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大学・研究所にある論文を検索できる 「Immunophenotyping of A20 haploinsufficiency by multicolor flow cytometry」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Immunophenotyping of A20 haploinsufficiency by multicolor flow cytometry

門脇, 朋範 岐阜大学

2021.03.25

概要

TNFAIP3 遺伝子がコードする分子A20 は,TNF-NFκB シグナル伝達経路を抑制性に制御する分子である。同遺伝子のハプロ不全変異は若年発症ベーチェット病(BD)様症状を呈する自己炎症性疾患である A20 ハプロ不全症 (HA20)を引き起こすことが報告されている。同疾患では自己炎症症状の他,高頻度に全身性エリテマトーデス (SLE)などの自己免疫疾患を併発することが報告されている。また,免疫グロブリン産生不全や持続性Epstein- Barr virus(EBV)感染症などの免疫不全状態を呈した症例も報告されており,症状は非常に多彩である。近年,マルチカラーフローサイトメトリーを用いたリンパ球サブセット解析が免疫調節障害を生じる疾患の解析に有用であることが報告された。申請者はマルチカラーフローサイトメトリーを用いたHA20 患者の末梢血リンパ球サブセット解析を行い,HA20 の免疫学的特徴を調査した。

【対象と方法】
1) 対象:申請者らが行った先行研究に参加したHA20 患者に2 症例を追加し,10 家系,18 症例を対象とした。
2) 臨床情報調査:各施設へ情報提供を要請し,解析時の年齢,治療,血清CRP 値,自己抗体の有無を調査した。
3) 免疫グロブリン値の解析:HA20 患者の血清IgG,IgG2,IgA,IgM,IgD,IgE 値の測定を行い,年齢別基準値との比較を行った。
4) マルチカラーフローサイトメトリー解析:患者全血から分離した末梢血単核球分画(PBMC)を各種抗体で染色したのち,BD LSRFortessa flow cytometer を用いて解析を行った。染色は共同研究者らが以前に報告したものと同様に,PBMC,T1,T2,T3,B1,B2 の 6 種類のパネル設計を踏襲して行った。PBMC パネルは T 細胞 (CD3+CD19-),B 細胞(CD3-CD19+),natural killer(NK)細胞(CD16+CD56+),ヘルパーT(Th)細胞(CD3+CD4+),細胞傷害性 T(Tc)細胞(CD3+CD8+),ナイーブTh(CD3+CD4+CD45RA+CD45RO-)および Tc 細胞(CD3+CD8+CD45RA+CD45RO-),メモリーB 細胞(CD19+CD27+)を測定した。T1 パネルではメモリーTh 細胞(CD3+CD4+CD45RA-CD45RO+),メモリー Tc 細胞(CD3+CD8+CD45RA-CD45RO+)などを測定した。また,T2 パネルではダブルネガティブT 細胞(DNT:CD3+TCR αβ+CD4-CD8-),制御性 T 細胞(Treg:CD3+CD4+CCR4+CD25+CD127low) を測定し,T3 パネルでは Th1 細胞 (CD3+CD4+CD45RO+CCR6-CXCR3+),Th2 細胞(CD3+CD4+CD45RO+CCR6-CXCR3-),Th17 細胞(CD3+CD4+CD45RO+CCR6+CXCR3-),濾胞性ヘルパーT 細胞(TFH:CD3+CD4+CD45RO+CXCR5+)を測定した。B1,B2 パネルでは IgM メモリーB 細胞 (CD19+CD27+IgM+IgD+),switched memory B 細胞(CD19+CD27+IgM-IgD-)などを測定した。また,共同研究者らが以前に報告した年齢別基準値を使用し,0〜1 歳,2〜6 歳,7〜19 歳,20 歳以上の4 群にわけHA20 患者群と比較を行った。

【結果】
1) 臨床情報調査:検査実施時の年齢は 9 か月〜69 歳である。5 症例(27.8%)は分析時に抗 TNF-α製剤などの生物学的製剤による治療を受けていた。また,7 症例(38.9%)で SLE,橋本病などの自己免疫疾患の合併,または自己抗体陽性を呈していた。加えて1 症例は持続性EBV 感染を合併していた。
2) 血清免疫グロブリン解析:今回解析した症例では免疫グロブリン産生不全を生じた症例は認めなかった。一方で,血清IgG,IgA,IgM,IgE がそれぞれ9 症例(50.0%),6 症例(33.3%),1 症例(5.6%),11 症例(61.1%)で基準値と比較し上昇していた。
3) PBMC パネル解析:2 歳以上の患者群でナイーブTh 細胞比率が低下しており,3 症例でメモリーB 細胞比率が上昇していた。さらに20 歳以上の患者ではNK 細胞比率が有意に低下していた。
4) T1,T2,T3 パネル解析:HA20 患者では全ての年齢層でTreg 比率が上昇傾向を示しており,特に2〜6 歳,7〜19 歳では有意に上昇していた。また,7 症例でDNT 比率の上昇が観察され,特に20 歳以上で有意に上昇した。TFH 比率についてもHA20 患者で上昇傾向となっており,特に2〜6 歳の群で有意差がみられた。
5) B1,B2 パネル解析:HA20 患者では健常者と比較し,IgM メモリーB 細胞とswitched memory B 細胞比率がそれぞれ20 歳以上,2〜6 歳の群で有意に低下していた。
6) 疾患寛解期,活動期ごとのTreg,TFH,DNT 解析:リンパ球サブセットの変化が疾患活動性に影響している可能性を考慮し,検査時の血清CRP 値1.0 mg/dl 未満の患者を寛解期,1.0 mg/dl 以上を活動期として分類し再評価を行った。結果として寛解期でも患者群のTreg,DNT 比率は分類前と同様に上昇していた。一方,TFH比率では活動期のみ,2〜6 歳の患者群で有意に上昇していた。

【考察】
HA20 患者のリンパ球サブセットではTreg,TFH およびDNT 比率の上昇が観察された。Treg は自己免疫寛容に関与する細胞であり,家族性地中海熱などの他の自己炎症性疾患においても増加することが報告されている。そのため,HA20 患者におけるTreg 比率の上昇は炎症に対する抑制反応として生じていることが推測された。DNT は成熟T 細胞の前駆細胞である。自己免疫性リンパ増殖症候群ではアポトーシス障害によりDNT が増加し,自己免疫疾患を併発することが報告されている。A20 はアポトーシス誘導に影響を与えていることが報告されていることから,HA20 患者ではアポトーシス障害による DNT 比率の上昇,自己免疫疾患の合併を生じうる可能性が示唆された。TFH はリンパ濾胞の胚中心に局在し,IL-21 を産生することによりB 細胞からの免疫グロブリン産生を誘導する働きを持つ細胞であり,SLE 等の自己免疫疾患患者で増加することが報告されている。HA20 患者では TNF-NFκB シグナル伝達経路の活性化によりTFH の増加因子であるIL-12 産生が促進されることによりTFH が増加し,本症で自己免疫疾患の合併を生じる一因になりうることが推定された。

【結論】
本研究では HA20 患者のリンパ球サブセットを解析し,Treg,DNT,TFH 比率が上昇することを明らかにした。 Treg 比率の上昇は自己炎症に対する調節性反応である可能性が示唆された。また,DNT,TFH 比率の上昇が本症における自己免疫疾患の発現と関連している可能性が考えられた。

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