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大学・研究所にある論文を検索できる 「Correlation between Blood Flow, Tissue Volume and Microvessel Density in the Flap」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Correlation between Blood Flow, Tissue Volume and Microvessel Density in the Flap

Nakamura, Yutaka 中村, 優 名古屋大学

2020.02.03

概要

【緒言】
遊離組織移植において皮弁の血流を理解することは重要である。血流の良い皮弁は、感染巣の制御・移植床の血流改善・放射線潰瘍の治療・皮弁の生着域の拡大などに有利である。われわれは過去に臨床例で皮弁のコンダクタンス(血液の流れやすさ)を規定する因子を検討し、皮弁の種類や体積がコンダクタンスに相関することを報告してきたが、年齢や基礎疾患など、症例背景が異なることが制限となっていた。今回われわれは、体積とコンダクタンスの関係をより正確に理解するために、ウサギの空腸と広背筋において体積とコンダクタンスの関連について検討した。さらに主要な規定因子の一つであると考えられる細血管密度(MVD)との関連についても検討した。

【対象および方法】
オスの日本白色家兎 7 羽(空腸弁:n=4、広背筋弁:n=3)、平均体重 3240gを用いた。空腸弁は、前腸間膜動静脈を血管茎として挙上した(図 Figure 1 上)。空腸を遠位から段階的に切除し、各段階で残存する皮弁の血流量を前腸間膜動脈にて超音波血流計(HT323 surgical flowmeter; Transonic Systems)を用いて計測した。広背筋弁も同様に胸背動静脈を血管茎として挙上し、血流を計測した(Figure 1 下)。それぞれ切除した皮弁の体積を同時に記録して、各段階での残存する皮弁の体積を算出した。各段階の血流量から血管抵抗を算出し、その逆数であるコンダクタンスを算出した。

次に、空腸と広背筋のそれぞれ 3 個体を対象として 20 視野ずつ、合計 60 視野の短軸断面で標本を採取した。得られた標本は CD31 / PECAM1・DAB とエオジンで染色した。Image J を利用して、染色された血管内皮及び、その内腔を細血管面積とした。その際、径 200 μm 以上の血管は除外した。組織全体に対する総血管面積の割合(%)を計算し、MVD とした。

【結果】
空腸弁は平均 12 箇所、広背筋弁は平均 8 箇所で分割して計測を行った。最小二乗法によりそれぞれ検討したところ、全例で体積とコンダクタンスに正の相関(p<0.05)を認めた。それぞれの皮弁においてコンダクタンスと体積の回帰直線を算出した。回帰直線の傾きは空腸が 0.0067〜0.030(平均 0.020)、空腸が 0.0037〜0.0097(平均 0.0059) ml/min/mm Hg であった。さらに、それぞれの皮弁で線形混合モデルを利用して計測値を統合したところ、1cm3 あたりのコンダクタンスは空腸で 0.012( 95% CI;0.0070– 0.016)、広背筋で 0.0047(95%CI;0.0032–0.0062)ml/min/mm Hg であった。これは空腸が広背筋の約 3 倍のコンダクタンスの組織であることを示している。

また、MVD の平均は空腸が 1.15±0.52%で、広背筋が 0.37±0.29%であった。線形混合モデルを使用して計測値を統合したところ、空腸の MVD が広背筋の MVD よりも 0.78%(95%CI; 0.63–0.93)有意に大きいことが示された(Figure 3)。これは空腸が広背筋の約 3 倍の MVD を持つ組織であることを示している。

【考察】
遊離皮弁移植を安全に行うために、皮弁のコンダクタンスを理解することは重要である。組織構成を考慮して挙上することで、用途に応じたコンダクタンスの皮弁を用意する事が可能となる。虚血肢に対して遊離皮弁を用いて再建する有用性が報告されるが、これはコンダクタンスの低い組織を、コンダクタンスの高い組織で置換することによって、局所の血液供給の増加が得られたものと考えられる。このように、コンダクタンスの高い皮弁は豊富な血液供給を得られる一方で、血液供給過多で鬱血を生じる可能性がある。その場合、十分に還流可能な静脈に吻合する必要がある。

われわれはこれまでに、臨床例での遊離皮弁移植の解析から血管抵抗が皮弁の種類と組織の組成で異なることを報告してきた。しかしながら、臨床研究では患者の背景や使用する皮弁、移植床血管の標準化が不可能であった。本検討では、動物モデルを利用することで、単一の皮弁において、体積を変化させながら血流を複数回測定することが可能であった。これにより、背景因子を除外することが可能となり、空腸弁と広背筋弁において皮弁の体積とコンダクタンスとの間の相関関係を明らかにした。さらに、本検討では空腸のコンダクタンスが広背筋の約 3 倍であることを明らかにしており、これは空腸弁のコンダクタンスが広背筋皮弁の約 4 倍であったという過去にわれわれが報告した臨床例での統計と一致していた。また、本検討では空腸の MVD が広背筋の約 3 倍であることを明らかにした。これらの結果は、皮弁のコンダクタンスが MVD によって規定されている可能性を示唆している。渉猟し得る限り、本研究は皮弁のコンダクタンスと MVD との相関関係を示す最初の報告である。

全身循環において、血流に対する総抵抗の約 3 分の 2 が、細動脈(100〜50μm)から毛細血管(10〜5μm)によって生じる。血管網は並行して走行し、血流のコンダクタンスを作り出す。したがって、各組織の抵抗は、その中の各血管網の抵抗の集合と見なせる。 Turek らは、マウスの空腸の毛細血管密度は骨格筋の密度よりも高いと報告しており、これは、本研究での我々の結果と一致しており、臓器や組織の毛細血管網の分布が代謝活動に基づいて異なる可能性を示唆している(例えば、腸管では筋肉よりも大きく、筋肉は脂肪/皮膚よりも大きい)。

本研究では、チョーク血管や動静脈シャントを介した領域を含む血管など、血管が均一に分布していない組織を考慮していない。また、この研究では 2 つの組織タイプ(腸と筋肉)のみを調査したが、臨床においては単一組織のみの皮弁を使用することは多くなく、複数組織の複合した皮弁においても検討の必要があると考えられた。

【結論】
本検討では、広背筋弁より空腸弁のコンダクタンスが大きいことを明らかにし、また同様の傾向を MVD でも認めた。これは MVD が各組織の固有のコンダクタンスを規定する因子の一つであることを示唆する。これらの結果は、皮弁血流を決定する因子のより良い理解に貢献し、安全な遊離組織移植を行うための一助となると考えられる。

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