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大学・研究所にある論文を検索できる 「交尾器形態の生殖的形質置換とその進化過程」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

交尾器形態の生殖的形質置換とその進化過程

西村, 太良 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Reproductive character displacement in genital
morphology and its underlying evolutionary
processes

西村, 太良
(Degree)
博士(理学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Date of Publication)
2025-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8545号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482293
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(別紙様式 4)
論 文 内 容 の 要 旨
氏 名

西村太良

専 攻

人間環境学専攻

指導教員氏名

高見泰興

論文題目(外国語の場合は,その和訳を併記すること 。)

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(交尾器形態の生殖的形質置換とその進化過程)

論文要旨
種分化は生物多様性を生み出す根源的過程であり,種 分化をもたらす生殖隔離の進化につ
いての研究は生物多様性の起源を理解するために重要 である.種分化のプロセスは,種間・集団間
の遺伝子の交換が完全に妨げられた時に完了するため ,生殖隔離はただ生じるだけでなく十分な強
さにまで進化する必要がある.このことから,種分化 の研究では,どのようなメカニズムで生殖隔
離が世代を経て'十分な強さまで進化するか,強化されていくかに焦点が当てられている.これは生
殖隔離の強化 (
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)として知られている.強化のプロセスは二つの段階に分けることができ
る.まず祖先集団が異所的に分化し,集団間の遺伝子交換に対する内的/外的な生殖的隔離障壁を蓄
積する.その後,分化した集団が二次的に接触した際 に,それまでに蓄積されてきた生殖隔離に応
じて,不適応な生態的,行動的種間相互作用に対する直接的な淘汰(接合前生殖隔離と関連)や,遺伝
的に不適応な雑種形成に対する間接的な淘汰(接合後生殖隔離と関連)が集団間にさらなる形質分化
をもたらし,生殖隔離の強化が促進される.このよう な強化は,二次的接触時に接合前生殖隔離が
十分に強くない状態から,既存の接合後生殖隔離に関連した淘汰(強化淘汰)によって接合前隔離が増
加するものと定義されている. しかし,強化が種分化へもたらす寄与については,いまだ充分に明
らかにされていない.強化のプロセスが生じているこ とを示す形質分化のパターンとして,生殖的
形質置換がある.生殖的形質置換とは,異種的な種間 ・集団間よりも同所的な種間・集団間で交配
形質がより大きな分化を示す地理的変異のパターンで ある.交配形質の生殖的形質置換を引き起こ
す進化的プロセスは,前述の( 1
) 強化仮説:生殖隔離が不十分な種間,集団間における 不適応な種
間相互作用に対する自然淘汰による交配形質の分化,だけでなく (
2
) 繁殖干渉仮説:すでに生殖隔
離が成立した種間に生じる繁殖干渉による交配形質の分化,


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仮説:種内の集団

間に形質分化があらかじめ存在し,種間交雑を避けら れる変異を持つ集団のみが他種と共存する可
能性, といった複数の進化的プロセスが存在する.そのため ,生殖的形質置換の進化を理解するた
めには,これらの 3つのプロセス間の識別が必要である.
本研究では,交尾器形態が種特異的に分化し,集団間 の交尾器形態の不一致が生殖的隔離
機構として働くことが知られているオオオサムシ亜属 (甲虫目,オサムシ科,オサムシ属)を用い
て,形態解析・配偶者選択実験・集団遺伝学的解析・ 同種および異種間交配実験・交尾器の物理特

(氏名記詞で寝

,No.2-)

