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大学・研究所にある論文を検索できる 「歯髄幹細胞から分化誘導した神経系細胞は末梢神経再生を促進させる」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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歯髄幹細胞から分化誘導した神経系細胞は末梢神経再生を促進させる

髙岡, 昇平 筑波大学

2022.11.24

概要

目的:
 重度の末梢神経損傷治療の第一選択は自家神経移植である。しかしながら、健全な自己神経を犠牲にする必要があるため、将来的には自家神経移植に代わる治療法となり得る損傷した神経の再生を促進する細胞移植の実験が広く行われている。本実験において、1) ヒト歯髄幹細胞を神経誘導させた神経系細胞を評価すること、2) そ細胞を神経誘導管とともに免疫不全ラットの坐骨神経切断モデルに移植しその末梢神経再生能を評価すること、さらに3) 末梢神経再生部位における移植細胞の動態を評価することを目的とした。

対象と方法:
実験1) ヒト歯髄幹細胞から分化誘導した神経系細胞の評価
 ヒト歯髄幹細胞を神経誘導し、形態的に神経細胞様構造を持つようになった細胞群を採取することで神経系細胞として実験に使用した。分化誘導神経系細胞を透過型電子顕微鏡、細胞免疫染色、フローサイトメトリー、カルシウムイメージングによって評価した。さらに歯髄幹細胞との比較評価はRT-PCR、マイクロアレイ解析により行われた。
実験2) 分化誘導神経系細胞のparacrine評価
 神経系細胞の培養上清(CM)は回収され、CMの血管内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells; HUVEC)、シュワン細胞(immortalized adult rat Schwann cells; IFRS1)、神経系細胞を構成する神経細胞への影響が評価された。その評価はHUVEC、IFRS1の細胞増殖assay、HUVECのtube formation assay、神経細胞に対するneurite regeneration assayを用いて行われた。
実験3) 移植後神経系細胞の免疫組織学的評価
 1×105個の神経系細胞をMatrigel®に懸濁して神経誘導管に入れ、これを免疫不全ラット坐骨神経切断モデルに移植した。移植後2週、12週において、生存するヒト細胞を免疫組織学的に評価した。
実験4) 末梢神経再生の評価
 免疫不全ラットの坐骨神経を10mm切断し、(1)神経誘導管内部にMatrigel®を填入したコントロール群、(2)神経誘導管内部に1×105個の神経系細胞とMatrigel®を填入する細胞移植群が設けられた(n=6/group)。移植後4、8、12週の坐骨神経機能指数(sciatic functional index; SFI)と、12週における電気生理学的評価を行った。その後腓腹筋を採取しその湿重量を評価した。さらに移植部を含めた坐骨神経を採取し、その組織学的評価をトルイジンブルー染色と透過型電子顕微鏡にて行い神経系細胞の神経再生能を調べ、神経系細胞の末梢神経再生能を評価した。

結 果:
(実験1) スフェロイド形成後の分化誘導神経系細胞を透過型電子顕微鏡で観察し、シナプス小胞やシナプス後肥厚を確認した。さらに分化誘導した神経系細胞は、免疫染色においてアストロサイト系統、オリゴデンドロサイト系統、神経系統、極少数の神経堤系統細胞が混在した細胞集団であることが確認された。また、フローサイトメトリーによって神経系細胞のCD44陽性細胞は経時的に減少することと、A2B5とGFAPの2カラー解析で培養day5の神経系細胞では1つの細胞集団であるのに対して、day50においてはグリア系統細胞と神経系統細胞の2つの細胞集団に分かれることがわかった。さらに、day50の神経系細胞では、カルシウムイメージングにおいて間欠的な細胞内カルシウム濃度の上昇をモニターすることができた。歯髄幹細胞との比較では、RT-PCRにより神経細胞マーカー(MAP2、NeuN)が分化誘導後に発現することがわかった。マイクロアレイ解析では、神経系細胞の分化誘導後に発生学的初期神経マーカー(Pax6、Nestin、Sox2、FoxG1、OTX1/2)が上方制御され、さらに神経系細胞において上方制御された上位遺伝子でGeneOntology解析を行い、それらは神経関連GOtermであることがわかった。
(実験2) 神経系細胞培養上清はIFRS1の細胞増殖能を、またHUVECの遊走能力を高めることがわかった。さらに、HUVECのtube formationを活性化させるだけでなく、神経細胞の神経突起の成熟化を促した。
(実験3) 移植された神経系細胞は、移植後2週において約7割がplatelet-derived growth factor receptor alpha(PDGFRα)を持つオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化していることがわかった。また、PDGFRα/p75neurotrophin receptor(p75NTR)陽性細胞が確認された。さらに移植後12週において、ヒトシュワン細胞様細胞の生存を確認した。
(実験4) 細胞移植群は非細胞移植群と比較し、移植後4、8、12週において有意に高いSFI値を示し、さらに12週では電気生理学にも有意に良好な結果であった。腓腹筋の湿重量においては、細胞移植群においての減少は有意に抑制されていた。組織学的評価においても、再生軸索数、髄鞘の成熟度で有意な神経再生を示した。

考 察:
 ヒト歯髄幹細胞から分化誘導した神経系細胞は、主に中枢神経系の様々な細胞種の様々な分化段階の細胞集団であり、持続的な分化を示した。これは神経幹/前駆細胞の存在を示唆している。また、移植後2週においてPDGFR/p75NTR陽性細胞が確認され、以前から存在が予測されていたオリゴデンドロサイト由来シュワン細胞様細胞であると考えられた。移植後12週においてもシュワン細胞様細胞は生存し、持続的に神経再生を促進していたと考えられる。本実験の神経系細胞は今後の末梢神経への幹細胞治療において有用な細胞であることが示された。

結 論:
 ヒト歯髄幹細胞由来神経系細胞は末梢神経再生を促進させた。

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