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大学・研究所にある論文を検索できる 「黒毛和牛における妊娠期の栄養が胎児発達に及ぼす影響に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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黒毛和牛における妊娠期の栄養が胎児発達に及ぼす影響に関する研究

張, 禕 ZHANG, YI チョウ, イ 九州大学

2021.12.31

概要

現在、食肉の生産の現場においては、高い生産性に留まらず、環境保全、食の安全、アニマルウェルフェア、物質循環などを考慮した持続的で効率的な生産システムの構築が求められている。その中で、大型の反芻家畜における効率的生産システム開発には、肥育に対する飼料の選択や飼養方法の探求に加え、生涯にわたり動物体に大きく影響する胎児期における妊娠母牛の栄養と胎児発生及び発達プロセスの詳細な解析が必要である。本研究は、黒毛和牛の妊娠期栄養の差異が、胎児の発達にどのような影響を与えるのかを、形態学、生理学及び分子生物学的手法を用いて調査した。妊娠前期の黒毛和牛雌牛に、栄養要求量の60%を給与する群(60%群)と120%を給与する群(120%群)を設定した。妊娠260日に帝王切開により胎児を取り出し、屠畜後、形態学的に解析を行った。胎児の体重と枝肉重量は120%群で有意に高かった(P<0.05)。調査した17のうち10の臓器、20種のうち17種の骨格筋、6部位のすべての脂肪組織、及び12種のうち9種の骨は120%群で60%群よりも高い傾向にあった(P<0.10)。これらの結果から、妊娠期の栄養は胎児の形態に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。

 次に、胸最長筋(ロース肉)と半腱様筋(外モモ肉)について、その組織化学的特性、筋形成、脂肪形成及びグルコース代謝に係る遺伝子及びmicroRNA発現について調査を行った。胸最長筋の筋線維サイズは60%群で大きかったが、一次筋束内の筋線維数が少なく、全体として60%群で筋線維数が少ないことが確認された。筋線維型構成において、両骨格筋ともに120%群でIIB型筋線維の割合が高く、I型筋線維の割合が低かった(P<0.05)。遺伝子発現では、60%群で筋形成に係る遺伝子発現が高く、逆に120%群で脂肪形成ならびに糖代謝に関わる遺伝子発現が高い傾向にあった(P<0.10)。60%群では筋形成に関わるmicroRNAの発現も高かった(P<0.05)。半腱様筋でも同様の傾向が認められたが、胸最長筋ほど明確な発現差異は認められなかった。60%群は筋形成に関わる遺伝子発現を高め、サイズの肥大化で筋細胞数の減少を補完することが示唆された。一方、120%群では、母牛の余剰なエネルギー摂取により脂肪形成や糖代謝が亢進することが示唆された。

 さらに、皮下脂肪、胸腹腔内脂肪及び腎脂肪の組織化学的特性と、それらの脂肪形成及びグルコース代謝に係る遺伝子ならびにmicroRNAの発現について調査を行った。皮下脂肪と腎脂肪では、120%群の脂肪細胞のサイズが60%群よりも大きかった(P<0.05)。遺伝子発現では、皮下脂肪、胸腹腔内脂肪及び腎脂肪のすべての部位で、褐色脂肪細胞の形成に関わる遺伝子発現が60%群で高い傾向にあった(P<0.10)。また、皮下脂肪のみで脂肪形成と糖代謝に関わる遺伝子の発現が高くなる傾向にあった(P<0.10)。脂肪形成に関わるmicroRNAの発現では、脂肪の部位に依存して両群間に差異が生ずる傾向(P<0.10)が認められた。以上のことから妊娠期の栄養は、胎児の骨格筋と脂肪の形態だけでなく、組織化学的特性、遺伝子発現及びmicroRNA発現に影響することが明らかとなった。

 黒毛和牛における妊娠期栄養は、胎児の形態、骨格筋と脂肪組織の組織化学的特性、またその発達や代謝に関わる遺伝子発現に大きく影響を及ぼすことが判明した。大型反芻家畜における妊娠期栄養が、胎児の発達に大きく影響することを明らかにした本研究の成果は、生後の効率的飼養技術の開発における畜産研究分野の科学的基礎知見として意義が大きく、新たな牛肉生産システムの構築に寄与するものと期待される。

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