イオンビーム環境に関する計算機実験
概要
研究目的(Research Objective):
宇宙機搭載電気推進器からのイオンビーム放出時に宇宙機とその環境との電位差によりビームプラズマが加速され宇宙機へと流入することがある。本研究では、特にイオンビームの電荷中和のために放出される電子の宇宙機太陽電池パネルへの流入量及び宇宙機帯電値の評価を行うことが目的である。
計算手法(Computational Aspects):
本研究では、ボルツマン近似を用いた電子流体モデルによる電位計算ソルバー(Bソルバー)を作成し、当研究室グループで開発された、PICモデルによる宇宙機帯電解析粒子シミュレーションコード(EMSES)に組み込むことで新たなシミュレータを開発した。また、このシミュレータの高速化のためにOpenMPを用いたスレッド並列、MPIを用いたプロセス並列の導入を行った。
研究成果(Accomplishments):
2003年に打ち上げられた技術試験衛星Smart-1をモデルとした推進用イオンビーム解析を行い、宇宙機の電位値及び太陽電池パネル回転角を変化させながらパネルに流入する中和電子量の評価を行い、宇宙機電位の推定を低軌道及び高軌道のそれぞれの条件下で行った。シミュレーションモデルを図1に示す。
シミュレーション結果から、低軌道では宇宙機のSAP表面がラム側の場合、定常電位が-30Vから・25V、SAP裏面がラム側の場合、-10Vから-5Vとなった。図2に、低軌道における宇宙機定常電位と流入電流の関係を示すとともに、定常電位についてsmart1電位との比較を示す。
上図、下図はそれぞれラム側が太陽電池パネル表面及び裏側の場合について示す。流入電流が0になる定常電位はそれぞれ約-28Vと約-10Vとなり、Smart1電圧と近い結果になった。