教育における学びは、臨床の基礎知識、情報やICTの基礎知識、コミュニケーションの基礎知識が大きな要素を占め、倫理観や態度の習得は重要である。そのため、看護実践が対面か非対面かにかかわらず、看護の基礎知識・技術・倫理教育をまず徹底する。遠隔看護の教育を単独展開できなくても、柱とする科目設定、ある科目の一部やオムニバスとして学ぶなどの機会を設ける。各領域の教育とも連携させながら、遠隔看護の法的・社会的背景、遠隔看護の特性、遠隔コミュニケーションについて学ぶ機会を設定し、直接対面の看護との比較学習により、看護の深い学びを推進する。情報教育については学生のレディネスや経験値も変化することから、ICT教育内容や教育方法の継続的検討が必要である。

結論:
 本研究は、遠隔看護の実践に向けての看護基礎教育内容の探求を目的に、まず遠隔看護の実践・研究者のコンセンサス形成を行い、その結果を看護基礎教育者の知見から検証した。本研究で明らかになった看護基礎教育に求められる教育内容は、「法律・規制、倫理」「ICT:情報通信技術」「データ・情報」「コミュニケーション」「臨床・看護実践の基礎」「遠隔看護実践の基礎」の6カテゴリの知識・技術・態度の計40項目である。情報技術を用いた遠隔看護が看護技術として実用化される中で、看護基礎教育においても、それらの基礎となるICT教育の重要性が示唆された。看護基礎教育では、看護実践の基礎を確実に習得しながら、遠隔看護の特性を理解し、看護学と情報学の融合である看護情報学を核としたICT教育を推進する。

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