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大学・研究所にある論文を検索できる 「LPCAT2 Methylation, a Novel Biomarker for the severity of Seasonal Allergic Rhinitis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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LPCAT2 Methylation, a Novel Biomarker for the severity of Seasonal Allergic Rhinitis

渡辺 浩介 山梨大学 DOI:info:doi/10.34429/00004867

2020.12.17

概要

■研究の目的■
本邦の鼻アレルギーガイドラインでは、アレルギー性鼻炎(Allergic Rhinitis, AR)は重症度ごとに治療方針が選択されているが、重症度は患者への詳細な問診でのみ判定される。現状では重症度に関連するバイオマーカーはない。本研究の目的は、季節性ARであるスギ花粉 症(Cedar Pollinosis, CP)を対象に、末梢血単核細胞( Peripheral blood mononuclear cells, PBMCs)と鼻粘膜を解析し、ARの重症度のバイオマーカーとなるエピゲノムを解析することである。本研究の解析対象遺伝子は、エピゲノムの先行研究でIgE抗体やARとの関連が示されているLPCAT2、IL4、ACOT7、MUC4、SLFN12とした。

■方法■
【対象者】
 2019年3月19日から4月30日の間( スギ花粉飛散時期) に、山梨大学医学部附属病院、頭頸部・耳鼻咽喉科の外来受付にてCP症状の有無によらず参加者を募集した。参加者には書面を用いて説明し同意を得た。山梨大学医学部倫理委員会の承認を得ている。(No1963)

【解析対象】
 対象者から末梢血と鼻粘膜の擦過細胞( nasal mucosa scraping cells, NMSCs) を採取した。日本の鼻アレルギー診療ガイドラインを参考にCPの重症度を判定した。

【IgE抗体】
 IgE抗体はFEIA法にて測定された( BML.Inkに外注)。非特異的IgE抗体と4つの抗原特異的 IgE抗体( スギ花粉、ハンノキ、カモガヤ、ダニ) の測定を行った。

【CPの定義、無症状者の分類】
 CPの定義は以下の①から③をすべて満たすものとした。①スギ花粉飛散時期にAR症状(くしゃみ、鼻漏、鼻閉)を3年以上繰り返すこと、あるいは医師にスギ花粉症と診断されていること、② 受付の時点でAR症状があること、③ スギ花粉特異的IgE抗体が0.7UA/mL以上であること。なお本検討では抗原特異的IgE抗体が0.7UA/mL以上( class2以上)のとき、該当抗原の感作陽性とした。また、症状のない者は、スギ花粉感作陰性の群をSen(-)Sym(-)群、スギ花粉感作陽性の群をSen(+)Sym(-) 群とした。( CP はスギ花粉感作陽性で症状があるため Sen(+)Sym(+)とも言い換えられる。)

【DNAの抽出、DNA methylation analysis( バイサルファイトシーケンス法)】
 末梢血から分離したPBMCと、鼻粘膜の擦過で得られたNMSCからDNAの抽出を行った。各DNAはバイサルファイト変換を行ったのち、本研究のメチル化解析対象領域(LPCAT2、IL4、ACOT7、 MUC4、SLFN12のそれぞれの領域)が含まれるようにPrimerを設計しPCRにて領域を増幅した。その後のメチル化解析は次世代シーケンサーを用いた。この手法はバイサルファイトシーケンス法で、DNA上の領域を自由に指定して、その領域内の個々のCpG単位のメチル化レベルまで算出可能である。

【統計解析】
各遺伝子の平均メチル化レベルと非特異的IgE抗体、またスギ花粉特異的IgE抗体( CS IgE )との相関解析はPearson correlation coefficient tests を行った。 CP と Sen(+)Sym(-) とSen(-)Sym(-) の3 群の各遺伝子の平均メチル化レベルの比較にはANOVAを行い、その後2群ずつStudent's t-testsを行った。各遺伝子の平均メチル化率と重症度の傾向検定には、Jonckheere-Terpstra検定を用いた。P<0.05を統計学的に有意とした。解析ソフトはSAS version 9.4 (SAS Institute, Cary, N.C.)を用いた。

■結果■
【参加者】
 参加者は合計70名で有症状37名(そのうちCPは32名、UCPは15名)、無症状33名( Sen(+)Sym(-)13名、Sen(-)Sym(-)19名) であった。

【非特異的・スギ花粉特異的IgE抗体、およびDNAのメチル化】
 70名の参加者の非特異的およびスギ花粉特異的IgE抗体とPBMCおよびNMSCの各遺伝子の平均メチル化について解析した。非特異的IgE抗体はPBMCのIL4の平均メチル化と有意な相関を認めた( r=-0.46, P<0.0001)。スギ花粉IgE抗体はPBMCのIL4、MUC4の平均メチル化と有意な相関を認めた( それぞれr=-0.31, P=0.01、r=-0.241, P=0.046)。

【症状の有無、スギ花粉感作の有無に関するDNAのメチル化】
 Sen(-)Sym(-)群19名、Sen(-)Sym(+)群13名、CP群32名について、PBMCおよびNMSCの各DNAのメチル化レベルの差を解析した。PBMCにおけるIL4の平均DNAメチル化レベルは、Sen(-)Sym(-)群ではSen(+)Sym(-)群およびCP群に比べて有意に高かった( それぞれP=0.002、P=0.014)が、 Sen(+)Sym(-)群とCP群では有意な差は認められなかった。すなわち、PBMCのIL4のメチル化レベルはスギ花粉感作の有無では有意な差を認めたが、症状の有無では有意な差は認められなかった。

【重症度とDNAのメチル化】
 UCP群15名のそれぞれの重症度( 軽症3名、中等症7名、重症/最重症5名)ごとに、メチル化レベルの傾向を検定すると、NMSCのLPCAT2のメチル化レベルのみ重症度が増すに従い有意に低下する傾向を認めた。( P=0.027, Jonckheere-Terpstra test)

■考察■
 IL4とMUC4のメチル化レベルはIgE抗体との関連を認めたものの、いずれも症状の有無や重症度とは統計学的に有意な関連は見いだせなかった。NMSCにおけるLPCAT2のメチル化は重症度と関連した。LPCAT2は、PAF(Platelet-activating factor)の産生に関連しており、PAFは鼻汁の分泌や鼻粘膜の腫脹に関連するため、LPCAT2と重症度との関連は理解しやすい。PBMCではなくNMSCのLPCAT2のメチル化レベルが重症度と有意な傾向を認めたが、鼻粘膜は外界の環境曝露を受けやすい組織であり、アレルギー炎症を起こしている直接的な組織であるためかもしれない。NMSCのLPCAT2のメチル化により重症度が推定できる可能性が示唆されたことから、NMSCのLPCAT2のメチル化はAR診療の補助となる新規のバイオマーカーとなるかもしれない。

■結論■
 NMSCにおけるLPCAT2のメチル化はARの重症度を反映している可能性があり、治療法の選択肢を提供するための新しいバイオマーカーとなる可能性がある。

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