リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「イベリアトゲイモリ単球マーカー遺伝子csf1rの発現について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

イベリアトゲイモリ単球マーカー遺伝子csf1rの発現について

長谷部 ももこ 中央大学

2022.07.06

概要

[背景と⽬的]
 マクロファージは⽩⾎球の⼀種で,貪⾷作⽤や抗原提⽰,サイトカイン・ケモカイン分泌によって⾃然免疫系に幅広く寄与していることが知られている.⾎中マクロファージはほぼ⾻髄由来であるが,組織に存在するマクロファージは,少なくともマウスにおいて,卵⻩嚢・胎仔肝・⾻髄の少なくとも3種類の異なる起源をもつと考えられている.また,このような各組織に恒常的に存在するマクロファージは組織常在性マクロファージと呼ばれ,共通して貪⾷能をもち,異物の除去や組織の修復等を⾏うことで,組織の恒常性を保っていると考えられる.さらに最近の研究ではマクロファージが組織の再⽣に関与していることが報告されている(Godwin et al., 2013).そこでマクロファージによる再⽣への影響を調べるため,再⽣能⼒の⾼いイベリアトゲイモリを実験材料として⽤いることにした.しかし,両⽣類のマクロファージに関する知⾒は⾮常に少ないため,まず,単球/マクロファージのマーカー遺伝⼦の⼀つであるCsf1rに注⽬した.CSF1RはCSF1およびIL34の受容体で,単球・マクロファージの⽣存,増殖,分化に関与するチロシンキナーゼである.このイベリアトゲイモリCsf1rを同定するため,候補遺伝⼦を探索し,その発現解析および機能解析を⾏なった.

[結果]
 イベリアトゲイモリCsf1r相同遺伝⼦の探索を⾏ったところ,ヒトと46.4%のアミノ酸の配列相同性をもつ遺伝⼦が存在したため,これをイベリアトゲイモリのCsf1r候補遺伝⼦とした.るRT-PCRの結果,この遺伝⼦は神経胚期のステージ18以降で発現していることが⽰唆された.また成体では脳,脾臓,肺,⼼臓,⼩腸,精巣,胆嚢,腎臓,⾎液,肝臓で発現していることがわかった.さらにCsf1r候補遺伝⼦のペプチドを⽤いて抗⾎清を作製し,これを⼀次抗体としてイベリアトゲイモリの各組織において免疫染⾊を⾏った.その結果,⽪膚,肝臓,肺,⼩腸で特定の細胞の細胞膜が染⾊された.配列情報と免疫染⾊の結果より,この遺伝⼦がイベリアトゲイモリCsf1r相同遺伝⼦であると結論づけた.
 Csf1rの機能を調査するため,CRISPR/Cas9システムを⽤いて遺伝⼦のノックアウトを試みた.CRISPR/Cas9処理胚において初期発⽣では異常な表現型は観察されず,幼⽣期までは正常に発⽣した.幼⽣期以降,CRISPR/Cas9処理個体のうち,1個体は野⽣型に⽐べ体⻑が短かった.このCRISPR/Cas9処理個体において尾の再⽣実験を⾏なったところ,他と⽐べ尾の再⽣が遅れた.このことは,Csf1rのノックアウトが成功したことを意味するのかもしれない.

[考察]
 Csf1rおよびそのリガンドは,哺乳類以外の多くの種でもその存在と機能が報告されており,多くの脊椎動物で保存されていると考えられる.イベリアトゲイモリにおいてもヒトのCsf1rと46.4%のアミノ酸配列相同性をもつ遺伝⼦が存在することがわかった.全体の相同性は50%以下であるが,免疫関連遺伝⼦は他の遺伝⼦と⽐べて遺伝⼦変異速度が早いことが知られており,哺乳類間でもそれほど⾼い相同性がみられない(Kuma et al., 1995).
 RT-PCRおよび免疫染⾊による発現解析により,発現開始時期と局在が判明し,成体の⽪膚および肝臓,肺,⼩腸においてタンパク質レベルでその発現を確認できた.ヒトと共通の組織で発現している場合が多く,配列相同性の⾼さと合わせて,候補遺伝⼦はヒトのCsf1rと相同遺伝⼦である可能性が⾮常に⾼く,イベリアトゲイモリCsf1r遺伝⼦が同定できたと考えられる.
 マウスやラットにおいてCsf1rを⽋損させると,⼤理⽯病の発症や出⽣後の成⻑遅延,受精能の低下,循環単球や組織マクロファージの喪失あるいは減少が報告されている(Dai et al., 2002).今回,幼⽣イベリアトゲイモリでCsf1rのノックアウトを試みたところ,CRISPR/Cas9処理個体のうち1個体で野⽣型に⽐べて体格が⼩さい表現型が⾒られた.これはCsf1rあるいはCsf1を⽋損したマウスの表現型と⼀致している.この外⾒的特徴から,Csf1rがヒトCsf1rの相同遺伝⼦であり,その機能も同様である可能性が考えられる.また,この個体において再⽣実験を⾏なったところ,尾の再⽣が遅れた.このことは,現段階では断定できないが,再⽣の遅延が発⽣した個体において,CRISPR/Cas9によりCsf1rのノックアウトが成功したことでマクロファージに影響を及ぼした可能性が考えられる.
 イベリアトゲイモリにおいてマクロファージマーカーとしてCsf1rを同定したことで,有尾両⽣類におけるマクロファージに関する新たな知⾒を提供し,将来的には再⽣メカニズムの解明に貢献できるだろう.

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る