リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「オオオサムシ亜属の多様な交尾器形態の発生過程の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

オオオサムシ亜属の多様な交尾器形態の発生過程の解明

寺田, 夏蓮 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Developmental processes of divergent genital
morphologies in closely-related Ohomopterus
ground beetles

寺田, 夏蓮
(Degree)
博士(理学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Date of Publication)
2025-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8544号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482292
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

,▲-

(別紙様式 4)
論 文 内 容 の 要 旨




田夏導
ッ ジ

専 攻

~IY~~

指導教員氏名

各艮象沙朗

論文題目(外国語の場合は,その和訳を併記すること。)

Developmentalp
r
o
c
e
s
s
e
sofd
i
v
e
r
g
e
n
tg
e
n
i
t
a
lm
o
r
p
h
o
l
o
g
i
e
si
nc
l
o
s
e
l
y
r
e
l
a
t
e
dOhomopterusground
b
e
e
t
l
e
s
\オオオサムシ亜属の多様な交尾器形態の発生過程の解明)
論文要旨
昆虫は地球上の種多様性の少なくとも半分を占め,その形態は極めて多様である.従って,
昆虫は生物多様性の起源や,形態の多様性を理解するための重要な材料となる.雌の選択の対
象となる雄の装飾的形質や,雄間闘争に用いられる武器形質などの性的形質は,多様で誇張さ
れた形態の典型例である.中でも,交尾器形態は体内受精を行う動物種の間で最も顕著な多様
性を示す性的形質である.また,いくつかの系統においては,交尾器が著しく誇張することが
知られている.交尾器形態の多様化をもたらすメカニズムは,性淘汰や種分化の文脈でよく研
究されている.しかし,節足動物における雌雄交尾器の形態の多様化をもたらす形態形成過程
については,ショウジョウバエを除きほとんど知られていない.また,交尾器形態の誇張化を
もたらす形態形成過程についてもほとんど知られていない.そこで本学位論文では,多様な交
尾器形態を生み出すメカニズムを発生学的な観点から明らかにすることを目的として,

3つの

個別研究を行った.本研究では,交尾器形態が種間で多様化し,種特異的な交尾器部位が雌雄
間で共進化したことが知られているオオオサムシ亜属を用いて,一連の比較・記述的研究をお
こなった.

C
h
a
p
t
e
r1では,交尾器形態の発生に関する既存の研究例を概観し,問題点を明らかにした.
C
h
a
p
t
e
r2では,対照的な交尾器形態を持つ近縁種 2種マヤサンオサムシとイワワキオサムシ
の雌雄交尾器形態の発生過程を,非破壊的手法であるマイクロ CTを用いて両種の蛹の内部を観
察することで比較した.雄では,種間共通の交尾器部位である陰茎の形態形成について種間で
顕著な違いは見られなかった.種特異的な交尾器部位である交尾片の形態形成については,交
尾片長がより長いマヤサンオサムシでは,蛹化後 2-4日目に交尾片の伸長が開始したのに対し,
交尾片長がより短いイワワキオサムシでは,蛹化後 4
6日目に交尾片の伸長が開始した.つまり,
形態形成のタイミングが種間で異なった.一方,成長率は種間で顕著な差が見られなかった.
雌では,種間共通の交尾器部位である交尾嚢の形態形成について種間で顕著な違いは見られな
かった.種特異的な交尾器部位である腟盲嚢の形態形成については,腟盲嚢長がより長いマヤ
サンオサムシの方が,腟盲嚢長がより短いイワワキオサムシに対して成長率が大きかった.形




(氏名真個頂五

,No.;J-)

