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植物ホルモンブラシノステロイド様活性化合物の探索研究

瀧本, 征佑 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24667

2023.03.23

概要

植物ホルモンブラシノステロイド様活性化合物の探索研究

2023

瀧本征佑

目次

第1章

緒論

第2章

インシリコでの化合物探索および分子設計手法

第3章

第4章

第5章

1

2-1 諸言

7

2-2 SBDD のためのソフトウエア

9

ブラシノステロイド受容体結合性化合物のインシリコスクリーニング
3-1 緒言

37

3-2 方法

37

3-3 結果および考察

45

3-4 まとめ

50

新規ブラシノステロイドアゴニスト(NSBR1)の発見
4-1 緒言

51

4-2 方法

51

4-3 結果および考察

60

4-4 まとめ

62

NSBR1 の構造活性相関研究
5-1 緒言

63

5-2 方法

63

第6章

第7章

5-3 結果および考察

81

5-4 まとめ

84

イネ発芽種子を用いたブラシノステロイド類の定量的活性評価
6-1 緒言

87

6-2 方法

87

6-3 結果および考察

90

6-4 まとめ

95

総括

97

謝辞
引用文献

本研究に関する原著論文
関係論文

第1章

緒論

Mitchellらによってセイヨウアブラナ(Brassica napus L.)花粉からインゲンマメの胚
軸の伸長を促進する物質が1970年に発見された(Mitchell et al., 1970).Mitchellらは
活性物質の本体を同定するには至らなかったが,その物質が新しい植物ホルモンで
はないかと考えて,Brassinと名付けた.その後,活性本体の単離と同定がGroveらに
よってなされ,1979年にその化学構造がX線結晶構造解析によって解明されてブラシ
ノライド (Brassinolide; BL)と名付けられた(Grove et al., 1979).1982年には横田らに
よってクリ(Castanea crenata)の虫癭からカスタステロン(Castasterone; CS)が(Yokota
et al., 1982),また同年にフジマメ(Delichos lablab)からdolicholideが発見された(Baba
et al., 1983).CSはB環部が6員環のケトン構造でBLの7員環(e-オキサラクトン)と
は異なっている.現在では70種類以上のBL様活性化合物が同定されていて,これら
BL様活性を示す化合物は総称してブラシノステロイド(Brassinosteroid, BR)と呼ばれ
ている(Bajgus et al., 2007; Fujioka et al., 1999).(図1.1).
OH

HO
HO

C
A

B
H

D

O

O

Brassinolide

OH

OH

OH

OH

OH
HO

HO
HO

H

HO

O

Castasterone

H

O
O

Dolicholide

図1.1 天然に存在する代表的なBRの構造
BRは植物界に普遍的に存在し,極微量で細胞生長促進,細胞分裂促進,維管束分
化の促進,ストレス耐性の向上などの活性を示すが(Kamuro and Takatsuto, 1999),
1

その働きの多くが他の植物ホルモンと類似しているために,長年植物ホルモンとは
認められてこなかった.その論争に決着をつけたのが,Choryらのグループによる
BR生合成欠損変異株det2の発見である(Li et al., 1996, Li et al., 1997).det2変異体
は著しい矮化や脱黄化など異常な形質を示すが,BRを処理することによりこれらの
異常から復帰することが報告された.このことによって,BRが植物の生育に必須な
植物ホルモンであると認められることになった(Fujioka et al., 1997).その後,BRの
生合成(Sakurai, 1999),代謝(Adam and Schneider, 1999),シグナル伝達(Friedrichsen
et al., 2001)などに関して盛んな研究が行われた.21世紀に入ると,受容体の解明に
向けた研究が進み(Wang et al., 2001, Li et al., 2002, Nam et al., 2002),2005年に
Kinoshitaらによって,BRの結合部位が明らかにされた(Kinoshita et al., 2005).2011
年7月にはBR受容体Brassinosteroid Insensitive1 (BRI1)とBLの複合体X線結晶構造が解
明された(Hothorn et al., 2011; She et al., 2011).さらに2013年には,SERKファミリ
ータンパクであるBrassinolide associate kinase-1 (BAK1)がBRI1に結合したBRを認識す
るco-receptorであることが報告され(Sun et al., 2013), 同年,Somatic Embryogenesis
Receptor-like Kinase1 (SERK1=BAK3)とBRIがBLを介して相互作用していることが,
BRI1-SERK1-BL複合体構造によって明らかとなった(Santiago et al., 2013).
先に述べたように,BRはBR生合成欠損変異株の発見によって植物ホルモンである
と正式に認められ,その後のホルモン基礎研究においても矮性変異株は欠くことの
できないものとなった.その後,BR生合成阻害剤が浅見らによって発見されると,
人工的に矮性を誘導することが可能となり,基礎研究がさらに発展し,BR生合成阻
害剤の応用研究への可能性が広がった.最初に発見されたBR生合成阻害剤は
Brassinazole (Brz)で,シトクロームP450を阻害するジベレリン生合成阻害剤
2

