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書き出し

膵癌における腫瘍浸潤リンパ球と患者の生存に関連した三次リンパ組織の統合分析

田中, 雄志 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Integrated analysis of tertiary lymphoid
structures in relation to tumor-infiltrating
lymphocytes and patient survival in pancreatic
ductal adenocarcinoma

田中, 雄志
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8700号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485884
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Integrated analysis of tertiary lymphoid structures in relation to
tumor-infiltrating lymphocytes and patient survival
in pancreatic ductal adenocarcinoma
膵癌における腫瘍浸潤リンパ球と患者の生存に関連した三次リンパ組織の統合分析

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
消化器内科学
(指導教員:児玉 裕三 教授)
田中

雄志

【背景】
膵癌は最も悪性度の高い癌の 1 つである。膵癌の発癌や進行、転移において、癌周囲微小環
境は重要な役割を果たしており、免疫担当細胞は癌周囲微小環境を構築する構成因子の 1 つ
である。癌周囲微小環境における抗腫瘍免疫反応の 1 つに、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor
infiltrating lymphocytes;TILs)が知られている。TILs を含めた癌周囲微小環境での抗腫瘍
免疫反応、さらに全身性の抗腫瘍免疫反応は、従来はリンパ節のような 2 次リンパ組織で行
われていると考えられてきた。しかし、近年 3 次リンパ組織(Tertiary lymphoid structure;
TLS)が、癌周囲微小環境内で形成されることが明らかとなってきた。TLS は腫瘍の辺縁や
内部にできる異所性リンパ組織であり、TLS 内部は中心に B 細胞ゾーン、周囲に T 細胞ゾー
ンを有する 2 次リンパ組織に類似した形態を呈している。大腸癌や乳癌、肺癌などでは、TLS
の存在が良好な予後と関連していたことが報告されているが、膵癌と TLS との関連性につい
ては十分な検討はなされていない。また、がん遺伝子である KRAS 遺伝子変異、がん抑制遺
伝子である TP53、CDKN2A/p16、SMAD4 の遺伝子変異は膵癌において頻度の高い遺伝子変
異であり、膵癌の発癌・進行過程にその蓄積が重要である。これらの遺伝子変異は膵癌に特徴
的な 4 大遺伝子変異として知られ、予後との関連が報告されている。さらに、抗腫瘍免疫を
抑制するメカニズムの 1 つに癌細胞における Programmed death ligand-1(PD-L1)発現が
知られている。しかしながら、TLS と 4 大遺伝子変異や PD-L1 発現との関連性に関しても明
らかではない。そこで、本研究では癌周囲微小環境における TLS と TILs、全身性免疫、臨床
的予後、治療反応性、遺伝子変異、PD-L1 発現との関連性につき、包括的な統合分析を行う
事を目的とした。
【方法】
2008 年 4 月から 2017 年 3 月の間に、神戸大学医学部附属病院で手術加療を受けた通常型膵
管癌 162 例を対象とした。全対象症例の年齢、性別、Body mass index(BMI)、家族歴、飲
酒喫煙歴、糖尿病歴、血液検査所見(好中球数、リンパ球数、腫瘍マーカー)などの患者背景
因子や、膵癌の臨床病期(UICC 8th)、組織型、 手術根治度、術前術後化学療法の有無、予
後などの治療データは診療録より取得した。TLS は全組織切片の hematoxylin-eosin (H&E)
染色を観察し、腫瘍の辺縁もしくは内部に 1 つ以上あるものを TLS ありと定義した。TILs は
腫瘍面積の一番多い切片で CD4、CD8、FOXP3、CD45RO の免疫組織化学染色を行い、同
切片のうちそれぞれ 5mm 以上離れて 3 カ所でリンパ球数を Image J software (Java image
processing program inspired by National Institute of Health (NIH), USA)を用いて平均値
を測定し、中央値で高値群・低値群の 2 群に分類した。PD-L1 は免疫組織化学染色を行い、
腫瘍の細胞膜における発現の有無を評価した。遺伝子変異の検索は、手術検体の formalinfixed paraffin-embedded(FFPE)サンプルから DNA を抽出し、カスタムパネルターゲット
シークエンスを行った。さらに TP53、CDKN2A/p16、SMAD4 に関しては、droplet digital
PCR(DDPCR)で Copy number variation(CNV)を検索し、最終的には免疫組織化学染色
の結果とシークエンス・DDPCR の結果を統合して遺伝子変異の有無を判定した。また、膵癌

