Energy Expenditure and Oxygen Uptake Kinetics in Critically Ill Elderly Patients
概要
〔目 的(Purpose)〕
ICUで集中治療を要す患者における安静時消費エネルギー(Resting energy expenditure (REE))の測定は栄養投与量決定の参考となり、よりよい栄養管理につながる可能性がある。若年者では侵襲に伴うエネルギー消費の増大に対して酸素運搬量(Oxygen delivery(DO2))を増加させることが報告されている。一方、近年のICUの主な治療対象者である高齢者における急性期のエネルギー消費量や酸素摂取動態は明らかにされていない。本研究では、急性期における、REE、DO2、酸素摂取率(O2 Ext)を測定し重症高齢患者における消費エネルギーと酸素摂取動態を明らかにすることを目的とした。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
本研究は人工呼吸管理を要した102例(敗血症33例、外傷22例、脳卒中12例、心肺停止蘇生後22例、その他13例)を対象とした後方視的観察研究である。ICU入室後5日以内に、酸素消費量、二酸化炭素産生量、心拍出量を間接熱量計と低侵襲心拍出量モニターを用いて同時に測定した。動脈血液ガス分析も合わせて行い、REE、DO2、O2 Extを算出した。65歳以上を高齢者群、65歳未満を非高齢者群とし、REE、DO2、O2 Exを比較した。
102例中、53例が高齢者群であった。高齢者群では非高齢者群と比較して心係数が有意に低かった(2.5±0.2 vs. 3.9±0.2ml/min/m2; p<0.01)。理想体重(Ideal body weight(IBW)に対するREEは高齢者群で非高齢者群と比較して低い傾向を認めた(22.3±9.7 vs. 25.1±8.3kcal/kg/day; p=0.07)高齢者群ではREE/IBWのばらつきは大きく、絶対偏差は非高齢者群と比較して有意に高かった(9.3±6.9 vs. 6.3±6.6kcal/kg; p<0.01)。DO2は年齢と負の相関関係を認め(p<0.01)、O2 Extは高齢者群で非高齢者群と比較して有意に高かった(37±19% vs. 29±13%; p=0.03)。
〔総 括(Conclusion)〕
重症高齢者における急性期のエネルギー消費量ならびに酸素摂取動態を評価した。高齢者群ではばらつきの大きなREE、加齢による心機能障害にともなうDO2低下、高いO2 Extが見られた。高齢者では急性期におけるエネルギー需要の増大に対する代償機転としてDO2の増加よりもO2 Extの上昇が顕著であり、組織の低酸素状態に陥る危険性が高いと考えられた。