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書き出し

中堅ジェネラリスト看護師のリーダーシップに関する研究

村田 由香 広島大学

2020.03.04

概要



士 論



中堅ジェネラリスト看護師の
リーダーシップに関する研究
( 要 約 )

令和 2 年 3 月

村 田 由



学位論文の要旨

近年の医療の高度化,地域包括ケアシステムの構築に伴う入院期間の短縮化,在宅療養
の推進など医療現場は大きな変革の渦中にあり,看護職への期待は大きい。看護師は,大
きくスペシャリストとジェネラリストに分けられる。ジェネラリストとは,
「経験と継続
教育によって習得した暗黙知に基づき,その場に応じた知識・技術・能力が発揮できる
者」と定義されており,
「特定の分野・領域,働く場や形態にとらわれず,あらゆる対象
者に対して,従事した領域で,直接,質の高い看護サ-ビスを提供することを志向する看
護職」と説明されている(日本看護協会,2012)
。人々が病院などの施設で日頃接触する看
護師の大多数はジェネラリスト看護師である。
その中でも,臨床経験 5 年目以上の中堅ジェネラリスト看護師(以下,中堅看護師とす
る)は,熟練したスタッフ看護師として,リーダーシップの発揮や職場の改善という役割を
遂行する能力,および自己教育力の向上や自己啓発,委員会活動への参加を通じた自発的
な能力開発,キャリア開発を行う能力が期待されている(小山田,2009)。すなわち,看護
係長や主任といった公式的な役割の有無にかかわらず,中堅看護師には自己啓発や能力開
発を自律的に進めつつ,看護現場の中核としてリーダーシップを発揮することが期待され
ているのである。しかしながら,中堅看護師のリーダーシップを研究するための測定尺度
も未だ存在していないため(Valentine,2002)
,本研究では,中堅看護師のリーダーシップ
尺度を作成し,リーダーシップが職場に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

第 1 章では,まず,看護実践の現状と課題について述べ,中堅看護師にリーダーシップ
役割が期待されていることを指摘した。しかし,中堅看護師のリーダーシップに関する研
究がないため,その内容が明確でないこと,中堅看護師にリーダーシップの発揮が求めら
れている一方で,中堅看護師が期待されるリーダーシップを発揮することによって実際に
職場の生産性(看護の質など)が向上するのか実証されていないことを問題として取り上げ
た。この問題解決のために,中堅看護師のリーダーシップ概念を明確にし,その有効性を
実証することが急務であることを示した。その上で,本論文の目的を中堅看護師のリーダ
ーシップ概念を明らかにしたうえで,それを測定する尺度を作成し,中堅看護師のリーダ
ーシップの有効性を明らかにすることであると明示した。

第 2 章(研究 1)では,看護部長が「リーダーシップを発揮している中堅看護師」として
推薦した 6 施設の看護師 15 名へのインタビューから中堅看護師のリーダーシップの特徴
を質的に分析し,
「リーダーとしての姿勢」として<ポジティブな雰囲気><変革への挑戦>
<教育・指導を通した相互成長の自覚>3 カテゴリーを明らかにした。また,
「リーダーシ
ップ行動」として<看護の本質を重視した指導の実践><専門家としてのリフレクション行
動><高いソーシャルスキルの実践><職場学習の実践><良好なチーム作り><問題を解決す
るための影響力>の 6 カテゴリーを明らかにした。
これら 9 カテゴリーの内容から,リーダーシップを発揮していると評価されている中堅
看護師は,
「傾聴」「共感」
「部下の成長支援」などサーバント・リーダーシップと共通す
るリーダーシップ機能や,看護管理者のリーダーシップと共通する機能,またチーム・リ
ーダーシップと共通する機能を有していることが示唆された。
本章で明らかになった「リーダーとしての姿勢」及び「リーダーシップ行動」が部署に
どのような影響を及ぼすのかを検討する必要があることを述べた。

第 3 章(研究 2)では,研究 1 で明らかになった中堅看護師のリーダーシップの姿勢と行動
を基に,中堅看護師リーダーシップ尺度(MGNLS)を作成し,その信頼性と妥当性を検討した。
質問紙調査を実施し,看護師長と 1~4 年目看護師に「同じ部署内で最も活躍している看護
師経験 5 年目以上の看護師」を 1 人想起してもらい,そのリーダーシップ行動を MGNLS を
用いて評定するよう求めた。看護師長 61 名と 1~4 年目看護師 286 名の計 347 名の回答を
分析した結果,
「問題を解決するためのアサーティブな発信力」
「後輩中心の成長支援行動」
「職場学習の実践」
「変革への挑戦」
「協調性とセルフコントロール力」
「指導者としてのリ
フレクション行動」の 6 因子構造で構成される 33 項目の尺度となった。これら6因子の概
念は研究 1 で見出されたカテゴリーと概ね対応しているが,研究 1 の「看護の本質を重視
した指導の実践」に該当する項目はすべて削除され,因子として抽出されなかった。信頼性
はいずれの下位尺度も十分な数値を示した。さらに, サーバント・リーダーシップ及びチ
ーム・リーダーシップとの間の収束的妥当性と機能的な面での弁別性が示されたことから,
構成概念妥当性も確認された。
本研究では,研究 1 の結果から得た「看護の本質を重視した指導の実践」が抽出されなか
ったことから,今後 MGNLS の洗練化を図るうえで,内容を再検討することが課題として残さ
れた。また,本研究では,機能的弁別性の検討に用いた職務満足度やチームワークと中堅看

