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大学・研究所にある論文を検索できる 「医療観察法通院処遇対象者への訪問看護を行う看護師への支援に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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医療観察法通院処遇対象者への訪問看護を行う看護師への支援に関する研究

奥田, 淳 大阪大学

2022.03.24

概要

【研究の背景】
 医療観察法通院処遇対象者は近年増加傾向にある。処遇対象者への地域支援の現状として、訪問看護の利用率が高いが、看護師は触法精神障害者への恐怖心や再他害行為防止支援の困難などを抱えていることが明らかにされている。諸外国では、多職種チームで訪問支援を行うが、日本では、司法地域精神医療の処遇制度も異なり、看護師単独での訪問支援が最多となっている。このような状況での看護師の困難は諸外国とは異なるものと考えられるが、詳細は明らかにされておらず、看護師が処遇対象者への看護実践を行うための教育や指針は十分に検討されていない。したがって、日本の医療観察法通院処遇対象者への訪問看護における看護師の抱く困難を明らかにし、その困難を解消するための看護実践指針を作成することが必要と考えた。
 本研究は、医療観察法通院処遇対象者への訪問看護に携わる看護師への看護実践指針を作成することを目的とし、3つの段階を通して研究を実施した。

【研究1】医療観察法通院処遇対象者への訪問看護に携わる看護師の困難
【目的】医療観察法通院処遇対象者への訪問看護に携わる看護師の困難を明らかにする。
【方法】指定入院医療機関に従事経験のない、そして、処遇対象者への訪問看護を現在行っている、または過去1年以内に行った訪問看護師18人に半構造化面接法を行い、Krippendorffの内容分析を用いて分析した。
【結果】165個のコードが抽出され、<医療観察法に必要となる観察と評価を正確に行う難しさ><再他害行為を意識した支援における関わりの難しさ><処遇終了の判断要因である社会復帰を地域生活において支援する難しさ><処遇制度の規則に従って支援を提供する難しさ><多職種連携支援において他職種と連携する難しさ><対象者の受入れによるリスクと処遇上の制限による業務管理の負担感>の6個のコアカテゴリーが形成された。

【研究2】医療観察法通院処遇対象者への支援における困難を解消するための看護師が実践する工夫
【目的】研究1で明らかにした医療観察法通院処遇対象者への訪問看護に携わる看護師が抱く困難に対して、看護実践上の工夫を明らかにする。
【方法】処遇対象者への訪問看護において豊富な経験のある看護師13人に研究1で明らかになった困難に対する看護実践上の工夫を質問する半構造化面接を行った。データを分析単位に分割し、リサーチクエスチョンに従って作成されたカテゴリーに分類する方法であるMayringの内容分析を用いて分析した。
【結果】インタビュー内容から122個のコードを抽出し、それらを研究1で明らかになった困難に対応したカテゴリーに振り分け分析した結果、<対象者に必要となる観察と評価の困難に対する工夫>には2つのサブカテゴリー、7項目の工夫が、<再他害行為に関連した支援の困難に対する工夫>には、3つのサブカテゴリー、12項目の工夫が、(社会復帰を地域生活において支援をする困難に対する工夫>には3つのサブカテゴリー、12項目の工夫が、<処遇制度に基づいて支援をする困難に対する工夫>には3つのサブカテゴリー、5項目の工夫が、<多職種連携支援体制において他職種と連携する困難に対する工夫>には3つのサブカテゴリー、6項目の工夫が含まれた。


【研究3】医療観察法通院処遇対象者への訪問看護における困難に対する看護実践指針の作成
【目的】看護実践指針を作成するために研究2で明らかにした看護実践上の工夫42項目に対して、をデルファイ法によりコンセンサスを求める。
【方法】デルファイ法による質問紙調査を2回実施した。評価項目は重要性、明瞭性、適切性のカテゴリーに分け、5段階のリッカートスケール(1〜5点評価とする)を用いた。重要性は項目としての必要・不必要を判断した。明瞭性は項目の表現が分かりやすいかを判断し、適切性は項目の内容が適切かどうかを判断した。さらに、看護実践上の工夫の項目を洗練するために、自由記述の欄を設け、3点以下に評価をした項目についての理由、項目の表現や内容をより洗練するための意見について回答を求めた。コンセンサスのカットオフスコアは、評価点を4あるいは5と回答したものが80%以上、かつ評価点の平均値が4.0以上とした。第1回調査は、項目内容の洗練を目的としたため、重要性の判断基準が満たされなかった場合でも削除としなかった。明瞭性と適切性の評価でコンセンサスの判断基準が満たされなかった時は、自由記述の回答を参考に、項目の表現や内容の修正を行った。新たな看護実践上の工夫についての意見の記述があった場合は、その内容を吟味したうえで、採用・不採用の判断をした。そして、採用の場合は2回目の調査に用いる評価用紙に追加した。第2回調査は、重要性の評価でコンセンサスの判断基準が満たされなかった時は、その項目を削除した。重要性の評価で判断基準が満たされても、明瞭性と適切性の評価でコンセンサスの判断基準が満たされなかった時は、自由記述の回答を参考に項目の表現や内容の修正を行った。
【結果】第1回調査では、調査用紙54部を郵送し、回収数は30部(回収率は55.6%)、有効回答数は28部であった。研究参加者のうち管理者が19人、認定看護師が2人、専門看護師が1人であった。42項目のうち35項目のコンセンサスを得ることができた。7項目は自由記述を参考に修正をした。提示していた看護実践上の工夫のほかに新たな工夫が意見として出されたため、その意見を参考に1項目の看護実践上の工夫を作成した。第2回調査では、第1回調査で協力を得られた30人に郵送した。回収数は24部(回収率80.0%)、有効回答数は24部であった。研究参加者のうち管理者が18人、認定看護師が2人、専門看護師が1人であった。43項目のうち41項目のコンセンサスを得ることができ、1項目が重要性の基準を満たすことができなかったため削除となった。もう1項目は適切性の基準を満たすことができなかったために、自由記述を参考に修正をした。最終的に42項目の看護実践上の工夫を看護実践指針として示した。

【総括】
 【研究1】で明らかになった看護師が抱く困難に対して、【研究2】で明らかになった42項目の看護実践上の工夫の中には、4つのカテゴリーに処遇対象者と関係構築をする工夫が含まれていた。処遇対象者に看護師は恐怖心があるため、監視に傾き処遇対象者の意向に沿った支援をできない。そのため、処遇対象者も看護師を支援者として信頼できず、処遇対象者は支援を受けることが、看護師は支援をすることが困難になると考えられる。このような関係性から関係構築は重要となる。さらに、看護師の役割には、法の目的達成に向けて再他害行為防止支援と社会復帰に向けた支援があるが、看護師はバランスのとり方に葛藤があった。しかし、関係構築により、再他害行為防止支援の内省を促すことができ、社会復帰に向けたその人らしさを尊重した支援を受け入れてもらうことができる。したがって、関係構築をする工夫は、再他害行為防止支援と社会復帰に向けた支援が両立できる可能性が示唆された。【研究3】では、デルファイ法により看護実践上の工夫42項目のコンセンサスを得ることができ、看護実践指針とした。作成した看護実践指針は、日本の看護師が抱く困難の現状と実際の対応をもとに作成したことから、具体的であり実践に即したものである。

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