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大学・研究所にある論文を検索できる 「非小細胞肺癌におけるB7-1およびPD-1/PD-L1免疫チェックポイント分子の発現と転移巣での変化」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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非小細胞肺癌におけるB7-1およびPD-1/PD-L1免疫チェックポイント分子の発現と転移巣での変化

山田 剛裕 東北大学

2020.09.25

概要

PD-L1 は T 細胞上の PD-1 と結合する事で免疫反応を抑制するが、この機序を腫瘍細胞が利用し生体の免疫機構からの逃避に利用する事は広く知られている。これを阻害して生理的な腫瘍免疫を回復する PD-1/PD-L1 阻害剤は、腫瘍細胞での PD-L1 発現率が高い症例で特に高い治療効果を示す。しかし、一部の症例では腫瘍細胞における PD-L1 の発現動態が転移巣と原発巣で異なる事も報告されており、このような症例では転移病変に対しての PD-1/PD-L1 阻害剤の治療効果が原発腫瘍の PD-L1 発現率から予測されたものと異なる可能性がある。腫瘍に浸潤する T 細胞の PD-1 発現が、腫瘍細胞の PD-L1 発現と相関する事や、免疫細胞由来のサイトカインがPD-L1 を誘導する報告がある事から、今回私は、転移巣での PD-L1 の発現変化は、腫瘍浸潤免疫細胞の動態と関係しているのではないかという仮説を立てた。また PD-L1 は PD-1 以外にも T細胞に発現する B7-1 とも結合し、同様に T 細胞を抑制する。PD-1 阻害剤は PD-1/PD-L1 の結合は阻害するものの、PD-L1/B7-1 の結合は阻害できない事から、B7-1 を発現する T 細胞に対しては PD-1 阻害剤の効果が減弱すると考えられる。しかし、肺癌組織内での B7-1 の発現動態は、ほとんど知られていない。そこで今回私は、B7-1 発現の特徴や、臨床予後や PD-1 阻害剤の効果に対する影響、リンパ節転移巣での PD-L1 発現の変化と B7-1、PD-1 の発現動態を含む腫瘍免疫微小環境との関係などを検討する事とした。

まず共培養系を用いた in vitro の細胞実験で免疫細胞と腫瘍細胞間の相互作用による PD-L1/PD-1 免疫チェックポイント関連分子の変化を検討し、次に実際の肺癌症例の臨床病理組織検体を用いた研究で、B7-1 の発現動態やリンパ節転移病変における PD-L1 発現の変化と周囲免疫細胞との関連などを検討した。最初の in vitro での検討として肺腺癌培養細胞株 PC-9、A549、H1975 と正常ヒト末梢単核細胞 (PBMC) との共培養を行い、PBMC の PD-1/PD-L1 関連分子の遺伝子量を PCR アレイにより検討した。この共培養によって、PBMCの B7-1(CD80)、IL-7、IL-15、TNF の遺伝子量は、単独培養コントロールと比較し 5 倍以上の増加を認めた。 IL-7、IL-15、TNF はいずれも PD-1、PD-L1 を誘導する因子とされており、PD-L1 と結合する B7-1 も含め、 PD-L1 関連免疫チェックポイント分子の発現に腫瘍浸潤免疫細胞が関わることが示された。

次に非小細胞肺癌 75 症例の手術検体を対象に、B7-1 の免疫組織化学を行い、得られた結果を患者の臨床病理学的因子と関連させて検討した。B7-1 は主にリンパ球、形質細胞で発現しており、喫煙者、扁平上皮癌患者において、非喫煙者や腺癌の症例よりも有意にその発現が高かった。臨床予後解析では、B7-1 高発現群と低発現群間で術後生存期間の有意な差は認められなかった。次に、リンパ節転移が認められた 40 症例を対象に、肺癌原発巣とリンパ節転移巣における B7-1、PD-L1、PD-1、CD3、CD4、CD8 の免疫組織化学を行い、得られた結果と B7-1 の発現動態との関係を検索した。原発巣での B7-1 の発現は、腫瘍細胞における PD-L1 発現 (TPS)と正の相関が認められた。また、CD4、CD8 の腫瘍間質における陽性率は、原発巣と転移巣で有意な相関を認めたのに対して、B7-1 と PD-1 は相関していなかった。リンパ節転移巣における PD-L1 TPSは 15 例 (37.5%) では原発巣と 10-30%の範囲内での差異が認められ、7 例 (15%) では 40%以上の差を認めた。また、PD-L1 TPS がリンパ節転移巣で原発巣より増加している症例は、原発巣と比較して低下、或いは変化がない症例と比較して、腫瘍間質細胞の CD8 陽性率が有意に高かった。非小細胞肺癌に対して初回薬物治療で PD-1 阻害剤の投与を受けた 10 症例での解析では、PD-1 阻害剤の治療奏功性と B7-1 発現には有意な関係は認められなかった。

腫瘍細胞における PD-L1 の発現動態は患者の喫煙量と相関する事が知られており、喫煙により生じた遺伝子突然変異に対し、腫瘍に浸潤する T 細胞からのサイトカイン分泌が亢進し、腫瘍細胞の PD-L1 発現が誘導される事に起因すると考えられている。今回私が検討の対象とした B7-1 も、PD-L1 同様にサイトカイン分泌 亢進によりその発現が増加したものと思われ、PD-L1 と共通の誘導因子がこの機序として関係しているものと推察される。またリンパ節転移病変で PD-L1 発現が上昇した症例では原発巣の腫瘍間質に CD8 陽性細胞、すなわち細胞障害性 T 細胞 (CTL) が多かったが、これは周囲の微小環境に依存して、CTL が腫瘍細胞の遺 伝子不安定性を亢進することにより、腫瘍細胞が PD-L1 発現を獲得する事に起因するのではないかと考えられ、腫瘍に浸潤する CTL の多寡が、転移巣に対する PD-1/PD-L1 阻害剤の効果に影響する可能性が示唆された。

腫瘍浸潤免疫細胞と腫瘍細胞の相互作用は、B7-1 を含めた免疫チェックポイント関連分子の発現に大きくかかわる因子であると考えられ、肺癌患者の術後治療成績の向上の為にもこの領域で更なる研究が進む事が期待される。

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