リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies toward Conjugated Systems Having Silicon-Containing Double Bonds: Orbital Interactions of a Spiropentasiladiene Radical Cation and Functionalization of a Bromosilene」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Studies toward Conjugated Systems Having Silicon-Containing Double Bonds: Orbital Interactions of a Spiropentasiladiene Radical Cation and Functionalization of a Bromosilene

本多 峻也 東北大学

2021.03.25

概要

Chapter 1. General Introduction
有機化学において π 共役は最も重要な概念の一つであり、その基本ユニットとなるアルケンやアルキン、そしてそれらを連結した π 共役系について精力的に研究が行われている。アルケンのケイ素類縁体であるジシレンおよびシレンは弱いπ結合に由来する狭い HOMO-LUMO ギャップや高い反応性を持つことが知られている。またシレンについては電気陰性度の違いからケイ素側が正、炭素側が負に分極した構造を示す。従って、ジシレンおよびシレンはそれら自体が興味深い性質を持ち、含ケイ素 π 共役化合物の基本ユニットとして重要である。これらの化学種は本質的に自己重合する化学種であるが、嵩高い置換基による速度論安定化や電子供与性の置換基による熱力学的安定化を施すことで、これまでに多数の共役したジシレンおよびシレンが単離され、それらの性質が明らかにされてきた。しかし、合成や構造的な制約から一般的な π 共役有機化合物に比べてその多様性はいまだに乏しく、知見も限られている。

このような背景から本博士論文では二種類の含ケイ素 π 共役化学種について研究を行った(Chart 1)。第二章では空間を介した軌道相互作用を示すスピロペンタシラジエンの一電子酸化を行うことで、対応するスピロペンタシラジエンラジカルカチオン 1 の合成および単離に成功した。さらに 1が、電子スピンと正電荷が四つの不飽和ケイ素上に非局在化した構造であることと IR-B 領域(1400 – 3000 nm)に吸収帯を示すことを明らかにした。第三章では有機合成化学においてビルディングブロックとして有用なブロモエチレンのケイ素類縁体であるブロモシレンの官能基変換反応を目指し、ブロモシレンに対して求核試薬や還元剤、遷移金属試薬を作用させることで、新規シレン誘導体 2 の合成に成功した。このようなハロシレンの変換反応は例が少なく、本博士論文においてシレン骨格を保ったままの置換基変換反応を初めて見出した。また、ブロモシレンから 1,3-ジシラ[1.1.0]ビシクロブテン 3 やブロモシレン金属錯体 4 の合成も成功した。

Chapter 2. Synthesis, Structure and Theoretical Study of Spiropentasiladiene Radical Cation
スピロペンタジエンは直交した二重結合同士が空間を経由した軌道相互作用(スピロ共役)を示す最小のジエンである。しかしスピロペンタジエンは熱的に不安定であり、スピロペンタジエンのスピロ共役において電子状態の変化とそれに伴う構造及び物性の変化を実験的に明らかにした例はない。スピロペンタジエンのケイ素類縁体であるスピロペンタシラジエンは嵩高い置換基の導入により単離可能であるため、スピロペンタジエン骨格のスピロ共役に関する実験的な研究が可能である。本章では、単離可能なスピロペンタシラジエンの一電子酸化反応によるラジカルカチオンの生成とその性質の解明を行った。

嵩高いアルキル基を持つスピロペンタシラジエン 5 に対して Ph3C+[B(C6F5)4]− を作用させることで一電子酸化反応が進行し、対応するラジカルカチオンのボラート塩 1 を収率 72%で合成した(式 1)。また 1 はカリウムグラファイトで還元することで、5 を NMR 収率 98%で与えた。化合物 1 の二つの Si=Si 結合長は中性分子 5 のものに比べて伸長していた。また DFT 計算から、Si=Si 結合の結合次数の低下と不対電子の不飽和ケイ素上での均等分布が示されたことから、1 は四つの不飽和ケイ素上に電子スピンと正電荷が非局在化した構造を持つと結論した。1 のフルオロベンゼン中の UV-vis-NIR スペクトルでは著しく長波長側に三つの吸収帯(λmax = 1972, 1000, 695 nm)が観測され、 TD-DFT 計算によってこれらの吸収が充填軌道である π(Si=Si)軌道と二種類の σ(Si=Si), σ(Si-Si)軌道から SOMO への電子遷移に帰属できることを明らかにした。本章の結果は共役したビスジシレンという小さなπ共役系のラジカルカチオン種で赤外領域における吸収帯を持つことを実験的に明らかにできた点で重要である。

Chapter 3. Synthesis and Structure of Functionalized Silenes and Bicyclobutane
ハロアルケン(ビニルハライド)は多様な化合物のビルディングブロックとして有用である。従って、そのケイ素類縁体であるハロシレンも、多様な基質に対して分極した含ケイ素二重結合(Siδ+=Cδ–)を導入するためのビルディングブロックとしての有用性が期待される。しかし、これまでに複数のハロシレンが報告されているにもかかわらず、ハロゲンを脱離基とした変換反応はほとんど報告されていない。これまでに単離可能なブロモシレン 6 が合成されているが、ビルディングブロックを志向した反応性の解明は行われていない。本章では 6 に対して求核剤、還元剤及び遷移金属を作用させることで、ブロモシレンの変換反応を検討した。

6 に対して比較的嵩高い求核剤(tBuLi, Ph2NLi, (Me3Si)3SiK)を作用させると、それぞれアルキル基、アミノ基、シリル基で置換された新規シレン 2a-c が生成した(Scheme 2)。この反応はハロシレンから配位のないシレンを合成した初めての例であり、6 がケイ素を含むπ共役化合物の合成に有用である事を示している。また還元剤である KC8 を作用させると 1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン 3 が収率 33%で得られた。3 は還元による二量化と熱異性化によって生成していると推定した。6 と Ni(PMe3)4 との反応では η2–ニッケルブロモシレン錯体 4 が得られ、ハロゲン部位が変換された化学種は観測されなかった。本章の結果は、単離可能なハロシレンの変換反応を検討することで、ビルディングブロックとしての有用性を明らかにした点で重要である。

本博士論文ではスピロペンタシラジエンとブロモシレンに関して研究を行い、新たな知見を得た。第一章では、スピロ共役における電子的な物性変化を明らかにし、共役したビスジシレンラジカル カチオンの吸収スペクトルが赤外領域に観測されることを明らかにした。この結果は不飽和シリコ ンクラスターのラジカルカチオン種が赤外吸収材などに利用できる可能性を示唆しており、材料科 学の発展に寄与できる。第二章では単離可能な配位のないブロモシレンを用いて新たな化学種の合 成に成功した。特にシレン骨格を保ったままの変換反応は例がなく、分極した高周期多重結合種の 化学に対して新たな知見を得ることができた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る