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Potential utility of new surgical hemostatic film using Hydrofit®: a preliminary study.

羽鳥, 恭平 ハトリ, キョウヘイ Hatori, Kyohei 群馬大学

2021.03.23

概要

(1)研究の背景と目的
手術において、出血の有無は手術の成否を左右する重要な要因であり、手術における主要合併症の一つである。大量輸血を要した手術では、周術期の死亡率が増えるという報告もある。心臓血管血管外科分野の手術においては、希釈体外循環や抗凝固薬の使用、低体温循環管理の影響で重度の血液凝固障害を引き起こすため、しばしば止血操作に難渋することがある。これまで様々な止血材料が開発され、臨床的に使用されてきた(酸化セルロースやヒトフィブリン・トロンビン由来止血材料等)が、いずれの止血材も十分な止血性能を発揮するためには、①患者自身の血液凝固能が発揮されなければならない。血液凝固障害がある場合、これらの止血剤は役に立たない。更に、これらの従来の止血材料は、②心拍動や動脈拍動のない出血点で、③術野がある程度乾いている状態でないと使うことができない。

我々が注目した止血剤 Hydrofit🄬(一般名称:マツダイト、三洋化成工業、京都、日本)は、1986年に本邦の松田先生によって開発された画期的な止血剤である。Hydrofit🄬は粘稠性のウレタンプレポリマーであり、水と反応することでCO2を放出して重合、ウレタンポリマーとなる。このウレタンポリマーがウレタン樹脂フィルムを形成するため、物理的な止血が可能となる。
(1) OCN– R– NCO + H2O → [HOCONH-R-NCO] → H2N-R-NCO + CO2.
(2) nOCN-R-NCO + H2N-R-NCO + (n+1)H2O → H2N-R-(NHCONH-R-)n-NH2 + (N+1)CO2.
Hydrofit🄬は、①重合反応に血液凝固能を必要とせず、②ウレタン樹脂が弾力性を持つため動脈拍動に追従し、③血液中のH2Oと反応してウレタンポリマーを形成し始めるため、出血点にポイントを当てた止血が可能となる。Hydrofit🄬 の使い方は、シリンジ内に充填された粘稠な液体(ウレタンプレポリマー)をシリコンシートに乗せ、出血点に当て、指でシリコンシート越しにウレタンプレポリマーを3分間押さえて、重合反応が完了するのを待ち、止血するというものである。2014年より日本国内で販売が開始、胸部大血管手術で使用することができる。

Hydrofit🄬は理論的には良好な止血効果をもたらすが、実臨床では煩わしさを感じることもある。添付のシリコンシートの操作性が悪いこと、異物であり体内に残すことができないことである。このシリコンシートは、ウレタンポリマーが術者の指を含め止血部位以外のところに接着するのを予防する目的で使うが、樹脂化したウレタンポリマーとシリコンシートがある程度接着してしまう。止血完了後にシリコンシートを剥がす際に、ウレタンポリマーも一緒になって止血点から剥がれ、しばしば再出血を起こす。

今回我々は、シリコンシートの代わりとなる新たな止血フィルムを開発した。ハイドロフィットをあらかじめ反応させてウレタンポリマーのフィルム(Hydrofit film)とした。このフィルムはハイドロフィットそのものなので体内留置が可能である。このハイドロフィットフィルムがシリコンシートの代用となるのではないかと考え、止血性能の評価実験を行った。

(2)研究方法
体外設置型補助人工心臓及び塩化ビニルチューブ、圧モニターセンサー、人工血管を用いて拍動流回路を作成した。回路内を水で満たし、補助人工心臓装置を駆動させ、収縮期圧が130mmHg以上になるように調整した。人工血管を18G針で穿刺して出血点とした。この出血点からの水の漏出量を3分間測り、その後にシリコンシートを用いた通常の方法で止血(止水)を試みた(従来法)。同様にハイドロフィットフィルムを用いた方法でも止血を試みた(新方法)。止血操作後の3分間の漏水量を測定して5ml/3分間以下のものを、止血成功と定義した。これらの2つの方法で止血の成功率に差が出るのかどうかを比較検討した。①添付文章通りの3分間の止血操作及び②1分間と時間を短縮して実験を行った。また、漏水量に関しても比較検討を行った。

(3)結果
①180秒(3分間)でそれぞれ15回ずつ止血実験を行った。Hydrofit® film法は 14回(93.3%)止血に成功した。一方のシリコンシート法でもシリコンシートをはがす前では 13回(86.4%)で止血成功した。しかしながら、シリコンシートをはがす操作によりそのうちの3回は再出血をきたし、最終的な止血成功は10回(66.5%)であった。出血量に関しては(Hydrofit film:シリコンシート)=( 0[0- 0]: 0[0- 14])(p=0.008)と、Hydrofit® film法が少ない傾向にあった。②続いて60秒間(1分間)での止血実験をそれぞれ20回ずつ行った。Hydrofit film法は 17回(85%)止血に成功した。一方のシリコンシート法ではシリコンシートをはがす前で 10回(50%)で止血成功した(p=0.041)が、シリコンシートをはがした後では7回(35%)でしか止血は成功とならず、H ydrofit® film法の方が止血効果が高いと考えられた(p=0.003)。漏水量に関しても(Hydrofit film:シリコンシート)=( 0[0- 2.5]: 23.5[0- 45.0])(p=0.016)と差を認めた。実験で用いたHy drofit® filmの止血点を顕微鏡で観察したところ、フィルムとハイドロフィットとの間には境目がなく、一体となり接着して出血点を塞いでいるのが観察された。

(4)結論
今回模擬回路モデルを用いて、ハイドロフィットフィルムの良好な止血性能を示すことができた。また、止血時間短縮の可能性も示された。しかしながら、フィルムの厚さが適切であるかの検討 は十分でなく、また本実験では非生体環境での実験に過ぎない。臨床での使用を目指して、さら なる検討・実験を重ねる必要があると考えられた。

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参考文献

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