態形成のタイミングは,種間で顕著な差が見られなかった.これらの結果から,雄では異時性,
雌では成長率の違いが形態の種間差をもたらしていることが明らかとなった.
C
h
a
p
t
e
r3では,近縁種であるマヤサンオサムシ,イワワキオサムシ,そして誇張化された交
尾器を持つドウキョウオサムシの 3種を用いて,交尾器形態の誇張の進化に対する 3つの制約
の有無について調べた.機能的制約は、誇張された形質それ自体の機能性に影響を与えるか、
誇張された形質を保持することによって個体の生存率を低下させる可能性がある。遺伝相関や
多面発現などの遺伝的制約は、形質の独立した進化や誇張を妨げる可能性がある.また形質間
の空間や資源をめぐる競争などの構造的制約により、誇張された形質と周囲の構造との協調が
必要になる可能性がある.これらの制約から解放されることで誇張化が生じるという仮説を立
て,交尾器形態同士や他の形質との相関を種間で比較分析し,仮説検証を行った.機能的制約
仮説では,安定化選択によって雄交尾器形態は中間サイズに偏り,負のアロメトリーを示すと
予測される.また,交尾器形態が誇張化した種では,安定化淘汰による制約から解放され,ア
ロメトリーが急勾配になると予測される.種間比較の結果,交尾器形態が誇張されているドウ
キョウオサムシはし交尾器サイズのアロメトリーが他 2種と比較して急な勾配を示し,相対的に
安定化淘汰が弱まっていることが示された.従って,機能的制約仮説は支持された.発生学的
基盤の共有に基づく遺伝的制約仮説は,交尾器を含む,各体節の付属肢に由来する部位間のサ
イズ相関を種間で比較することによって検証した.遺伝的制約から解放されて交尾器形態が誇
張化した種では,交尾器と他の付属肢由来の部位との相関が弱いと予測される.種間比較の結
果,予測に反して,交尾器形態が最も誇張化されていないイワワキオサムシにおいて,相関が
最も大きかった.従って,遺伝的制約仮説は支持されなかった.構造的制約仮説は,階層的関
係にある部位間,つまり,腹部と交尾器,陰茎と交尾片などの入れ子状の部位間のサイズ相関
を種間で比較することにより検証した.構造的制約から解放されたことにより交尾器形態が誇
張化された種では,入れ子状の関係にある部位間の相関が弱いと予測される,種間比較の結果,
雄交尾器が誇張されてい乞ドウキョウオサムシで相関が最も大きかった.つまり,構造的制約
はドウキョウオサムシで最も強く,構造的制約は誇張の結果生じたものであることが示唆され


C
h
a
p
t
e
r4では,ドウキョウオサムシの極端に誇張された雄交尾器の発生過程をマイクロ CTを
用いて調べた.また,近縁種で誇張化されていない交尾器形態を持つマヤサンオサムシ,イワ
ワキオサムシの発生過程 (
C
h
a
p
t
e
r
,
2
) と比較することで,誇張化をもたらす発生過程について
議論した.さらに, C
h
a
p
t
e
r3によって示唆された構造的制約が発生過程に与える影響にも注目
した.その結果,

ドウキョウオサムシの交尾片は,マヤサンオサムシの交尾片と同じタイミン

グで伸長を開始した.従って, C
h
a
p
t
e
r2で観察された伸長開始の前倒しによる異時性の影響は
見られなかった.一方で,

ドウキョウオサムシの蛹期は他 2種よりも 1日長いため,伸長期間の

延長という異時性が形態の種間差に関与している可能性が示唆された.また,蛹化後8日目に交
尾片が陰茎サイズの最大容量まで伸長し,複雑な折り畳み構造を形成した.これは,交尾片の
著しく高い成長率と,陰茎サイズによる制限によって生じた種特異的な発生過程であり,空間
的な制約がある中で活発な細胞増殖を可能とするため、極めて大きな交尾器部位の発生を促進
する可能性がある.また,雌雄において,種特異的交尾器部位である交尾片と腟盲嚢が,同じ
発生段階で共通して折り畳み構造を形成した.先行研究では、器官サイズの制御に関わる遺伝
子の発現が,雌雄の蛹後期で共通して増加していることが明らかになっている.このことは,

(氏名奇切及蓮

)
.D
o
,N

交尾片と腟盲嚢の同期的な成長や類似の折りたたみ 構造の構築が,雄雌に共通する遺伝子ネッ
トワークに遺伝子改変が行われた結果であることを示唆している.
r5では,本論文の主な研究結果を要約し,進化学と発 生学の文脈における性的形質の
e
t
p
a
h
C
多様化について議論した.まず,本論文で得られた 知見は,遺伝子発現研究のための詳細な時
空間的情報や,種間差や交尾器形態の誇張をもたら す発生過程に対応する遺伝子ネットワーク
の遺伝的改変に関する情報を提供する可能性があり ,性形質の遺伝的背景に関する研究に貢献
するものである事を指摘した.一方で,本論文の研 究結果は,いくつかの今後の課題を提示し
ている.種内の地理的系統間で交尾器形態の発生過 程を比較することで,現在進行中の進化過
程と,その根底にある種分化に寄与する形質の発生 過程をより深く理解することができるかも
しれないまた,