Uniconazole(Yokota et al., 1991)をリード化合物とした構造活性相関研究の結果として
見出された(Asami et al., 1999; Asami et al., 2000).その後,Brzをリード化合物と
した合成展開が行われ,さらに高活性・高特異性な化合物としてBrz2001が開発され
た(Sekimata et al., 2001)(図1-2).
Cl
OH
OH
N
N

N

OH

N

Cl

N

N

Cl

N

N

Uniconazole

N

Brassinazole (Brz)

Brz2001

図1-2 ジベレリン生合成阻害剤Uniconazole,BR生合成阻害剤Brzの構造
BR活性の代表的な評価系としてイネ葉身屈曲試験(ラミナジョイント法)が挙げら
れる(Takeno et al., 1982; Fujioka et al., 1998).この試験は,イネの実生の第二葉身
基部にBRを投与すると,特異的な葉身の屈曲がみられることを利用したもので,葉
身の屈曲角度と濃度の間の相関からBR活性を測定する.その他のBR活性の評価方法
としては,Brzで処理することにより矮化を誘導した植物に対するBR活性を調べる
実験系がある.
BRが様々な植物生理活性を持つことから,植物の生理機能解明のためのツールや
農薬への応用などが考えられ,様々な生化学的,分子生物学的,有機化学的研究が
おこなわれてきた(Kamuro and Takatsuto, 1999).しかし,BRの植物含有量が非常に
低く,また合成も高価であることが研究の障害となってきた.そのような中で,20
世紀後半から21世紀の初頭にかけてBRの合成研究が積極的に行われたが(McMorris,
1999; Watanabe et al., 2003; Watanabe et al. 2004a; Watanabe et al., 2004b; Uesusuki et al.,
3

2004; Yamamoto et al., 2006; Watanabe et al., 2017),合成には時間がかかった.植物中
での存在量が少ない,合成にコストがかかるといった点は農薬としての実用を考え
た際にも大きな問題となるため,合成の容易なBR様活性化合物が求められている.
BR合成が高価である原因の一つは,BRがステロイド骨格を持つことによる.したが
って,非ステロイド型の活性化合物を探索することが,合成の容易な活性化合物を
開発する上で一つの鍵となる.一般的にホルモン様活性化合物やそのアンタゴニス
ト,生合成阻害剤の応用研究は古くから行われており,農薬の分野では,オーキシ
ン活性を持った2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-D)が除草剤として利用されてい
る.また,20世紀の終わりには,昆虫幼若ホルモン活性を示すフェノキシカルブ
(Grenier et al., 1993)やピリプロキシフェン(Kawada et al., 1989)などが,さらにその直
後に昆虫の脱皮ホルモン様活性を示すジアシルヒドラジン類が農業用殺虫剤として
登場した(Wing, 1988; Wing et al., 1988; Hsu, 1991).特にジアシルヒドラジン類は,脱
皮ホルモンの基本構造であるステロイド骨格を持たない非ステロイド型の化合物で
ある.医薬の分野においても女性ホルモンであるエストラジオールの作用をもつ非
ステロイド化合物であるジエチルスチルベストロールが実用化された(Dodds et al.,
1938).
従来,そのような新規構造の発見を目指した研究はランダム合成や類縁体合成に
頼っていたが,21世紀に入り,コンピュータの計算能力向上,酵素や受容体などの
タンパク質立体構造データの充実などによって,コンピュータ内(インシリコ)でのス
クリーニングや分子設計が容易に行えるようになってきた.例えば,新規構造をも
つ化合物の代表的な探索方法としてハイスループットスクリーニング(HTS)がある
が,機械化可能な活性試験法の確立,専用機械の開発,さらに探索対象となる大規
4

