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大学・研究所にある論文を検索できる 「Expression of programmed cell death ligand-1 by immune cells in the microenvironment is a favorable prognostic factor for primary diffuse large B-cell lymphoma of the central nervous system」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Expression of programmed cell death ligand-1 by immune cells in the microenvironment is a favorable prognostic factor for primary diffuse large B-cell lymphoma of the central nervous system

露木, 悠太 名古屋大学

2021.05.26

概要

【緒言】
中枢神経原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)は非ホジキンリンパ腫の1%以下、脳腫瘍の2−3%を占める稀な腫瘍である。脳・脊髄・軟膜・眼に発生し、免疫不全患者に発生したものや他臓器からの転移はこの疾患から除外される。様々な治療法が報告されているが、現在は高用量メトトレキセート(HD-MTX)投与が中枢神経原発DLBCLの治療の中心となっている。Programmed cell death-1(PD-1)/ programmed cell death ligand-1(PD-L1)経路は現在様々な悪性腫瘍で治療標的となっている。PD-L1は免疫反応を抑制する免疫チェックポイント分子であり、腫瘍に特異的なCD8陽性Tリンパ球を抑制することにより、腫瘍の成長を促進する。近年、リンパ腫を含む多様な悪性腫瘍の治療において、PD-1/PDL1阻害薬の良好な結果が報告されている。さらに、腫瘍細胞や微小環境内の免疫細胞でのPD-L1発現が、予後に影響を与えることが近年報告されている。本研究では中枢神経原発DLBCL39例を後方視的に解析し、臨床病理学的特徴及び予後に関する検討を行った。

【対象と方法】
2005年から2018年の間に当院で中枢神経原発DLBCLと診断された41例を、後方視的に解析した。そのうち2例では脳以外の臓器にDLBCL病変が見られたため二次性の中枢神経リンパ腫として研究対象から除外し、残りの39症例を研究対象とした。診断は2017年版のWHO分類をもとに行った。ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックの薄切標本を用い、CD3,CD5,CD8,CD10,CD20,CD68,BCL-2,BCL-6,MUM-1,MYC及びPD-L1の発現を免疫染色化学法により評価した。抗PD-L1抗体はcloneSP142を使用し、腫瘍細胞の5%以上でPD-L1発現を認める場合を腫瘍細胞に陽性(neoplasticPD-L1[nPD-L1]陽性)とした。腫瘍微小環境内の免疫細胞については、PD-L1を発現する細胞が5%未満の場合を低発現(microenvironmentPD-L1[miPD-L1]低発現)、5-40%をmiPD-L1中等度発現、40%以上をmiPD-L1高発現と定義した。全例でin situ hybridization 法により Epstein-Barr virus encoded ribonucleic acid(EBER)を評価し、腫瘍細胞の80%以上に発現を認める場合を陽性と診断した。統計解析ソフトはEZRを使用した。

【結果】
中枢神経原発DLBCL39例においては、男女比は1.17:1であり、年齢中央値は66歳(範囲38-85歳)であった。12例(31%)で複数の病変を認め、20例(51%)で深部構造(脳室周囲・脳梁・基底角・脳幹及び/または小脳)への浸潤、7例(18%)で眼病変がみられた。19例(49%)がperformance status(PS)2-4であり、3例(8%)がB症状(発熱、盗汗、体重減少のうち少なくとも1つ)を有していた。

39例中24(62%)例でHD-MTX投与を含む多剤併用療法が施行され、11例(28%)ではHD-MTXを含まない化学療法が行われた。全脳照射は39例中28例(72%)に対して行われ、そのうち2例では全脳照射のみが施行された。39例中2例(5%)では全身状態が悪く積極的治療は行われなかった。化学療法及び/または放射線療法を行った37例のうち28例で完全寛解、4例で部分寛解が得られ、5例で病変の進行が見られた。

39例全例において、中〜大型の異形リンパ球がびまん性に増殖する組織像を認めた(Figure1)。免疫組織化学法では、39例全例でCD20は陽性、CD3は陰性であった。39例中2例(5%)でCD5陽性、9例(23%)でCD10陽性、27例(69%)でBCL-2陽性、34例(87%)でBCL-6陽性であり、MUM1陽性は37例(95%)であった。39例のうちneoplasticPD-L1(nPD-L1)陽性例は1例(3%)のみであった。nPD-L1陰性例38例では、microenvironmentPD-L1(miPD-L1)低発現(5%未満)が11例、miPD-L1中等度発現(5-40%)が24例、miPD-L1高発現(40%以上)が3例であった(Figure2)。in situ hybridization法ではいずれの症例にもEBERは検出されなかった。