r3より,交尾器形態の誇張化は比較的
e
t
p
a
h
ドウキョウオサムシについて, C

r4より,雌雄交尾器形態の誇張化
e
t
p
a
h
強い方向性選択の結果である可能性を明らかにした. C
をもたらす発生過程も明らかにした.さらに,先行 研究により,雌雄交尾器形態の誇張化に関
わる遺伝子も特定されている。しかし,交尾器形態 が誇張されるに至った行動的,適応的背景
は,まだ十分に明らかになっていない.生殖的隔離 を強化する自然選択や性淘汰による雌雄間
の共進化などの可能性について,行動実験による実 証を進めることで,発生学的背景と合わせ
た詳細な議論が可能となり,性的形質の誇張の進化についての理解が深まるだろう。
本研究のこれらの成果は,性的形質の多様化と誇張 化をもたらす発生学的過程を明らかにし
たものである.交尾器形態の発生過程の比較から, 形態の多様化に関する進化学的背景を解き
明かそうとした研究は未だ限られる.本論文は,交 尾器形態の多様性について,発生学と進化
学の双方の観点に注目した数少ない研究の 1つであり,これらの知見は,生物の形態の多様性
の起源の理解に貢献するものであると期待される.

,000語)でまとめること。
2
,
_
.
.
.
.
,
0
0
,0
0字(英語の場合は 1
0
0
,
6
,
_
.
.
.
.
,
0
0
0
,
) 3





[課程博士用]






論文審査の結果の要旨




寺田夏蓮

Developmental processes of divergent genital morphologies
in closely-related Ohomopterus ground beetles

論文題目

(オオオサムシ亜属の多様な交尾器形態の発生過程の解明)

0
/
l•不合

判 定










教授

高見泰興





教授

丑丸敦史





I
教授





教授





農学研究科 I
杉浦真治
准教授

職 名






I
源利文
I
近江戸伸子





本博士論文は、種間の生殖隔離に関わる交尾器形態の多様化をもたらす進化機
構について、発生学の観点から解明することを目的としている。近縁種間で交尾
器形態が大きく異なる分類群を対象に、
の記載と、

(1) マ イ ク ロ CTを 用 い た 形 態 形 成 過 程

(2) 形 態 測 定 に 基 づ く 形 態 の サ イ ズ 変 動 の 解 析 を 組 み 合 わ せ 、 そ れ

ら を 種 間 比 較 に よ っ て 意 義 づ け る 形 式 の 研 究 か ら な る 。 本 論 文 は 5章 構 成 で 、 序
論 ( 第 1章 ) 、 個 々 の 研 究 内 容 を 示 す 第 2章 ∼ 第 4章 、 研 究 結 果 の 総 括 を 行 う 議
論 ( 第 5章 ) 、 謝 辞 、 引 用 文 献 か ら 構 成 さ れ る 。
第 1章 の 序 論 で は 、 交 尾 器 形 態 の 進 化 ・ 多 様 化 に 関 す る 既 存 の 研 究 を レ ビ ュ ー



(1) 多 様 化 を も た ら す 性 淘 汰 や 自 然 淘 汰 な ど の 要 因 や 、 多 様 化 と 種 分 化 と

の関係は比較的良く研究されていること、しかし

(2) 交 尾 器 形 態 多 様 化 の 背 景

にある発生学的過程の研究はきわめて限られること、を明らかにしている。この
ような問題意識に対して、雌雄交尾器に種特異的な錠と鍵構造を持ち、それをも
たらした淘汰要因と進化学的帰結についての理解が進んでいるオオオサムシ亜属
は、良い研究材料であることを指摘している。
第 2章 で は 、 雌 雄 交 尾 器 形 態 に 顕 著 な 分 化 を 示 す イ ワ ワ キ オ サ ム シ と マ ヤ サ ン
オ サ ム シ を 対 象 に 、 マ イ ク ロ CTを 用 い て 蛹 期 の 交 尾 器 形 態 形 成 過 程 を 詳 細 に 記 述
すると共に、種特異的な交尾器部位サイズの解析により、形態分化をもたらす発
生過程の特定を行っている。その結果、

