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大学・研究所にある論文を検索できる 「手浴の効果に対する生理学的エビデンスの確立」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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手浴の効果に対する生理学的エビデンスの確立

中野 元 富山大学

2021.03.23

概要

〔目的〕
手浴は清潔ケアだけでなく,爽快感を得る,リラックス感をもたらす,やる気が向上する等の効果が明らかにされている.しかし,生理学的見地からその効果を明らかにする報告は多くない.また,自律神経系に対する手浴の影響については,副交感神経活動を亢進するという報告がある一方,交感神経活動が亢進するという報告や効果が不明であるとする報告も混在しており,見解が一致していない.その理由として,手浴実施前の対象者の自律神経活動によって手浴の効果が異なる可能性が考えられているが,その可能性を実験的に明示した報告はない.そこで,手浴が自律神経活動に及ぼす影響を明らかにするため,実験的に交感神経活動が亢進している状態および副交感神経活動が亢進している状態を誘発し,それぞれの状態における手浴の自律神経系および中枢神経系への効果を検討することを目的とした.

〔方法並びに結果〕
研究に対して同意を得られた 20 歳代~30 歳代の成人健康ボランティア 23 名( 男性 7名,女性 16 名)を対象とした.実験は窓が無く,ダウンライトにより薄暗くした実験室にて行った.実験中,対象者の姿勢は 30°のセミファーラー位とした.湯温は,恒温槽を用いて 39 ±0.1℃で管理を行いった.自律神経活動の測定のため,ワイヤレス生体センサーを用いて胸部誘導心電図を測定した.記録した心電図波形の R-R 間隔から心拍変動を算出し,定法に従い周波数解析により自律神経活動を測定した.また,中枢神経活動の測定として,脳血行動態 (Oxy-Hb)を Near Infrared Spectroscopy (NIRS) を用いて測定した.手浴実験では,まず 2 分間安静座位を行い,その後両手を湯に橈骨茎状突起まで浸ける手浴を 3 分間行い,手浴終了後は速やかにタオルで手の水分を拭き取り,3 分間安静とした.対照実験では手浴を施さなかった.

実験的に交感神経活動を賦活する課題として,手浴中に暗算負荷を行った.その結果,対照実験および手浴実験のいずれにおいてもLF/HF(交感神経活動指標)は増加傾向を示した.この結果は,暗算負荷により対象者が精神的なストレス状態になっていることを示している.しかし,手浴実験では対照実験に比べ,LF/HF の増加は有意に低値を示していた(p<0.05).すなわち,手浴実験では交感神経活動の上昇が有意に抑制されていた.また,左前頭前野の Oxy-Hb の変化値は,対照実験では 0.19(0.40~-0.02)mMol/cm であったのに対し,手浴実験では 0.26(0.69~ 0.12)mMol/cm で有意に上昇していた(p<0.05).さらに,暗算の正答率は対照実験で 0.91(0.94~0.69)であったのに対し,手浴実験では 1.00(1.00~0.94)であった.統計学的解析の結果,対照実験に比べて手浴実験では正答率が有意に高値を示していた(p<0.05).

副交感神経活動を賦活する課題として,閉眼を行った.その結果,対照実験のLF/HF は-0.09(0.24~-0.58)であり.若干の減少傾向を示した.一方,手浴実験の LF/HF は 0.49(0.85~-0.03)であり.増加傾向を示した.統計学的解析の結果,対照実験に比べて手浴実験では LF/HF が有意に高値を示した(p<0.05).すなわち,手浴実験では交感神経活動が有意に上昇していた.一方,左前頭前野の Oxy-Hb の変化値は,対照実験では-0.02(0.12~-0.20)mMol/cm,手浴実験では 0.03(0.14~- 0.10)mMol/cm で有意な差を認めなかった.

以上から,手浴は交感神経活動が優位な状態では交感神経活動の亢進を抑制し,副交感神経活動が優位な状態では交感神経活動を亢進することが実験的に示された.この知見は,これまで報告されていない新知見である.さらに,手浴中は左前頭前野が活性化し,暗算の正答率が上昇することも示された.左前頭前野は遂行機能の他,快情動とも関連があると言われており,手浴による前頭葉機能の活性化および主観的な快情動を示している可能性が考えられた.

〔総括〕
1. 手浴は,交感神経活動が優位な状態では交感神経活動を低下させ,副交感神経活動が優位な状態では交感神経活動を亢進させることが示された.このことから,手浴は自律神経系のバランス調節作用があり,臨床応用が可能であると考えられた.

2. 手浴は,交感神経活動が優位な状態では左前頭前野のOxy-Hbを増加させ,暗算の正答率が上昇したことから,前頭葉機能を亢進する可能性が考えられた.また,左前頭前野の活性化は,主観的な快情動を示している可能性が考えられた.

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