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大学・研究所にある論文を検索できる 「Investigation of the mechanism of gametogenesis in the emerging model newt, Pleurodeles waltl」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Investigation of the mechanism of gametogenesis in the emerging model newt, Pleurodeles waltl

客野 瑞月 広島大学

2022.03.23

概要

脊椎動物において、⽣殖細胞は次世代を⽣み出すことができる唯⼀の細胞であり、全ての⽣殖細胞は発⽣初期に形成される始原⽣殖細胞(PGC)に由来する。その決定様式は動物により異なり、ツメガエル、ゼブラフィッシュ、ニワトリは、卵の細胞質における⺟性因⼦の局在によりPGCが決定される「⽣殖質型」、マウスなどの哺乳類は⺟性因⼦に依存せず細胞間相互作⽤によりPGCが誘導される「誘導型」に分類される。有尾両⽣類のイモリは、卵の形態は⽣殖質型のツメガエルによく似ているが、哺乳類と同じくPGCが誘導作⽤により決定されることが⽰唆されている。また雄個体は、性成熟後も精巣を新⽣する、あるいは精巣を摘出しても再⽣することができるが、これは精巣に隣接する結合組織内にPGC様の細胞を維持しているためであると考えられている。イモリにおいてPGCが決定される機構や、PGCから⽣殖細胞が分化する仕組みを理解することは、⽣殖細胞形成機構の全体像や多様性を理解する上で重要であるが、未だ不明な点が多い。

従来の研究に⽤いられてきたアカハライモリなどは性成熟まで2-3年を要する、繁殖が季節性である、産卵数が少ないなどの性質のため、研究が難しかった。そこで私は所属する研究グループの⼀員として、年間を通じた⼤量繁殖を容易に⾏えるイベリアトゲイモリを導⼊して、遺伝⼦操作をはじめとする実験系を確⽴してきた。これによりイモリにおけるPGCの決定機構を分⼦⽣物学のレベルで解析することが可能になった。しかしながら、イモリでは⽣殖細胞あるいは⽣殖巣の発達に関する基本的な情報がほとんど存在しなかった。そのため、私はまずイベリアトゲイモリにおける⽣殖巣の詳細な形成過程を明らかにした上で、イモリにおけるPGC決定の分⼦機構の解明を⽬指した。

第1部イベリアトゲイモリにおける精巣の形成過程の解析
イベリアトゲイモリの幼⽣期から成体における精巣の発達過程の詳細を調べた。受精後2ヶ⽉から⽣殖巣の形態に雌雄差が現れ、受精後6ヶ⽉で受精能のある精⼦が採取された。また、精⼦形成は成体を解剖した時期によらず、精巣内で観察された。さらに、環境条件が⽣殖細胞の分化に与える影響を明らかにするため⽇照時間を⻑⽇条件および短⽇条件に設定して受精後2ヶ⽉から飼育し、受精後6ヶ⽉の成体雄において解剖をしたが、精巣の発達に形態的な違いは確認されず、どちらの条件でも同様に⽣殖細胞の増殖が観察された。これらの結果から、飼育下のイベリアトゲイモリの性成熟に要する期間は他種イモリと⽐較して極めて短く、また雄性⽣殖細胞の分化が時期や⽇照時間に影響を受けないことが判明した。

第2部⽣殖細胞形成における遺伝⼦機能解析
イモリ⽣殖細胞にて特異的に発現する遺伝⼦であるdazlおよびvasaの機能解析を⾏なった。dazlとvasaは⽣殖細胞形成に関連する遺伝⼦として保存されており、イモリにおいて両遺伝⼦は精巣・卵巣で発現するだけでなく未受精卵に⺟性因⼦として存在する。そこで、⺟性因⼦の機能阻害および接合⼦核に由来する遺伝⼦発現の⽋損による⽣殖細胞形成への影響を解析した。その結果、⺟性因⼦のdazlmRNAの阻害により⽣殖腺原基でのPGCの数が減少したが、CRISPR/Cas9によりdazlの接合⼦由来の発現を⽋損させた個体では、⽣殖腺原基に存在していたPGCが性分化前の増殖期において著しく減少し、成体の雌雄はともに不稔となった。⼀⽅、vasa遺伝⼦を破壊した個体およびその交配により得られた⺟性因⼦含むvasaを完全に⽋損した個体において、⽣殖細胞形成に異常は確認されなかった。これにより、有尾両⽣類の⽣殖細胞形成においてvasaは必須でないが、dazlは⺟性因⼦としてPGC形成の初期段階に機能し、接合⼦由来の発現によりその後のPGCの分化あるいは増殖に必要であることが明らかになった。

これらの研究成果により、新規のモデル動物であるイベリアトゲイモリにおける雄性⽣殖細胞の詳細な形成過程が⽰された。また、飼育環境下にあるイベリアトゲイモリでは⽣殖細胞形成が年間を通じて進⾏することが明らかになった。ゲノム編集などの遺伝⼦操作が可能であることからも、本種が有尾両⽣類の⽣殖細胞形成の分⼦機構の解析に適した実験系であることが⽰された。加えて、⽣殖細胞は遺伝⼦操作の対象ともなるため、その基本情報はイベリアトゲイモリのモデル動物としての価値を⾼めるだろう。⼀⽅PGC形成機構に関しては、従来考えられていた⼆者択⼀的な機構と異なり、誘導型であるとされるイモリのPGC形成において⺟性因⼦として存在するdazlが必要であることを⽰したことで、有尾両⽣類のPGC決定が誘導型と⽣殖質型の両⽅の特徴を持つことが⽰唆された。イベリアトゲイモリの実験系を⽤いることで、マウスやツメガエルといった先⾏するモデル⽣物との⽐較が可能になり、有尾両⽣類だけでなく脊椎動物全体において⽣殖細胞形成に関する新たな知⾒が得られることが期待される。

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