護師のリーダーシップを同一人物が回答しているため,MGNLS と職務満足度やチームワーク
との関連性が過大に報告された可能性は否定できない。また,中堅看護師がリーダーシップ
を発揮することが,病棟の目標達成度などにどのような影響を及ぼすかという点は検討で
きていない。そこで,評価される中堅看護師を一人に絞ったうえで,病棟単位の調査を実施
し,MGNLS と看護師長によって評価された病棟の目標達成度との関連を集団単位で検討する
など,さらに精緻な方法で MGNLS の構成概念妥当性と有効性を検討する必要がある。

第 4 章(研究 3)では,MGNLS によって測定される中堅看護師のリーダーシップが,部署メ
ンバー間の共有リーダーシップ,部署の職場環境,部署目標達成,看護の質,及び部署メン
バーの職務満足度に及ぼす影響を,部署(病棟)単位の分析によって検討し,さらに,師長
のリーダーシップと中堅看護師のリーダーシップとの関連について検討することを目的と
した。部署単位の分析をするために,評定対象とする中堅看護師を「教育担当係長・主任」
に定め,同じ部署に勤務する看護師長,係長または主任,中堅看護師に質問紙調査を実施し
た。
その結果, 中堅看護師のリーダーシップが共有リーダーシップ,専門性を発揮できる職
場環境,職務満足度に正の関連を示すことが明らかになった。一方で,部署目標到達度との
関連は認められなかった。看護師長のリーダーシップが中堅看護師のリーダーシップに及
ぼす直接的効果は認められなかったが,人員配置が良好であるほど中堅看護師のリーダー
シップが高いという予想外の関連が明らかになった。人員配置は職場環境の一つではある
が,人員配置の権限を持つ看護師長のリーダーシップによって規定される要因であると考
えられるため,職務遂行に十分な人数の看護師が配置されるような良好な環境下で中堅看
護師のリーダーシップが開発されやすいことが示唆された。
研究 3 では,看護の質の指標として,どのような職場であっても看護実践の最も基本とな
る倫理的行動に注目したが,看護の質評価の際には,死亡率,在院期間,有害事象の発生率,
看護ケアに対する患者・家族の満足度などが指標となっている。今後は,倫理的行動だけで
なく,有害事象の発生率や患者・家族の満足度などの看護の質指標に対しても中堅看護師の
リーダーシップが有効なのかを検討する必要がある。MGNLS は看護の質に対しては共有リー
ダーシップを介した間接的な効果を有することが示されたことから,部署目標が看護の質
と関連する内容であれば,結果に反映された可能性もあると考えられるため,MGNLS の有効
性を検討するうえで今後の課題とする。

第 5 章では,第 2 章から第 4 章までの 3 つの研究の結果を概観し,中堅看護師のリーダ
ーシップ概念の特徴を考察すると共に,MGNLS の有用性と限界,学術的貢献,実践的貢献,
及び課題と展望について,次のように述べた。
研究 1 では,中堅看護師のリーダーシップの考え方の特徴として 3 カテゴリーを,リー
ダーシップ行動の特徴として 6 カテゴリーを抽出した。研究 2 では,副師長や主任看護師
を含む看護師経験 5 年目以上の中堅看護師のリーダーシップ測定尺度(MGNLS)を作成し,そ
の信頼性と妥当性を検討した。
「問題を解決するためのアサーティブな発信力」
「後輩中心の
成長支援行動」
「職場学習の実践」
「変革への挑戦」
「協調性とセルフコントロール力」
「指導
者としてのリフレクション行動」という 6 因子で構成される 33 項目の尺度の信頼性,因子
妥当性,及び構成概念妥当性が確認された。研究 3 では,中堅看護師のリーダーシップ
(MGNLS) が共有リーダーシップ,看護職の職場環境,職務満足,部署の看護の質,及び部署
目標達成度に及ぼす効果を明らかにすることを目的として質問紙調査を実施した。マルチ
レベル分析の結果,MGNLS によって測定される中堅看護師のリーダーシップは,共有リーダ
ーシップや専門性を発揮できる職場環境を促進することを通して看護の質を高めると共に,
直接的に部署メンバーの職務満足度を高めることが示された。この結果から,少なくとも教
育担当係長・主任が中堅看護師のリーダーシップを発揮することは,部署にとって有効であ
ることが示された。
中堅看護師のリーダーシップ概念のうち,
「後輩中心の成長支援行動」や「問題を解決す
るためのアサーティブな発信力」は先行研究で示されてきた看護師長のリーダーシップと
共通した要素である一方,
「職場学習の実践」
「変革への挑戦」
「協調性とセルフコントロー
ル力」は,看護師長にはない中堅看護師の特徴を示すリーダーシップ行動と考えられた。そ
のため,本研究で作成した MGNLS は,これまで明確にされていなかった中堅看護師のリーダ
ーシップの概念を明示したものであり,中堅看護師のリーダーシップ育成の評価指標とし
ても使用可能であると考察した。
続いて、本研究から得られた知見から、学術的貢献及び実践的貢献を考察し,MGNLS を中
堅看護師の体系的な教育と評価への応用について述べた。最後に,本研究の課題と展望を論
じた。同部署の複数の中堅看護師でリーダーシップが共有されることの有効性を明らかに
することが期待される。

論文目録

学位論文
論文題目 中堅ジェネラリスト看護師のリーダーシップに関する研究

参考論文
関係論文


著者名:村田由香
論文題目:プレイングマネジャー役割を持つ看護師のリーダーシップの特徴
雑誌名:日本赤十字広島看護大学紀要,
(査読制度あり)
18 巻,1 頁-9 頁,発行年:2018 年



著者名:村田由香・坂田桐子
論文題目:中堅ジェネラリスト看護師のリーダーシップ尺度の信頼性・妥
当性の検討
雑誌名:広島大学大学院総合科学研究科紀要. 人間科学研究
14 巻(印刷中:受理年月日 2019 年 11 月 14 日付)

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