模化合物ライブラリなどそのハードルは高い.一方で,既存の活性化合物(リガンド)
の構造や標的タンパク質の構造から新規化合物の探索を行うインシリコスクリーニ
ングは,設備や化合物のライブラリを必要としないためHTSに比べて実施が容易で
ある.かつてはコンピュータの性能や検索対象になる化合物構造データベースの規
模による制限があり,創薬の現場では実用に耐えないとされてきたが,計算技術の
進歩,アルゴリズムの高度化,タンパク質立体構造や化合物構造のデータベースの
充実などが急速になされており,現在では標的化合物への親和性の高い化合物を選
抜することが可能となっている.インシリコでのスクリーニングや分子設計の手法
は既に医薬品開発では積極的に利用されており,インフルエンザ治療薬オセルタミ
ビル(商品名タミフル)など,実用化に至った化合物もある(Lew et al., 2000).しか
し,農薬開発における応用例は未だ少ない.
BLをはじめとするBRは,ステロイド骨格を持たない新規構造アゴニストが求めら
れていること,受容体への結合様式が詳細に解明されてきたことから,インシリコ
の手法を用いたスクリーニングを行う対象として適していると考えた.インシリコ
スクリーニングには大きく分けて2つのアプローチ,すなわちタンパク質構造に注目
するSBDD (Structure-based Drug DesignあるいはDiscovery)と,既知のリガンドの構造
に注目するLBDD (Ligand-based Drug DesignあるいはDiscovery)がある(中川,赤松,
2018).SBDDは標的タンパク質の構造とフィットする構造の化合物を探索する方法
であり,LBDDは既存の活性化合物と類似した構造の化合物を探索する方法である.
前者は既存の活性化合物と異なる結合様式を持つ化合物も探索対象にできるという
メリットがあり,後者には標的タンパク質の構造が不明でも探索を行えるというメ
リットがある.
5

本研究は,インシリコの手法を用いたBLアゴニストの創出を目的としており,
SBDDとLBDDを組み合わせたPharmacophore-based screeningの手法を用いた化合
物探索を行った.探索で得られた化合物の構造変換により非ステロイドの新規BLア
ゴニストを創出し,その構造活性相関について解明を試みた.

6

第2章

インシリコでの化合物探索および分子設計手法

2-1 諸言
前述のように,BRは細胞膜上に存在するレセプターキナーゼBRI1によって認識さ
れる.BRI1は結晶構造解析が難しいとされる膜貫通型のタンパク質で,1997年に
Choryらによって同定されて以来,長らく立体構造が不明であった.しかし,2011
年にHothornら,SheらによってBRI1-BL複合体の結晶構造が解明されたことで
(Hothorn et al., 2011; She et al., 2011),SBDDの手法を用いたBLアゴニスト探索が
可能となった.また,2013年にSantiagoらによりBRI1-SERK1-BL複合体構造が解明
され(Santiago et al., 2013),アゴニスト分子が機能する分子生物学的機構が明らか
になったことも,アゴニスト探索および分子設計を行うための重要な進歩となっ
た.
本研究で用いた計算科学技術としては計算コストが軽い順にファーマフォアベー
ススクリーニング,ベースドッキングシミュレーション,MM-PBSA/GBSAによる
エネルギー計算,MDシミュレーションがある.ファーマフォアベーススクリーニ
ングでは,リガンド-タンパク相互作用に必要な官能基群(ファーマコフォア)を定義
し,同様のファーマコフォアを持つ化合物をデータベースから選抜する.ドッキン
グシミュレーションではタンパク構造に対して化合物をドッキングし,結合配座を
予測する.また,ドッキング時にはスコア関数に基づいたドッキングスコアが算出
され,結合配座の確からしさの指標となる.MM-PBSA(Kollman et al., 2000;
Horoiwa et al., 2019)およびMM-GBSA(Genheden and U. Ryde, 2011;
Genheden and U. ...

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