(1) 種 間 で 共 通 の 雌 雄 交 尾 器 部 位 が 先

に形成され、種特異的な部位は後に形成されること、

(2) 雄 交 尾 器 の 種 間 差 に

は 、 交 尾 器 部 位 の 成 長 期 間 の 差 ( 異 時 性 ) が 重 要 で あ る こ と 、 そ し て (3) 雌 交
尾器の種間差には、交尾器部位の成長率の差が重要であること、を明らかにして
いる。これらの結果に基づき、種特異的な形態は比較的後期の発生過程が改変さ
れて生じることと、雌雄交尾器の共進化をもたらした発生過程が雌雄間で異なる
ことについて論じている。
第 3 章 で は 、 誇 張 し た 雌 雄 交 尾 器 を 持 つ ド ウ キ ョ ウ オ サ ム シ と そ の 近 縁 2種 を
対象に、制限からの開放が誇張をもたらした可能性について、成虫の各部位間の
サイズ共変動の種間比較解析により検証している。その結果、機能的制約からの
開放が誇張に寄与した一方、誇張によって構造的制約に達していることを明らか
にしている。これらの結果に基づき、性的形質の誇張という一般的な進化現象の
理解において、様々なかたちの制限という視点の重要性を指摘している。
ドウキョウオサムシの誇張した交尾器の発生過程について、マイ
クロ CTを 用 い て 蛹 期 の 形 態 形 成 過 程 を 詳 細 に 記 述 す る と 共 に 、 2 章 で 明 ら か に な
っ た 異 時 性 と 成 長 率 の 違 い の 寄 与 と 、 3章 で 明 ら か に な っ た 構 造 的 制 約 を 回 避 す
第 4 章では、

る仕組みの特定を行っている。その結果、

(1) 雌 雄 交 尾 器 の 誇 張 に は 蛹 期 間 の

(2) 雄 交 尾 器 の
延長による異時性と成長率の著しい上昇が寄与していること、
成長過程で特異な折畳み構造が生じることを明らかにしている。これらの結果に

基づき、交尾器の入れ子構造に起因する構造的制限の中で、誇張された交尾器は
特異な折畳み構造を形成しながら高い成長率を維持しているらしいことを指摘し
ている。
第 5章 で は 、 個 別 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し 、 交 尾 器 形 態 進 化 の 発 生 過 程 に
ついて総合的に議論している。加えて、形態の多様化にかかわる発生過程、遺伝
的基盤、淘汰要因の研究を統合する必要性を指摘し、具体的な研究課題の提言を
行っている。
本博士論文は、種間の生殖隔離に関わる交尾器形態の多様化をもたらす進化機
構について、発生学の視点から取り組んだ実証研究の成果である。結果として、
これまで研究例がきわめて限られていた分野において、頑健な実証データをもた
らすことで先駆的研究例を提示すると共に、研究の進展に資する充実した知的基
盤を構築している。これらの成果は、生物の進化機構の解明という基礎生物学の
視点はもとより、生物多様性の創出・維持機構の理解という、より発展的な視点
からも重要な貢献である。
な お 、 本 論 文 を 構 成 す る 各 章 ( 第 2章 ∼ 第 4章 ) は 、 個 別 の 投 稿 論 文 と し て ま
と め ら れ て い る 。 第 2 章 は Evolution& Development誌 ( 査 読 付 き 、 Wos論文)に、
第 3 章 は EntomologicalScience誌 ( 査 読 付 き 、 Wos論 文 ) . に 既 に 掲 載 さ れ 、 第 4 章
は投稿へ向けて準備中である。下記に掲載済み論文の詳細を示す。
e
t
a
TeradaK,NishimuraT,HirayamaA,TakamiY (2021)Heterochronyandgrowthr
nclosely
lmorphologiesi
a
t
i
n
e
edevelopmentofdivergentg
h
nmediatet
o
i
t
a
i
r
a
v
.Evolution& Development23, 19-27.
s
e
l
t
e
e
dOhomopterusgroundb
e
t
a
l
e
r
l
a
r
u
t
c
u
r
t
,ands
c
i
t
e
n
e
,TakamiY (2023)Functional,g
TeradaK,TakahashiS
n
lmorphologyi
a
t
i
n
e
nofmaleg
o
i
t
a
c
i
f
i
s
r
e
iv
eexaggerationandd
h
sont
t
n
i
a
r
t
s
n
o
c
.EntomologicalScience26,e12538.
s
e
l
t
e
e
Ohomopterusgroundb

よって学位申請者の寺田夏蓮は、博士(理学)の学位を得る資格があると認める。

レフェリー付きの論文の発表について,記載すること。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る