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Pancreatic Fat and Body Composition Measurements by Computed Tomography are Associated with Pancreatic Fistula After Pancreatectomy

田中, 克仁 名古屋大学

2021.07.19

概要

【緒言】
 膵切除は比較的安全に行われるようになったが、依然として術後合併症率は高い。中でも術後膵液瘻(Postoperative pancreatic fistula: POPF)は術後大出血や敗血症を引き起こし致死的合併症の原因となることに加え、入院期間を延長させ、医療経済的にも負担である。POPFの予測因子としてこれまでに膵硬度や脂肪膵などが報告されているが、膵硬度は術中判断よる定性的な因子であり、客観性に欠ける。
 本研究では、脂肪膵における膵の脂肪率を、術前CT画像から定量的に評価することが可能かを検討した。さらに同じ術前CT画像を用いて、測定可能な複数の体組成値を測定し、POPFの予測因子についても検討した。なお、POPFの定義は、国際基準である International Study Group on Pancreatic Surgery(ISGPS)分類を用いた。

【対象および方法】
 2016 年 1 月~2017 年 12 月に、消化器外科学教室において膵切除術を施行された150 例を対象とした。術前 30 日以内に撮影された CT 画像を、SYNAPSE VINCENT (FUJIFILM Corporation)を用いて解析し、膵脂肪率及び体組成値を測定した。あらかじめ設定した各測定因子について、その中央値を閾値として二分し、POPF 発生との相関を比例ハザードモデルにて検討し、有意な予測因子の抽出を試みた。
 なお、術前 CT 画像による膵脂肪率測定値の妥当性について、実際の膵切除膵検体の HE スライドを用いて組織学的に検証した。具体的には、測定した膵脂肪率(膵脂肪量/膵体積)が高値である 10 例、低値である 10 例を抽出し、それぞれの切除膵検体スライドを顕微鏡下に観察した。小葉内、小葉間の脂肪細胞をそれぞれ 0 点: 脂肪占拠率 10%未満、1 点: 脂肪占拠率 10%以上 30%未満、2 点: 脂肪占拠率 30%以上とスコアリングし、さらに症例毎に小葉内、小葉間それぞれのスコアリング値を合計して、0-2点: 正常膵、3-4 点: 脂肪膵と判定した。
 二群間の比較には Fisher の正確検定を用い、多変量解析には Akaike’s information criterion を用いた。すべての統計解析は JMP 13 ソフトウェアで行い、P 値は 0.05 未満を統計学的有意差ありとした。

【結果】
1. 対象患者背景は平均年齢が 66 歳、男性 97 例・女性 53 例、膵癌 66 例・他の膵疾患 84 例で、施行術式は膵頭十二指腸切除術 86 例・尾側膵切除術 61 例・膵中央切除術 3 例、術中所見として正常膵 104 例・硬化膵 46 例であった。POPF grade B/Cに該当する POPF 陽性症例は 30 例(20.0%)であった。
2. 膵脂肪率を中央値である 4.8%以上・未満の 2 群にわけ検討すると、膵脂肪率≧4.8%は BMI 高値の他に、CT 上の複数の肥満関連因子高値(腹壁の厚み・腹腔内脂肪の厚み・腎背部脂肪の厚み・体表脂肪面積・内臓脂肪面積・内臓脂肪面積/骨格筋面積比)と相関していた。
3. POPF grade B/C 発生に有意に相関する術前因子としては、男性、BMI 高値に加え、膵脂肪率≧4.8%、さらには CT 上の肥満関連因子(腎背部脂肪の厚み・腹腔内脂肪の厚み・腹囲・内臓脂肪面積/骨格筋面積比)が挙げられた。
4. POPF grade B/C 発生に関して CT 画像から測定した肥満関連因子のみで多変量解析を行うと、内臓脂肪面積/骨格筋面積比≧1.9(Odds Ratio: 4.28, P<0.01)が唯一の独立した予測因子となった。
5. 術中所見で正常膵であった 104 症(69.3%)に限定して、同様に grade B/C POPF 発生の予測因子を検討しても、内臓脂肪面積/骨格筋面積比≧1.9(Odds Ratio: 5.67, P<0.001)が唯一の独立した予測因子となった。
6. 術前 CT 画像から膵脂肪率低値群と測定された症例の切除検体スライドは全例が脂肪膵と判定されなかった一方で、膵脂肪率高値群と測定された切除検体スライドは 8 例(80%)の症例で脂肪膵と判定された(P<0.01)。

【考察】
 術前に撮影された CT 画像から膵内脂肪量の測定は可能であり、膵脂肪率高値と判定された症例は、組織学的にも妥当性が認められた。しかし、膵脂肪率は POPF における多変量解析では予測因子とはならなかった。その原因として、膵硬度の定量化には膵脂肪量だけでは不十分であり、線維化などの他の因子も加味する必要があると考えられた。
 本研究では、内臓脂肪面積/骨格筋面積比のみが POPF の予測因子となり、正常膵に限定した場合においても同様であった。内臓脂肪は炎症性サイトカインや、慢性炎症、インスリン抵抗性などとの関連が報告されており、手術操作を難しくするだけでなくそれらが術後合併症を増加させている可能性が考えられた。
 この内臓脂肪面積/骨格筋面積比は、Sarcopenic Obesity の存在を示唆する指標である。近年膵癌治療においては、長期術前療法を要する症例が増えている。この期間中に積極的な運動・栄養介入を行うことで筋力を維持しながら体組成を改善させることが内臓脂肪面積/骨格筋面積比を改善し、POPF をはじめとする術後合併症の逓減につながる可能性が考えられた。
 膵脂肪量や体組成は、すべての患者が術前に施行される CT 画像を用いることでさらなる被爆や医療コストをかけることなく簡便に測定が可能である。術前に施行された CT 画像から体組成や体脂肪を評価することが、術前に外科医にも患者にも有益な情報を提供できる一助となると考えられた。

【結論】
 術前 CT 画像にから膵脂肪量を測定することは可能であったが、単独では POPF の有意な予測因子とはならなかった。一方、内臓脂肪面積/骨格筋面積比は、POPF の有意な予測因子であり、さらに正常膵においても同様の結果であり、POPF の予測に有用である可能性が示唆された。

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