r1では,種分化をも たらす生殖隔離お よび交尾器形態の 進化に関す
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性測定実験を行なった. C
r2では,近縁種の分 布の接触域におい て
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る既存の研究例を概観し,問題点を明らかにした. C
種間差が増加する ような交尾器形態 の地理的変異を持 つ近縁2種マヤサンオサム シとイワワキオサ
ムシと極端に誇張した交尾器形態を持つドウキョウオサムシを用いて,体サイズとのアロメトリー,
気温,地理的距離 ,遺伝的距離が交 尾器形態に与える 影響を考慮した上 で,交尾器形態の 地理的変
異が,特にマヤサ ンオサムシにおい て生殖的形質置換 と一致することを 明らかにした.ま た,マヤ
サンオサムシとイ ワワキオサムシの 接触集団において 交配前隔離が不十 分であること,過 去に遣伝
子浸透が生じてい ることから,観察 された生殖的形質 置換の要因として 繁殖干渉仮説が不 適当であ
r3では,マヤサンオ サムシとイワワキ オサムシを用いた 同種交配・異種
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ることが示された. C
仮説が予測する, 形
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交配実験を元に,種間交尾の集団レベルのコストを定量した. Templetone
質置換した交尾器 を持つマヤサンオ サムシの接触集団 において交雑時の コストが一貫して 減少する
仮説が不適当で
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といった証拠は得 られなかったため ,生殖的形質置換 の要因として Templetone
r4では,マヤサンオ サムシとイワワキ オサムシを用いた 異種間交配実
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あることが示された. C
験により種間交尾 の個体レベルのコ ストを定量し,マ ヤサンオサムシの 雌雄交尾器形態の 個体変異
との関連を検討す ることで強化淘汰 の検出を試みた. その結果,マヤサ ンオサムシの接触 集団にお
いて,雄交尾器に 交雑コストを回避 する点で有利にな るような淘汰(強 化淘汰)が働いて いること
が明らかになった .また,雄交尾器 の物理特性測定実 験により ,接触域の雄交尾 器は長さだけでな
く柔軟性も進化し ていることが明ら かになった.一方 ,雌の交尾器形態 と交雑コストとの 関連はほ
とんど見られなか った.これらのこ とから,強化淘汰 によるマヤサンオ サムシの雄交尾器 の生殖的
形質置換が明らかとなり,生殖的形質置換をもたらす進化的プロセスとして強化仮説が支持された.
r5では,本論文の主 な研究内容を要約 することに加えて ,強化仮説のさら なる検証をするた
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めに,生殖隔離の 強さの指標として 生殖隔離指数をマ ヤサンオサムシの 集団ごとに算出し た.その
結果,強化仮説か ら予測される接触 域の分化した交尾 器形態による生殖 隔離の強化は見ら れず,さ
らなる研究の必要 性が示された.ま た,生殖的形質置 換と同様の地理的 変異のパターンを 示すにも
かかわらず,雌交 尾器形態に働く強 化淘汰が限定的で あったことに関し て,雌雄間の交配 時の相互
作用を踏まえ考察 を行った.最後に ,本研究で明らか した種分化をもた らす生殖隔離の進 化におけ
る錠と鍵仮説の重要性と,いまだ明らかになっていない問題点を総括した.
本研究のこれらの 結果は,種特異的 な交尾器形態に働 く強化淘汰の検出 と交雑コスト回避
を可能にする生物 学的,力学的なメ カニズムの解明を した初めての例で ある.本論文は, 不適応な
種間相互作用に対 する自然淘汰が近 縁種間の交尾器形 態の分化を促進し ,交配後接合前隔 離が強化
され,種分化が駆 動されるという錠 と鍵仮説を支持す る新たな証拠であ り,種の起源のさ らなる理
解に貢献することが期待される.

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[課程博士用]






論文審査の結果の要旨




西村太良

Reproductive character displacement in genital morphology and its
underlying evolutionary processes

論文題目

(交尾器形態の生殖的形質置換とその進化過程)

こ一真/・不

判 定












教授

高見泰興





教授

丑丸敦史





I
教授





教授





農学研究科 杉浦真治
准教授



合 格




I
源利文
I
近江戸伸子

I





本博士論文は、種間の生殖隔離に関わる交尾器形態の多様化をもたらす進化機
構について、近縁種の二次的接触に伴う交雑と生殖隔離の強化という観点から解
明することを目的としている。近縁種間で交尾器形態が大きく異なる分類群を対
象に、形態解析、行動実験、集団遺伝解析、物性解析などを組み合わせた多角的
な 研 究 を 含 む 。 本 論 文 は 5章 構 成 で 、 序 論 ( 第 1章 ) 、 個 々 の 研 究 内 容 を 示 す 第

2章 ∼ 第 4 章 、 研 究 結 果 の 総 括 を 行 う 議 論 ( 第 5章 ) 、 謝 辞 、 引 用 文 献 か ら 構 成
される。
第 1章 の 序 論 で は 、 近 縁 種 の 二 次 的 接 触 に 伴 う 生 殖 形 質 の 分 化 ( 生 殖 的 形 質 置
換)に関する既存の研究をレビューし、
程 に は 3つ の 可 能 性 が あ る こ と 、

(1) 生 殖 的 形 質 置 換 を も た ら す 進 化 過

(2) 交 尾 器 形 態 の 生 殖 的 形 質 置 換 の 実 証 例 が

限られると共に、その進化過程を特定した研究は極めて少ないこと、を明らかに
している。このような問題意識に対して、比較的狭い地域の中で近縁種が接触し、
雌雄交尾器に種特異的な錠と鍵構造を持つオオオサムシ亜属は、良い研究材料で
あることを指摘している。
第 2章 で は 、 雌 雄 交 尾 器 形 態 に 顕 著 な 分 化 を 示 す イ ワ ワ キ オ サ ム シ と マ ヤ サ ン
オサムシを対象に、形態解析による生殖的形質置換の検出と、行動実験と集団遺
伝解析による現在∼過去の種間の遺伝子流動の可能性を推定している。その結果、