腫瘍内の Interferon (IFN)-gamma と Interleukin (IL)-2 の発現を検索するため、TLS を有す
る群と認めない群でそれぞれ 5 例ずつ In situ hybridization(ISH)を行った。さらに IFNgamma に関しては、発現している細胞を確認する確認で、CD4 および CD8 との 2 重染色を
行った。In vitro で、IFN-gamma および IL-2 と抗がん剤(5-fluorouracil;5-FU)との相乗
効果を検討するために、膵癌細胞株(AsPC-1)を用いて Apoptosis assay を行い、投与 1 日
後、3 日後、5 日後、7 日後のアポトーシス細胞の割合を測定した。疾患特異的生存期間の解析
はカプランマイヤー法、コックス比例ハザード分析を用い、群間の比較には、Fisher's exact test
及びロジスティック回帰分析を用いた。多変量解析は、ステージ・組織型・R 因子・術前/術後化
学療法の有無・遺伝子変異の有無を調整因子として解析を行った。ISH におけるサイトカインの
発現はウェルチ t 検定、Apoptosis assay における各群の比較にはダネット検定を用いた。P 値
0.05 以下を有意水準とし、すべての統計学的解析は JMP ver. 12 ソフトウェア を用いて行った。

【結果】
通常型膵管癌 162 例のうち、112 例(69.1%)に TLS を認めた。112 例のうち、85 例(75.9%)
は TLS を辺縁のみに認めたが、27 例(24.1%)は腫瘍辺縁だけではなく腫瘍内部にも TLS
を認めた。患者背景因子において TLS を有する群は、喫煙(P=0.02)
、CA19-9 基準値範囲
内(P=0.02)、PD-L1 発現(P=0.002)と関連を認め、さらに T1 stage で多く認める傾向に
あった(P=0.04)。4 大遺伝子変異は、KRAS(92.6%)
、TP53(68.5%)、CDKN2A/p16(64.2%)


SMAD4(38.2%)の順に多く認め、既報と同様であった。TLS と 4 大遺伝子変異との関連は
認めなかったが、KRAS 変異がある群において KRASG12D 変異があると TLS を認めない傾向
にあった(P=0.044)。多変量ロジスティック回帰分析において、TLS は CD4 陽性 TIL 高値
(Odds Ratio 3.50, 95%CI 1.65-7.80, P=0.001)、CD8 陽性 TIL 高値(Odds Ratio 11.0, 95%CI
4.57-29.7, P<0.0001)、CD45RO 陽性 TIL 高値(Odds Ratio 2.64, 95%CI 1.24-5.80, P=0.01)、
および血中リンパ球高値(Odds Ratio 2.46, 95%CI 1.21-5.12, P=0.01)と関連を認めた。観
察期間中央値は 26 ヵ月(1 ヵ月~122 か月)であり、TLS を有する群は TLS を認めない群
と比較し、有意に予後が延長した(Log rank test;P<0.0001)
。さらに TLS を有する群のう
ち、腫瘍辺縁および内部に TLS を有する群は、腫瘍辺縁のみに TLS を有する群と比較し、有
意に良好な予後を示した(Log rank test,P=0.02)
。コックス比例ハザード分析においても、
TLS は独立して良好な予後を示した(Hazard Ratio 0.37, 95%CI 0.25-0.56, P<0.0001)。次
に、
TLS の有無と術後化学療法との関連性を検討するために、S-1 治療群
(74 例)
・Gemcitabine
群治療(43 例)
・化学療法を施行していない群(45 例)の 3 群に分類した。TLS を有さない
群では S-1 投与による予後延長効果を認めなかったが(Log rank test,P=0.50)
、TLS を有
する群では S-1 投与による予後延長効果を認めた(Log rank test,P=0.02)
。3 群の背景因
子において、化学療法を施行していない群で有意に年齢が高く(P=0.007)
、BMI が低く(P
=0.02)
、Gemcitabine 治療群で喫煙歴のある症例が多く(P=0.006)
、R1 切除が多かった(P
=0.003)
。これら 4 つの因子で調整した多変量コックス比例ハザード分析の結果、TLS は、
S-1 治療群において予後延長効果が示された(Hazard Ratio 0.51, 95%CI 0.26-0.97, P=0.04)。

