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大学・研究所にある論文を検索できる 「透析導入患者における炭酸ランタンと炭酸カルシウムの弁石灰化進行に対する効果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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透析導入患者における炭酸ランタンと炭酸カルシウムの弁石灰化進行に対する効果

Watanabe, Kentaro 神戸大学

2020.09.25

概要

透析患者では心臓弁石灰化はしばしば認められる.透析患者における心臓弁石灰化に関わる因子は研究によって報告が異なるが,年齢,透析期間,尿毒素,慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)に関わる因子,動脈硬化などが報告されている.心臓弁石灰化は心血管死や全死亡との関連が報告されており,透析導入して 1 年間は心血管疾患の発生が多いため,この期間におけるリスク管理は非常に重要である.透析患者では CKD-MBD に対する治療として一般的にリン吸着薬を用いることが一般的であり,リン吸着薬には炭酸カルシウムをはじめとしたカルシウム含有のリン吸着薬と,炭酸ランタンをはじめとしたカルシウム非含有のリン吸着薬がある.これまで透析患者におけるリン吸着薬の心臓弁石灰化への影響をみた報告は少ない.今回我々は炭酸ランタンと炭酸カルシウムとの透析導入後の心臓弁石灰化の進展に与える影響の違いおよび,透析患者における心臓弁石灰化進展に与える因子について調べることとした.

方法としては,以前我々が行った RCT のデータを用いて解析を行った.この RCT についてはヘルシンキ宣言に則り,また神戸大学臨床倫理委員会の承認を得て行った.対象は 2011 年 11 月から 2014 年 7 月にかけて我々の関連施設において入院して血液透析導入され,経胸壁心エコーの経時的な施行および心臓弁石灰化(CVC)の評価が可能であった 50 人とした.炭酸ランタンで治療した群(LC 群)24 名と炭酸カルシウムで治療した群(CC 群)26 名に群分けされ,それぞれ 18 か月間治療が行われた.血清リンの管理については日本透析学会のガイドラインに基づいて,3.5-6.0mg/dL の範囲となるよう薬剤の用量調整され,炭酸ランタンもしくは炭酸カルシウムの増量でコントロールが難しい場合はセベラマーもしくはビキサロマーの追加を許可した.また活性型ビタミン D は可能な限り使用を控え,シナカルセトの使用は禁止した.導入時と 18 か月後の CVC を経胸壁心エコーにて判定量的に測定してスコアを算出した.1mm 以上のエコー高輝度領域を弁石灰化と判定し,石灰化を認める僧帽弁および大動脈弁の弁数+僧帽弁弁輪石灰化有無の合計(最大 6 点)を弁石灰化スコア(CVCS)とした.さらに頸動脈プラークスコア(PS)もしくは平均血清P 値(ベースライン,6 か月後,12 か月後,18 か月後の平均)で高 PS 群(HPS群)と低PS 群(LPS 群)および,高P 群(HP 群)と低 P 群(LP 群)に分けて心臓弁石灰化の比較を行った.透析患者における CVC の進展に与える因子については単相関および重回帰分析を用いて解析した.

結果については LC 群と CC 群でベースラインのパラメーターは CVCS 含めて有意差はなかった.また両群で 18 か月後の CKD-MBD に関連したパラメーターについて有意差はなく,CVCSについても有意差はなかった.18 か月後のCVCS は PS と有意な正の相関を認め,ベースラインから 18 か月後にかけての CVCS の進行は平均血清リン濃度および年齢と有意な正の相関を認めた.ベースラインから 18 か月後にかけての CVCS の進行を従属変数として重回帰分析したところ,年齢と平均血清リン濃度が有意な独立した説明変数であった.また HPS 群の方が HPS 群に比べて CVCS の進行も速い傾向にあり,HP 群の方が LP 群に比べて CVCS の進行も有意に早かった.さらにHPS+HP 群の方がLPS+LP 群に比べて CVCS の進行が有意に早かった.

本研究では LC 群と CC 群で HD 導入 18 か月後の血清 Ca,P,PTH など CKD-MBD に関連したパラメーターに有意な差はなく,また両群で CVC の進行にも違いを認めなかった.一方で頸動脈プラークの存在や高リン血症は CVC と関連する可能性が示唆された.

血清リンの血管石灰化や CVC に対する影響は非常に重要であることは,これまでにも様々な研究で報告されている.したがって CVC について考える上で血清リンのコントロール状況は非常に重要と考えられるが,本研究では LC 群と CC 群で血清 P 値に差がなく,目標範囲内にコントロールされていたことが,両群で CVCS の進行に違いを認めなかった一因として考えられる.一方で本研究でも血清リンは CVCS との有意な相関関係を認めていることから,やはり血清リン濃度のコントロールは CVC の進展に非常に重要であると考えられる.

カルシウム負荷も CVC への関与が指摘されており,カルシウム含有リン吸着薬によるカルシウム負荷が CVC へ影響を及ぼすことが考えられる.維持血液透析患者における塩酸セベラマーと酢酸カルシウムで CVC への影響を比較した RCT が過去に報告されているが,治療開始 52 週後,両群で大動脈弁石灰化の進行に差はなく,僧房弁石灰化は酢酸カルシウム群で進行する傾向にあったものの有意差は認めなかった.彼らの研究でも,我々の研究でもカルシウム負荷による有意な CVC への影響を認めなかった理由としては,血清 Ca が適正にコントロールされていたこと,カルシウム負荷量が多くなかった可能性が挙げられる.実際に我々の研究でも血清 Ca は両群で有意差なく,また適正な値にコントロールされていた.

血清 PTH 値もCVC に関与しているとする報告がある.二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬であるCinacalcet 及び low dose vitamin D agent の併用治療群では vitamin D 単独治療群で比較するとCVC の進展が抑制された結果であったが,この研究では Cinacalcet 及び low dose vitamin D agent の併用治療群で血清Ca,P,PTH も全て低下していた.本研究では血清 Ca,P 同様に,血清PTH に関しても両群で有意差なく,目標範囲内にコントロールされていた.

これらのことからは,本研究では Ca,P,PTH など CKD-MBD パラメーターに両群で有意差なく target range にコントロール出来たことが CVC に差を認めなかった一因と考えられる.

本研究では PS の高い群で CVC が進行する傾向にあり,プラークの存在は CVC と有意に関連していた.過去の報告でも,CKD 患者において血管内膜病変と CVC との関連を指摘しており,また CKD 患者においてはプラークの性状がより石灰化の強いものへ変化していくことが指摘されている.プラーク形成に関連する脂質異常症も CVC 進展のリスクとされる一方で,スタチンによる治療は弁石灰化抑制を認めないとする報告もある.これらのことからは特に CKD 患者においてはプラークの存在や脂質異常症は CVC の形成に重要な役割を果たしている可能性があり,さらに弁石灰化の進展には高 P 血症が重要な役割を果たしている可能性が想定される.したがって複合的に介入すること,例えばスタチンとリン吸着薬による加入を行うことが CVC 進展を抑制できる可能性があるのではないかと考えられる.

今回我々の研究では炭酸ランタンと炭酸カルシウムは透析導入後の心臓弁石灰化への影響を認めなかった.一方で CVC の形成や進展はプラークの存在や高リン血症と関連する可能性が示唆され,透析患者における心臓弁石灰化進展に関わる因子について今後さらなる検討が必要であると考えられた.

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