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大学・研究所にある論文を検索できる 「関節リウマチ患者由来滑膜線維芽細胞の炎症性フェノタイプに対するJAK阻害剤の影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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関節リウマチ患者由来滑膜線維芽細胞の炎症性フェノタイプに対するJAK阻害剤の影響

小川, 萌 東京大学 DOI:10.15083/0002006997

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 小川 萌
本研究では、JAK 阻害剤が関節リウマチ患者由来滑膜線維芽細胞 (RASFs)の病的形質に
与える影響を検討するため、炎症環境下で活性化した RASFs に JAK 阻害剤を含む各種の
抗リウマチ薬を添加し、遺伝子発現とオープンクロマチン領域を網羅的に解析した。この
研究にあたり、トランスクリプトーム解析には RNA sequencing を、エピゲノム解析には
ATAC sequencing (Omni-ATAC)を用いており、下記の結果を得ている。
1.

RNA sequencing により得られたトランスクリプトームデータを主成分分析にて俯瞰し
たところ、JAK 阻害剤 (TOFA・BARI)は他の DMARDs と比較し、炎症環境下の
RASFs に特徴的なトランスクリプトーム変化をもたらすと考えられた。更に JAK 阻害
剤の製剤間にも作用の違いが存在することが示唆された。non-treatment 条件と各薬剤
添加条件の発現変動遺伝子 (DEG)を比較すると、選択的 JAK 阻害剤 (BARI)添加条件
で DEG 数が最も多く、BARI でのみ発現が有意に変動する 535 遺伝子の中には、CSF1
や CXCL16 に代表される RA の炎症性メディエーターが多く含まれた。

2.

ATAC sequencing により得られたエピゲノムデータから、non-treatment 条件と各薬剤
添加条件の比較によるオープンクロマチン領域の変動ピーク (diffPeak)を解析したと
ころ、BARI で最多の diffPeak を認め、BARI が炎症環境下の RASFs のエピゲノム構
造をより広範に修飾する可能性が示唆された。実際に、BARI でのみ発現が有意に変
動する 535 遺伝子のうち、92 遺伝子でプロモーター領域のエピゲノム構造に有意な変
化が確認された。

3.

RNA sequencing での各遺伝子発現の倍率変化 (FC)の情報と ATAC sequencing で各遺伝
子のプロモーター領域にある diffPeak の FC の情報を統合することにより、プロモー
ター領域のオープンクロマチン構造の変化を伴い、TOFA と比較し BARI で有意に発
現が抑制される 18 遺伝子が同定された。この中には、インターフェロンのシグナル
伝達に必須の転写因子である STAT1 と、その標的遺伝子として知られ、主に T 細胞の
遊走にかかわるケモカインである CCL8、RA の炎症滑膜で高発現し治療抵抗性の予測
因子として知られる IL7R などが含まれた。BARI 添加条件では、CCL8、IL7R におけ
る既知の STAT1 結合領域と一致してオープンクロマチンピークが消失し、これらの遺
伝子発現が有意に抑制されていた。また、TOFA と BARI の比較による diffPeak のモ
チーフ解析から STAT1 の発現を制御する転写因子を予測し、データベース (ChIPAtlas)上の既知と結合領域と照合したところ、RUNX3 が候補に挙がった。

以上、本論文は、JAK 阻害剤を含む代表的 DMARDs を添加した炎症環境下にお
ける RASFs のオミックス解析により、BARI 添加条件は TOFA 添加条件と比較し、
STAT1 および STAT1 標的遺伝子である CCL8 や IL7R、SAA1、SLAM8 といった RA
の病態関連遺伝子の発現を高度に抑制することを明らかにし、STAT1 抑制に
RUNX3 の転写活性抑制を介している可能性が考察された。これまでに選択的 JAK
阻害剤が RASFs の病的形質に与える免疫学的作用の特性をトランスクリプトーム・
エピゲノムレベルで検討した報告は無く、今回得られた知見が製剤間の臨床的効果
の違いを解明するために重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士(医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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