さらに、TLS の S-1 投与による予後延長効果のメカニズムを解析するために TLS を有する群
と認めない群で、IFN-gamma および IL-2 の ISH を行った。TLS を有する群では、認めな
い群と比較し、IFN-gamma および IL-2 の発現が有意に多かった(P<0.05)。さらに、ISH
と免疫組織化学染色の 2 重染色を行い、IFN-gamma は CD4 陽性 T 細胞および CD8 陽性 T
細胞と共発現していることが示された。次に膵癌細胞株(AsPC-1)を用いて、IFN-gamma 単
独・IL-2 単独・5-FU 単独・IFN-gamma+5-FU・IL-2+5-FU の投与を行い、Apoptosis assay
を行った。7 日目のアポトーシス細胞の割合はコントロール群よりも IFN-gamma および 5FU 投与群で有意に高く(P<0.01)、さらに IFN-gamma+5-FU の併用療法は、IFN-gamma 単
独および5-FU 単独よりも有意に高く(P<0.001)
、IFN-gamma と 5-FU の腫瘍抑制におけ
る相乗効果が示された。
【考察】
膵癌の発癌や進行、転移において、抗腫瘍免疫反応は重要な要素の 1 つであることがよく知
られている。癌周囲微小環境における抗腫瘍免疫として TIL は重要であるが、腫瘍に浸潤す
るリンパ球の数だけではなく、種類も臨床転帰にとって重要である。 CD8 陽性細胞傷害性 T
細胞は腫瘍の排除に不可欠であり、CD4 陽性ヘルパー T 細胞はサイトカインの分泌と抗原
提示細胞の活性化を通じて抗原提示を促進する。CD45RO 陽性 T 細胞は、メモリー T 細胞
として細胞性免疫応答中に生成され、抗原が除去された後も長期間生存し、2 回目以降の抗
原への曝露に対して、より迅速で増幅された応答を誘導する役割を果たす。TLS は癌周囲微
小環境内で、このようなエフェクターT細胞の分化において重要な役割を果たす。しかしなが
ら、微小環境内の免疫機構と遺伝子変異との関連性や、化学療法との相乗効果には十分解明さ
れていない。本研究では、膵癌の TLS を介した腫瘍免疫機構の統合的解析を行った。本研究
では、TLS と 4 大遺伝子変異との関連は認めなかったが、KRAS 変異アレルの一つである

KRASG12D 変異や、腫瘍細胞の PD-L1 発現があると TLS 形成が阻害される傾向にあった。
KRASG12D 変異は、IL-10 や TGF-βなど、抗腫瘍免疫を抑制するようなサイトカインを
upregulate することが報告されている。また、癌免疫サイクルを阻害するメカニズムの 1 つ
として、免疫チェックポイントが知られている。腫瘍細胞に PD-L1 が高発現すると、免疫寛
容が引き起こされ、有効な免疫サイクルが誘導されない。KRASG12D 変異や PD-L1 発現によ
る抗腫瘍免疫の抑制によって、TLS 形成が阻害されたのではないかと考えられた。本研究で
は、膵癌の癌周囲微小環境に TLS が存在すると、CD4 陽性 T 細胞や CD8 陽性 T 細胞、
CD45RO 陽性 T 細胞などのリンパ球が腫瘍内に高度に浸潤しており、CD4 陽性 T 細胞・CD8
陽性 T 細胞における IFN-gamma や IL-2 の発現が高値であった。また血中のリンパ球数も高
値であり、癌周囲微小環境および全身の抗腫瘍免疫が活性化されている事が示唆され、それ
が、生存期間の延長に寄与したと考えられた。さらには、TLS がある患者では、術後補助化
学療法として 5-FU のプロドラックである S-1 投与による予後延長効果を認めた。抗がん剤
との相乗効果を確認するために、膵癌細胞株を用いた in vitro の実験を行い、IFN-gamma 単
独および 5-FU 単独よりもそれらの併用療法の方が、より多くのアポトーシスが誘導される

事を明らかにした。TLS は通常の診療でよく用いる H&E 染色で同定し得る簡便なマーカー
であり、膵癌の免疫状態、予後を予測する上で有用である可能性が示唆された。

神戸大学大学院医学研究科(博士課程)



甲 第 3302号



果 の 要 旨


受付番号

文 審 査 の結

田中雄志

I
n
t
eg
r
a
t
eda
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a
lysi
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論文題目

Ti
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Di
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i
on

t
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ladenocarci
noma
duc
膵癌における腫瘍浸潤リンパ球と患者の生存に関連した三次リンパ
組織の統合分析

