プラズモイド型乱流磁気リコネクションの磁気流体シミュレーション研究
概要
プラズモイド型乱流磁気リコネクションの
磁気流体シミュレーション研究
Magnetohydrodynamic simulation of plasmoid-dominated turbulent reconnection
研究代表者:銭谷誠司(神戸大学・都市安全研究センター・特命准教授)
zenitani@port.kobe-u.ac.jp
研究目的 (Research Objective):
磁気リコネクションは宇宙・天体プラズマ中の磁気エネルギーを解放する重要な物
理素過程である。磁気流体( MHD )近似のもとでは、磁気リコネクションの基本的
な性質は Sweet=Parker 理論モデルによって長年議論されてきた。しかし最近、細長
く伸びた Sweet=Parker リコネクション領域が大量のミニ・リコネクション領域と磁
気島(プラズモイド)に分裂し、乱流状態に移行することがわかってきた。本研究で
は、このような「プラズモイド型乱流リコネクション」の基礎的な性質を大規模な数
値シミュレーションを通して理解することを目指す。さらに、こうした研究と並行し
てシミュレーションコードのそのものの改良・改善を図る。
計算手法 (Computational Aspects):
研究代表者が開発・公開している「 OpenMHD 」コードを利用する。 OpenMHD は
2次元 MHD 問題を有限体積法で解く。 MPI を用いて 500 ∼ 2400 コアの並列計算を
実行する。最新版では、データを GPU にオフロードして計算することもできる。
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研究成果(Accomplishments
リコネクションの 2つの上流領域で、プラズマ密度が不揃いな「密度非対称」条件
下でのプラズモイド型乱流リコネクションの数値シミュレーションを行った。昨年度
までの研究で、磁気リコネクションの進行速度(リコネクション・レート)が理論予
想に従ってスケールすることや、密度勾配によってプラズモイドが回転することがわ
かっていた [2]
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図 1 密度非対称磁気リコネクションの実効リコネクションレート(縦軸)と
圧縮性を考慮した修正スケール則(横軸)との比例関係
-1-
今年度は、このパラメーターサーベイを拡張して多数の計算を実行し、その結果を
吟味した結果、プラズマの圧縮性を考慮した新しいスケール則を用いると予測精度が
良くなることを発見した(図 1)。
計算コード OpenMHD の改良も進んだ。 OpenMP の記述を工夫してスレッド数が
多い場合の安定性を向上させた。さらに OpenMHD の GPU および MPI-GPU 環境
EPYC プロセッ
での利用ノウハウも蓄積した。図 2 は
、 AMD 社のマルチコア CPU (
K80, P100, …
サ 7282 :16 コアおよび 7452 :32 コア)および NVIDIA 社の GPU (
A100 )で OpenMHD の実行時間を比較した図である。ノードあたり(ニ電力あたり)
1
で考えると、 GPU はマルチコア CPU と比べて概ね 1/2 ∼オーダー高速であること
がわかる。ローエンドの Tesla K80 や P100 は、無料クラウドサービス Google
Colaboratory (Colab) でも利用できる。 2022 年 9 月にオンラインで開催した国際シ
ミュレーションスクールでは、我々は Colab と OpenMHD を使った実行環境を提供
した(口頭発表 #6。
) A100 は京大新システムにも導入された GPU である。今後、
システム G を利用すれば、大規模な計算を圧倒的短時間で実行できるはずである。
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図 2 磁気リコネクションテスト問題のベンチマークテスト。
各実行環境(横軸)での実行時間(縦軸)を示す。
公表状況(Publications)::
((論文))
1. Zenitani, S. and S. Nakano, Loading a relativistic Kappa distribution in particle
simulations, Physics of Plasmas 29, 113904 (2022)
2. 山本百華、宇宙プラズマ中の密度非対称条件下での磁気リコネクションの MHD
シミュレーション(神戸大学大学院工学研究科 2022 年修士論文)
((口頭))
3. Zenitani, S., Yamamoto, M., and T. Miyoshi, Plasmoid-dominated turbulent reconnection
in symmetric and asymmetric systems, US-Japan Workshop on Magnetic Reconnection
-2-
4.
5.
6.
7.
(MR2022), Monterey, USA, May 2022 (招待講演)
Zenitani, S., Yamamoto, M., and T. Miyoshi, Plasmoid-dominated turbulent reconnection
in symmetric and asymmetric systems, EGU General Assembly 2022, Vienna, Austria,
May 2022
Zenitani, S., Yamamoto, M., and T. ...