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大学・研究所にある論文を検索できる 「骨細胞由来の長鎖ノンコーディングRNAが骨芽細胞の分化過程で果たす役割の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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骨細胞由来の長鎖ノンコーディングRNAが骨芽細胞の分化過程で果たす役割の解明

荒井, 誠 東京大学 DOI:10.15083/0002002384

2021.10.13

概要

2000年代初頭のヒトゲノム計画でゲノムの大部分は蛋白質をコードしていないということが驚きをもって報じられて以降、蛋白質をコードしないノンコーディングRNAが注目されてきた。ノンコーディングRNAにはマイクロRNAなどの小分子RNAも含まれる一方で、数百~数千塩基からなる長鎖ノンコーディングRNAも、その多様な作用機構を有する故、様々な生命現象への関与が近年続々と明らかになってきている。

 こうした生命現象は全身のどの臓器にもあてはまり得るが、その中で骨組織は従来は単なる支持的な組織と思われ、注目を浴びていなかった。しかし今や、骨組織は絶えずリモデリングを続け、また他臓器との相互作用も有する動的な臓器であると認識されている。こうした骨リモデリングの両輪は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成であるが、最近では骨組織の大多数を占める骨細胞もただ骨基質中に埋もれた細胞であるだけではなく、周囲の細胞とのコミュニケーションを介して多面的な作用を果たすことが認知されてきている。

 このように骨組織の中でも大多数を占め、多様な機能を有する骨細胞の重要性が増しているにも関わらず、骨細胞の研究はまだ十分に進んでいるとは言い難い。長鎖ノンコーディングRNAに関しても、そもそも骨組織の長鎖ノンコーディングRNAの報告も骨芽細胞などに関する数報に留まっており、骨細胞の長鎖ノンコーディングRNAに関しては未だ報告がない。しかし、長鎖ノンコーディングRNAは、発生・分化などの生理機能のみならず、癌などの病態にも深く関わっていることが近年次々と明らかになってきていることから、現時点ではその報告がない骨細胞の長鎖ノンコーディングRNAも、骨細胞の生理機能および病態に関与することが予想され、それを通じて骨代謝の研究が進展することが期待される。そこで私は、骨細胞における長鎖ノンコーディングRNAの意義を明らかにすることを目的に本研究を行った。

 まず私は骨細胞に特徴的な長鎖ノンコーディングRNAを抽出するために、骨細胞がEGFP標識されたDmp1-Cre;EGFPマウスの大腿骨から、フローサイトメトリーを用いてEGFP陽性および陰性細胞を分取し、RNAシークエンスに供することで骨細胞に特徴的な長鎖ノンコーディングRNAを複数同定した。続いてこれらの長鎖ノンコーディングRNAをマウスの骨細胞の細胞株であるIDG-SW3細胞に遺伝子導入し、骨芽細胞から骨細胞への分化に及ぼす影響を比較した。その中で、分化を強力に抑制する全く新規の長鎖ノンコーディングRNA 9530026P05Rikに注目した。

 9530026P05Rikを恒常的に発現するIDG-SW3細胞株では、骨形成に重要な転写因子であるOsterix遺伝子およびそれ以降の骨形成マーカー遺伝子の発現が低下していた。このことは9530026P05Rikのノックダウン実験でも裏付けられた。

 そこで、9530026P05RikがどのようにしてOsterixの発現低下につながるかを検討する中で、私は骨芽細胞から骨細胞への分化に重要で、かつOsterixの発現調節にも関与するWnt/βカテニン経路に着目し、9530026P05Rik恒常発現株では同経路が抑制されていることを突き止めた。FISHによって9530026P05Rikは核内に局在することが示され、また、RNAプルダウンによって9530026P05Rikは核内蛋白質であるCCAR2と結合することが明らかになった。

 骨組織でのCCAR2の機能解析を進めると、CCAR2はWnt/βカテニン経路を亢進させることで骨芽細胞から骨細胞への分化を促進することが示唆された。

 更に私は、このCCAR2の作用に9530026P05Rikがどのように関与しているかをより詳細に検討した。免疫沈降およびクロマチン免疫沈降の結果から、CCAR2はヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC1と結合してその機能を阻害することが示唆され、また、9530026P05RikはこのCCAR2の作用を抑制することで結果的にOsterix遺伝子のプロモーター上でH3K27のアセチル化レベルが低下し、Osterix遺伝子の転写が低下していると推測された。

 本研究は、近年重要性が増しているにも関わらず長鎖ノンコーディングRNAの報告がなかった骨細胞に着目し、骨細胞における長鎖ノンコーディングRNAの意義を初めて明らかにした報告である。9530026P05Rikのノックダウンにより骨芽細胞から骨細胞への分化が促進されたことから、今後骨細胞の長鎖ノンコーディングRNAが、骨粗鬆症をはじめとした高齢化とともに増加の一途にある骨代謝疾患の新たな治療標的になる可能性もあり、今後の一層の研究が待たれる。

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