主 査

Ch
i
ef
Exami
ner
審査委員

副 査

Exam
i
ner

Vi
c
e-exam
i
ner

副 査
Vi
c
e-exam
i
ner



摩齊

]叶;ょ

釘浣[


要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)

【背景】

膵癌は最も悪性度の高い癌の 1つで、発癌、進行、転移において癌周囲微小環境 (
TME)

は重要な役割を担い、免疫担当細胞は TMEを構築する構成因子の 1つである。 TMEでは抗腫瘍

TILs)が知られており、 TILsを含む TMEでの抗腫瘍免疫反
免疫反応を司る腫瘍浸潤リンパ球 (
応や全身性の抗腫瘍免疫反応はリンパ節等の 2次リンパ組織で見られるが、近年 3次リンパ組織

(
TLS)が TME内で形成されることが報告された。 TLSは腫瘍の辺縁や内部に見られる異所性リ
ンパ組織であり 、その中心に B細胞ゾーン、周囲に T細胞 ゾーンを有する 2次リ ンパ組織に類似
した形態を呈し、大腸癌、乳癌、肺癌などで TLSの存在が良好な予後と関連することが示されて
、TP53
、CDKN2Al
p1
6、
いるが、膵癌と TLSとの関連性については不明な点が多い。また、 KRAS

SMAD4の変異は膵癌において頻度の高い 4大遺伝子変異で、予後との関連が示されている。さら
-Ll発現があるが、 TLSと 4大
に、抗腫瘍免疫を抑制するメカニズムの 1つに癌細胞における PD
ILs、全身性免疫、
造伝子変異や PD-Llとの関連も不明である 。本研究では TMEにおける TLSと T
臨床的予後、治療反応性、遺伝子変異、 PD-Ll発現との関連につき、包括的な統合分析を行った。
【方法】 2
008年 4月∼ 2017年 3月に神戸大学医学部附属病院で手術加療を受けた通常型膵管癌
1
6
2例を対象とし、全症例の年齢、性別、 BMI、家族歴、飲酒喫煙歴、糖尿病歴、血液検査所見、
膵癌の臨床病期、組織型、 手術根治度、術前術後化学療法の有無、予後などのデータを取得した。
TLSは全組織切片の H&E染色を観察し、腫瘍の辺縁もしくは内部に 1つ以上あるものを TLS有
りと定義した。TIL
sは腫瘍面積の一番多い切片で CD4、CD8、FOXP3、CD45ROの免疫組織化
学染色を行い、同切片で 5
m m以上離れて 3カ所でリンパ球数を Imag
eJ s
o
f
t
wareを用いて平均
値を測定し、中央値で高値群 ・低値群の 2群に分類した。 PDLlは免疫組織化学染色により腫瘍細
胞での発現の有無を解析した。迪伝子変異の検索は、手術検体の FFPEサンプルから DNAを抽出
しターゲットシークエンスを行った。 さらに TP53
、C
DKN2
A
,
p1
6、SMAD4については、コピー
数多型を解析し、免疫組織化学染色、シークエンスの結果と統合して変異の有無を判定した。また、
FN、
y I
L
2の発現について TLS を有する群と認めない群で 5例ずつ i
ns
i
t
u
膵癌腫瘍内の I
hyb
r
i
d
iz
a
t
i
on (
I
S
H
) により検索した。IFN-yに関しては、 CD4及び CD8の 2重染色を行った。
また IFN
y及び IL
2と抗がん剤 (
5
F
U
) の相乗効果を検討するために、膵癌細胞株 (
A
s
PC
-1
)
を用いてアポトーシス解析を行い、投与後のアポトーシス細胞の割合を測定した。統計学的解析は
常法を用いて適切に実施した。
6
2例 中 1
1
2例に TLSを認め、うち 85例は TLSを辺縁のみに認めたが、
【結果】 通常型膵管癌 1
27例は腫瘍辺縁に加え腫瘍内部にも TLSを認めた。患者背景因子で TLSを有する群は、喫煙、
CA19-9基準値範囲内、 PD-Ll発現と関連を認めた。TLSと 4大遺伝子変異との関連は認めず、
KRAS変異では K凡4
伊 l2D変異があると TLSを認めない傾向にあった。TLSは C
D4陽性 TIL高

、 CD8陽性 TIL高値、CD45RO陽性 TIL高値、血中リンパ球高値と関連を認め、 TLSを有す
る群は TLSを認めない群に比べ、有意に予後が延長した。また腫瘍辺縁および内部に TLSを有す
る群は、腫瘍辺縁のみに TLSを有する群と比べ、有意に良好な予後を示した。次に、 TLSの有無
と術後化学療法との関連性を検討するために、 S- 1 治療群 •Ge mcitabine 群治療 ・ 化学療法を施行

