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大学・研究所にある論文を検索できる 「CTを用いた犬胸骨リンパ節の評価法とその診断意義についての臨床的検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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CTを用いた犬胸骨リンパ節の評価法とその診断意義についての臨床的検討

岩﨑, 遼太 岐阜大学

2020.03.13

概要

悪性腫瘍罹患犬においてリンパ節転移の有無を正しく診断することは,治療方針の決定や予後判定のために重要である。リンパ節転移は通常病理学的検査により確定されるが,診断時のスクリーニング検査として画像検査が果たす役割は大きい。胸骨リンパ節(StLN)は触診ができず,また病理学的検査のためのアプローチが比較的難しい部位に存在しているため,画像検査による評価が特に重要なリンパ節である。しかしながら X 線検査や超音波検査では十分に腫大した StLN しか検出ができないため,これらの検査によって検出されなかった StLN においても転移が起きている可能性は否定できない。さらに,画像検査による正常な StLN に関する知見はほとんど認められず,リンパ節腫大に対する評価は主観的となっているのが現状である。CT は正常なリンパ節を評価する上で有用なモダリティであるが,StLN を評価した文献や,CT がリンパ節転移の鑑別に有効であるかどうかを調査した文献は見当たらない。そこで本研究では,CT を用いて犬における StLN の評価法を確立し, CT 所見を用いた転移の診断精度を求めた上で,悪性腫瘍罹患症例の生存解析を行い,その臨床的有用性について評価することを目的とした。

第 1 章では,健常犬における正常な StLN の特徴を CT によって評価し,さらに体格に依らないサイズの基準値を確立することを目的とした。胸部 CT 検査を実施した健常犬におけるStLN のCT 所見を解析した結果,すべての健常犬において1 つ以上のStLN が検出された。サイズ中央値は長径 6.21 mm(2.16〜16.57 mm),短径 3.33 mm(1.49〜7.82 mm), 造影前 CT 値は中央値 29.0 HU(14.3〜59.3 HU)と求まり,また形状はほとんどの症例において卵円形もしくは長円形であった。体重に依存しないサイズの基準値を求めるため,StLN の短径を第 2 胸骨分節(St2)の高さにより除したところ,求める StLN/St2 の中央値は 0.45(95% CI,0.317〜0.596),回帰式が y = −0.007x + 0.466(x, 体重 [kg];y,StLN/St2)と算出された。このことから,サイズ,形状,CT 値および造影パターンなどのパラメータを組み合わせることが StLN の転移診断に有用ではないかと予想された。

第 2 章では,CT 検査と StLN に対する細胞学的検査を同時に実施した症例において,転移陰性群と転移陽性群との 2 群間における StLN の特徴を比較し,さらに転移に対する診断精度を解析した。2 群間において StLN サイズ(絶対値および相対値 [StLN/St2]),形状,および造影前 CT 値に有意差が認められた。さらにロジスティック回帰分析により,StLN/St2 および造影前 CT 値が,StLN 転移に関連する独立した変数であることが明らかとなっ た。診断精度に関しては,StLN/St2 と造影前 CT 値の 2 変数がいずれもそれぞれのカットオフ値を上回った際に(StLN/St2≧1.0,造影前 CT 値≧37.5 HU),StLN 転移の特異度と陽性適中率はいずれも 100%となった。以上より,StLN サイズと造影前 CT 値との組み合わせにより,高い精度で簡便かつ非侵襲的にリンパ節転移を診断できる可能性が示唆された。

第 3 章では,CT 検査を行った尿路移行上皮癌(TCC)罹患犬において,第 2 章で定めた転移の基準を満たす StLN が予後因子となりうるかどうかを解析した。Cox 比例ハザード回帰分析により,原発腫瘍の局在,骨転移,および転移基準を満たした StLN の異常所見が生存期間に独立して影響を及ぼす因子と求まった(ハザード比はそれぞれ 1.90 [95% CI,1.04〜3.47];2.76 [95% CI,1.23〜6.17];3.56 [95% CI,1.50〜8.50])。この結果により,前章で求めた StLN の基準は,TCC 罹患犬において予後因子となることが明らかとなった。

以上,本研究では CT を用いて健常犬における正常な StLN の特徴を明らかにした上で,体重に依らない StLN サイズの標準化法を確立した。さらに病理学的検査によってこの StLNサイズの測定法の有用性を検証した上で,CT パラメータを用いた転移に対する診断精度を解析し,TCC 罹患犬において StLN の異常所見が負の予後因子となることを明らかとした。 CT 検査を実施することで,悪性腫瘍罹患犬において StLN 転移を簡便かつ非侵襲的に診断できる可能性が示唆された。これらの知見によって,獣医療における CT によるリンパ節診断の重要性はさらに高まっていくものと期待される。

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