(1) 現 在 見 ら れ る 雌 雄 交 尾 器 形 態 の 地 理 的 変 異 は 生 殖 的 形 質 置 換 か ら 予 測 さ れ

るパターンと一致すること、
交尾が生じうること、

(2) 雄 の 自 種 雌 に 対 す る 選 好 性 は 不 完 全 で 、 種 間

(3) 分 布 の 接 触 域 で は 中 立 遺 伝 子 座 に お け る 種 間 の 遺 伝

子流動が生じていること、を実証している。これらの結果に基づき、検出された
生殖的形質置換は、不完全な生殖隔離が強化される過程で生じた可能性が高いこ
と と 、 交 尾 器 形 態 の 分 化 が 不 十 分 な 集 団 が 絶 滅 し た と い う Templeton効 果 が は た ら
いた可能性が排除できないことについて論じている。
第 3章 で は 、 雌 雄 交 尾 器 形 態 に 生 殖 的 形 質 置 換 が 検 出 さ れ た マ ヤ サ ン オ サ ム シ
について、イワワキオサムシとの種間交尾実験により集団レベルの種間交配コス
ト を 定 量 す る こ と で 、 Templeton効 果 を 検 証 し て い る 。 そ の 結 果 、 予 測 と 異 な り 、
集団レベルの種間交配コストが形質置換した交尾器を持つ集団で一貫して低下し
ないことを明らかにしている。特に、雄から見たコストは中程度の形質置換を示
す集団で高く、形質置換が進むと低下するため、形質置換の進化過程には適応度
が低下する「適応の谷」が存在することを指摘している。
第 4 章 で は 、 第 3章 と 同 様 の 種 間 交 尾 実 験 を 元 に 、 交 尾 器 形 態 の 個 体 変 異 と 個
体レベルの種間交配コストとの関連を定量することで、強化仮説を検証している。
その結果、予測通り、交尾器形態に形質置換が検出された集団では、より長い雄
交尾器は種間交尾で破損しにくく、かつ交尾を短縮することができるという点で
有利となる自然淘汰を検出している。さらに、物性解析により、より長い雄交尾
器は柔軟性が高く、破損しにくい事を実証している。これらと前章までの結果に
基づき、検出された交尾器形態の生殖的形質置換は、強化仮説によって説明でき
ると結論している。
第 5章 で は 、 個 別 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し 、 交 尾 器 形 態 進 化 の プ ロ セ ス に
ついて総合的に議論している。さらに、これまでの実験データから生殖隔離を定
量し、強化仮説の更なる予測である生殖隔離の強化が生じていない事を示してい
る。以上より、近縁種の二次的接触による生殖隔離の強化は、交尾器形態だけで
はなく、配偶者選択など他の要因も含めて議論すべきであることを指摘している。
本博士論文は、生物多様性の進化機構について、近縁種間の生殖的相互作用と
いう視点から、生物学以外の手法も含めて多角的に取り組んだ実証研究の成果で
ある。結果として、これまで実証例がほとんどなかった現象に対し、頑健な実証
データをもたらすことでその理解をさらに高いものとしている。これらの知見は、
生物の進化機構の解明という基礎生物学の視点はもとより、生物多様性の創出・
維持機構の理解という、より発展的な視点からも重要な貢献である。
な お 、 本 論 文 を 構 成 す る 各 章 ( 第 2章 ∼ 第 4章 ) は 、 個 別 の 投 稿 論 文 と し て ま
と め ら れ て い る 。 第 2章 は AmericanNaturalist誌 ( 査 読 付 き 、 Wos論 文 ) に 、 第 3
章 は BiologicalJournaloft
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eLinneanSociety誌 ( 査 読 付 き 、 Wos論 文 ) に 既 に 掲 載
さ れ 、 第 4章 は 投 稿 へ 向 け て 準 備 中 で あ る 。 下 記 に 掲 載 済 み 論 文 の 詳 細 を 示 す 。
NishimuraT
,NagataN,TeradaK,XiaT
,KubotaK,SotaT
,TakamiY (2022)
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,TeradaK,XiaT
,TakamiY (2023)Relationshipsbetweenreproductive
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3
8
, 14-26.

よって学位申請者の西村太良は、博士(理学)の学位を得る資格があると認める。
レフェリー付きの論文の発表について、記載すること。

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