していない群に分けて検討した
。 TLSを有さない群では S

1投与による予後延長効果を認めなかっ
1投与による予後延長を認めた
。 また、TLSを有する群と認めない
たが、 TLSを有する群では S-

群で、I
FN-、
y I
L
2の ISHを行ったところ 、TLSを有する群では、認めない群と比べ、I
F
N
・、
y

I
L
2の発現が有意に多かった。また 、ISHと免疫組織化学染色の 2重染色から 、I
F
N
・ yは CD4陽
sPC-1を用
性 T細胞および CD8陽性 T細胞と共発現して いることが示された。次に膵癌細胞株 A
い て 、 IFN· y単独 •IL-2 単独 . 5-FU 単独・ IFN-

y+5-FU• I
L-2+5-FUの投与を行い
、 アポ トーシ

F
N
・ yおよび 5-FU投与
ス解析を行ったところ 、アポトーシス細胞の割合はコン トロール群 よりも I
群で有意に高く 、 IFN· y と 5-FU の併用療 法 は 、 IFN· y単独 •5-FU 単独よりも有意に高かった。

【考察】 膵癌の発癌や進行、転移において抗腫瘍免疫反応は重要な役割を担い、 TMEにおける 抗
腫瘍免疫で TILのサブセッ トも臨床転帰に重要である。

CD8陽性キラー T細胞は腫瘍の排除に、

CD4陽f生ヘルパーT 細胞はサイ トカイン分泌 と抗原提示細胞の活性化 を通して抗原提示を促進す

。 CD45RO 陽性メモリーT 細胞は抗原除去後も長期間生存し、 2回目以降の抗原曝露により迅
速で増幅された応答を誘導する。TLSは
、 TME内でこのようなエフェクター T細胞の分化に重要
だが 、TME内の免疫機構と遺伝子変異との関連や化学療法との相乗効果は十分解明されて いない。
本研究では 、膵癌の TLSを介した腫瘍免疫機構の統合的解析を行った o KRAS変異アレルの一つ
である KRA


1
2D変異や腫瘍細胞の

PD-Ll発現があると TLS形成が阻害される傾向にあった。

KRA
SJ12D変異は I
L
1
0や TGF-f3など抗腫瘍免疫を抑制するサイトカインを upr
eg
u
l
a
t
eし、腫瘍
細胞での PD-Llの高発現は抗腫瘍免疫応答を抑制し 、TLS形成が阻害されたと想定される。また、
膵癌の TMEに TLSが存在すると 、CD4陽性 T細胞、CD8陽性 T細胞、CD45RO陽性 T細胞な
どが腫瘍 内 に浸潤し 、 CD4 陽性 T 細胞 •

CD8陽性 T細胞では I
F
N
・ yや I
L
2を高発現していた。

血中のリンパ球数も面値であり、 TME・全身の抗腫瘍免疫が活性化 され、生存期間の延長に寄与
したと考えられる。また、 TLSがある患者では、術後補助化学療法として 5-FUのプロドラックで


l投与による予後延長を認めた。抗がん剤との相乗効果を確認するために 、膵癌細胞株を用
ある S
F
N
・ y単独、5-FU単独よりも両者の併用療法が、より多くのアポトーシス
いて解析 したところ、 I
を誘導出来ることを見出した。TLSは通常診療で用いる H&E染色で同定できる簡便なマーカー
であり 、膵癌の免疫状態、予後を予測する上で有用である可能性が示唆された。
本研究は 、
膵癌患者の癌周囲微小環境 (TME) における 3次リンパ組織 (
T
L
S
)と腫瘍浸潤リンパ
球 (
T
I
Ls
)
、全身性免疫、臨床的予後、遠伝子変異、 PD-Ll発現などとの関連について包括的な統

sの T細
合解析を行ったものであるが、従来ほとんど行われなかった TMEにおける TLSでの TIL
胞各サプセットの浸潤、 I
F
N
・y• I
L
2の高発現や抗腫瘍免疫応答の活性化 と臨床的予後延長効果と
の関連、さらには術後補助化学療法における S

l投与による予後延長効果などとの関連につ いて重
要な知見を得たものとして価値ある集積であると認める 。 よって、本研究者は博士(医学)の学
位を得る資格があると認める。

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