Kaplan-Meier曲線を用いた予後評価では、nPD-L1陰性38例において、3年無増悪生存率(progression-free survival, PFS)は38%、3年全生存率(overall survival, OS)は53%であった(Figure3A,B)。miPD-L1の発現に基づいて分けた3群間の比較では、miPD-L1の発現が高いほどPFSが良好の傾向が見られ、低発現群・中等度発現群・高発現群での3年PFSはそれぞれ9%,49%,50%であった(P=0.073,Figure3C)。OSはmiPD-L1の発現が高いほど有意に良好であり、低発現群・中等度発現群・高発現群での3年OSはでそれぞれ21%,63%,100%であった(P=0.009,Figure3D)。HD-MTX投与例24例では非投与例13例と比較してPFS,OS共に有意に良好であった(それぞれP=0.007,<0.001,Figure4A,B)。HD-MTX投与例24例に限定して解析を行うと、miPDL1の発現に基づいて分けた3群間ではPFS,OS共に有意差が認められた(いずれもP<0.001,Figure4C,D)。

miPD-L1陰性例38例での単変量解析において、OSに影響する予後不良因子として深部構造への浸潤(P=0.023)、PS2-4(P=0.02)、B症状あり(P=0.001)、sIL-2R≥1000U/ml(P=0.002)、miPD-L1<5%(P=0.007)、MYC>40%(P=0.013)が同定され、HD-MTX投与は有意な予後良好因子であった(P<0.001)。多変量解析ではOSの独立予後不良因子として、深部構造への浸潤(P=0.034)、PS2-4(P=0.009)、miPDL1<5%(P=0.027)の3因子が抽出された。

この3因子を組み合わせ、中枢神経原発DLBCLの予後を予測するためのCNS-DLP model(primary CNSDLBCL prognostic model)を作成した。3因子のうちいずれの因子も有さない場合をScore0(n=6)、1因子有する場合をScore1(n=11)、2因子有する場合をScore2(n=3)、3因子有する場合をScore3(n=3)と定義し、Score0-1の患者群をgood-、Score2-3をpoor-CNSDLP groupと分類した。この2つの群をKaplan Meier曲線を用いて比較したところ、OS及びPFSのいずれにおいても有意差が認められた(いずれもP<0.001,Figure5)。

【考察】
本研究では、39例の中枢神経原発DLBCLを解析し、neoplasticPD-L1(nPD-L1)陽性例は1例であり、nPD-L1陰性例38例においてmicroenvironmentalPD-L1(miPD-L1)低発現(5%未満)が11例、miPD-L1中等度発現(5-40%)が24例、miPD-L1高発現(40%以上)が3例みられた。中枢神経原発DLBCLにおけるPD-L1発現を検討した過去の報告ではnPD-L1陽性頻度は4%-37%、miPD-L1陽性頻度は20%-83%と、報告により差が見られる。その原因として、使用された抗PD-L1抗体の種類やカットオフ値、または人種の違いといった要因が考えられる。

本研究ではmiPD-L1高発現群では、他の2群と比較して有意に予後良好であった。悪性リンパ腫のにおける微小環境内のPD-L1発現が予後に与える影響に関しては、近年多くの報告がされている。Pollari, Ishikawa, McCordらにより、それぞれ精巣原発DLBCL、小腸原発DLBCL、節性DLBCLにおいて、微小環境内の非腫瘍細胞でのPDL1発現が予後良好因子であったことが報告されている。本研究でも中枢神経原発DLBCLにおいて同様の結果が得られたが、症例数が少ないため、さらに大きなコホートでの検討が必要である。

多変量解析では予後不良因子としてmiPD-L1陰性(5%未満)、深部構造への浸潤、PS2-4が抽出され、これらの3因子を組み合わせた予後評価モデルを作成した。予後因子の寡多に基づき2つの群に分類して予後を検討したところ、2群間でOS及びPFSに明確な有意差が認められた。この分類ではHD-MTX投与例に限定して評価を行ってもOS及びPFSに有意差がみられ、中枢神経原発DLBCLの予後評価に有用と考えられる。今回の研究では症例数が限られており、さらに症例数を増やしてこのモデルの妥当性の検証する必要がある。

miPD-L1が予後良好因子となる理由を検証するため、追加実験として免疫組織化学法を用いて腫瘍に浸潤するCD8陽性リンパ球(Tumor infiltrating lymphocytes, TILs)の数を測定した。miPD-L1の発現が高い群ほど有意にCD陽性TILs数が多く、またCD8陽性細胞数の多い症例は有意に予後良好であった。PD-L1の発現はCD8陽性細胞より放出されるIFN-γにより引き起こされることが報告されており、微小環境内のPD-L1発現が予後良好因子である理由として、CD8陽性リンパ球による腫瘍に対する免疫反応を反映している可能性が考えられる。

【結語】
中枢神経原発DLBCL39例の解析を行い、微小環境内の免疫細胞におけるPD-L1発現は有意な予後良好因子であるという結果が得られた。深部構造への浸潤、performance statusと組み合わせた予後評価モデルは中枢原発DLBCLの予後予測に有用と考えられるが、さらに多くの症例での検証が必要である。

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