リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Generation of hypothalamic neural stem cell-like cells in vitro from human pluripotent stem cells」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Generation of hypothalamic neural stem cell-like cells in vitro from human pluripotent stem cells

三輪田, 勤 名古屋大学

2023.08.01

概要

主論文の要旨

Generation of hypothalamic neural stem cell-like cells
in vitro from human pluripotent stem cells
ヒト多能性幹細胞から視床下部神経幹細胞様細胞を創出する

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

糖尿病・内分泌内科学分野

(指導:有馬 寛
三輪田 勤

教授)

【緒言】
視床下部神経系は一度障害されると機能回復が難しい。その理由のひとつに回復に
必要な神経幹細胞が明確でないことが挙げられる。近年、齧歯類の成体において第三
脳室周囲のタニサイトが視床下部神経幹細胞の機能を持つと報告されている。しかし、
ヒトから第三脳室周囲細胞を採取するのは容易ではなく検討が進んでいない。この問
題を多能性幹細胞(embryonic stem cell:ES 細胞、induced pluripotent stem cell:iPS 細
胞)技術で解決しようと考えた。これまで当教室ではマウス ES 細胞を用いてタニサイ
トに相当する細胞を分化させこれが視床下部神経幹細胞の性質、すなわち自己複製能
(self-renewal)と視床下部神経およびグリアへの多分化能(multipotency)とを持つこと
を報告した。そこで今回はヒト ES 細胞から視床下部神経幹様細胞への分化誘導を試
みた。
【方法】
胎生後期以降において transcription factor retina and the anterior neural fold homeobox
(RAX)がタニサイトに特異的に発現することに着目し、ヒト ES 細胞を視床下部組織
へ分化させた際に、その多くが神経やグリア細胞へと分化完了する時期になってもな
お RAX 発現が残存する細胞がタニサイトに相当する細胞と考えた。RAX に蛍光蛋白
である VENUS をノックインしたヒト ES 細胞を視床下部組織へ分化させ最終分化の
時点で残存している RAX::VENUS 陽性細胞をセルソーターで分取した。RAX 陽性細
胞の視床下部神経幹細胞としての機能を in vitro にて検討した上で、マウス視床下部
への移植により in vivo での分化能も確かめた。続いて野生型ヒト ES 細胞であっても
視床下部神経幹細胞を分取できる方法を構築する目的で細胞表面抗原スクリーニング
を実施し RAX 陽性細胞を高効率に分取できる細胞表面抗原を検索した。セルソータ
ーで分取した細胞表面抗原陽性細胞が視床下部神経幹細胞の性質を持つか確認した。
【結果】
分化誘導 90 日目においてヒト ES 細胞由来の視床下部組織の多くは POMC、NPY、
NR5A1 陽性等の細胞へ最終分化していた。その中に残存する RAX::VENUS 陽性細胞
には SOX2、VIMENTIN、NESTIN が同時発現しておりタニサイトに相当する細胞であ
る事を示唆していた。VENUS 蛍光を利用しセルソーターで分取した RAX 陽性細胞は
凝集体(neurosphere: NS)を形成した。この NS は複数回の継代が可能であり自己複製
能を持つことを示した。またこの NS は POMC、NPY 陽性の視床下部神経や GFAP 陽
性アストロサイト、O4 陽性オリゴデンドロサイト等のグリアへの分化能、すなわち多
分化能を示した。この NS を免疫不全 SCID マウスの視床下部弓状核に移植したとこ
ろ移植したヒト細胞が生着し、その辺縁部が POMC、NPY 陽性細胞へ分化することを
確認した。次に細胞表面抗原スクリーニングを実施し CD29 陽性かつ CD24 陰性細胞
が視床下部神経幹細胞の分取に有用なことを見出した。実際にセルソーターで分取し
た CD29 陽性 CD24 陰性細胞は NS を形成し、継代や分化実験の結果、視床下部神経

-1-

幹細胞の性質を持つことを確認した。
【考察】
本技術を用いたヒト視床下部神経幹細胞様細胞は今後ヒト視床下部幹細胞の研究
を可能にするものである。例えば、本研究では、ヒト多能性幹細胞由来の視床下部神
経幹細胞様細胞をマウスの視床下部腹側に移植し、その生着と神経新生、すなわち視
床下部神経細胞への分化を確認した。今後、視床下部ニューロンを特異的にノックア
ウトした疾患モデルマウスを用いて、移植した細胞の機能を評価することが可能にな
る。さらに、マウス視床下部神経幹細胞様細胞は視床下部神経の再生だけでなくエピ
ジェネティックな要因に基づく老化にも関与していることが報告されている。したが
って、老化した動物モデルをにヒト視床下部神経幹細胞様細胞またはエピジェネティ
ックな因子を移植することにより、老化に及ぼす影響を検討することが可能である。
さらに、視床下部神経幹細胞様細胞の維持機構を研究することも可能である。実際
に、マウスの視床下部腹内側核や弧状核付近の脳室周囲細胞に発現する FGF2 が、ヒ
ト ESC 由来オルガノイドの視床下部神経幹細胞様細胞ニッチ内部に発現しており、こ
の領域に視床下部神経幹細胞様細胞の長期維持のメカニズムが存在することが示唆さ
れた。ニューロスフィアを形成しうる視床下部神経幹細胞様細胞ニッチは、細胞塊が
少なくとも 200 日間、立体的に維持されていた。この培養系を用いて、空間的なトラ
ンスクリプトーム解析を行うことにより幹細胞ニッチ維持のメカニズムを解明するこ
とができる可能性がある。
最後に視床下部神経幹細胞様細胞を分離するための表面マーカーを同定し、この技
術を広く利用できるようにした。表面マーカーを用いることで、様々なヒト ESC/iPSC
株から視床下部神経幹細胞様細胞を作製することが可能となり、再生医療、発生学、
疾患病理学、老化など幅広い分野の視床下部研究の基盤技術として期待される。
【結語】
ヒト ES 細胞の in vitro 培養で視床下部神経幹細胞へ分化誘導することに成功し in
vitro および in vivo で視床下部神経幹細胞として機能することを証明した。また細胞
表面抗原を用いて視床下部神経幹細胞を分取する方法論を構築した。ヒト視床下部神
経の発生学的研究や再生医療に利用しうる基盤技術を確立したものと考える。

-2-

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る