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血小板輸血不応の項を含む修正診断基準による、類洞閉塞症候群の早期診断

市川, 大哉 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Early diagnosis of sinusoidal obstruction
syndrome after hematopoietic stem cell
transplantation, with modified diagnostic
criteria including refractory thrombocytopenia

市川, 大哉
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8727号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485911
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

学 位 論 文 の内 容 要 旨

Early diagnosis of sinusoidal obstruction syndrome
after hematopoietic stem cell transplantation, with modified
diagnostic criteria including refractory thrombocytopenia
血 小 板 輸 血 不 応 の項 を含 む修 正 診 断 基 準 による、
類 洞 閉 塞 症 候 群 の早 期 診 断

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
腫瘍・血液内科学
(指導教員:南 博信 教授)
市川 大哉

類 洞 閉 塞 症 候 群 ( SOS) は、造 血 幹 細 胞 移 植 術 ( HSCT) における致 命 的 な
合 併 症 の一 つである。SOS の治 療 薬 としては、唯 一 承 認 されているデフィブロ
チドが広 く用 いられているが、1 日 でも早 い治 療 介 入 が予 後 を改 善 させることが
知 られており、早 期 診 断 が非 常 に重 要 である。
HSCT 直 後 では血 球 回 復 が不 十 分 であるといった理 由 から、肝 生 検 など侵
襲 的 な処 置 の施 行 が困 難 なため、SOS の診 断 にあたっては代 替 としての臨 床
診 断 基 準 ( 修 正 Seattle 基 準 や Baltimore 基 準 ) が長 く用 いられてきた。現 在
は 、 2016 年 に European Society for Blood and Marrow Transplantation
( EBMT) が提 唱 した診 断 基 準 ( EBMT16 診 断 基 準 ) が gold standard として主
に用 いられている。EBMT16 診 断 基 準 において、古 典 的 SOS( HSCT 後 21 日
以 内 に発 症 する SOS) は、2mg/dL 以 上 の高 ビリルビン血 症 に加 え( 1) 有 痛 性
肝 腫 大 ( 2) 腹 水 ( 3) HSCT 前 のベースライン体 重 から 5% を超 える増 加 の
いずれか 2 つ以 上 を満 たした場 合 に診 断 される。しかし、ビリルビン上 昇 は SOS
の比 較 的 晩 期 に発 生 すると言 われており、これが必 須 である EBMT16 診 断 基
準 では、診 断 の遅 れが生 じる可 能 性 がある。
その後 、Cairo らは、輸 血 不 応 性 の血 小 板 減 少 の項 を含 む 修 正 診 断 基 準
( Cairo 診 断 基 準 ) を提 唱 した。具 体 的 には、( 1) 施 設 基 準 値 上 限 ( 本 研 究 で
は 1.5mg/dL) を上 回 る高 ビリルビン血 症 ( 2) HSCT 前 のベースライン体 重 か
ら 5% 以 上 の増 加 ( 3) 血 小 板 輸 血 不 応 性 の血 小 板 減 少 ( 4) 肝 腫 大 ( 5)
右 季 肋 部 痛 ( 6) 腹 水 ( 7) Doppler エコーにおける、門 脈 血 の逆 流 の所 見
の 7 項 目 のうち 2 つ以 上 を満 たした場 合 に SOS と診 断 する。あるいは、( 1)
SOS に矛 盾 しない肝 生 検 の所 見 ( 2) 門 脈 楔 入 圧 の上 昇 のいずれかを満 た
した場 合 に SOS と診 断 する。Cairo 診 断 基 準 はビリルビン上 昇 を必 須 としてお
らず、また血 小 板 減 少 の項 やエコー所 見 の項 を含 むことなどが既 存 の診 断 基
準 と異 なっている。そのため、Cairo 診 断 基 準 の適 用 によって SOS の早 期 診 断
が可 能 となることが期 待 されるが、この診 断 基 準 の有 用 性 や妥 当 性 などについ
て検 討 し た報 告 は無 い。そこで我 々は今 回 、 神 戸 大 学 医 学 部 附 属 病 院 腫
瘍 ・ 血 液 内 科 において同 種 HSCT を施 行 された 154 例 に対 して Cairo 診 断 基
準 を適 用 し、その早 期 診 断 における有 用 性 などに関 する後 方 視 的 検 討 を行 っ
た。
今 回 の検 討 では、観 察 期 間 を移 植 後 21 日 までとした。Cairo 診 断 基 準 にお
け る 血 小 板 輸 血 不 応 性 と は 、 24 時 間 後 の 補 正 血 小 板 増 加 数 ( corrected

count increment; CCI) が 4.5×10 9 /L 以 下 であることと定 義 した。それぞれの診
断 基 準 による診 断 日 の差 を、Wilcoxon 符 号 付 順 位 和 検 定 を用 いて有 意 性 を
判 定 した。全 生 存 割 合 は Kaplan–Meier 法 を用 いて描 出 し、log-rank 検 定 に
よって比 較 を行 った。統 計 学 的 有 意 性 は、P 値 が両 側 0.05 未 満 であることと定
めた。
結 果 、現 行 の EBMT16 診 断 基 準 によって 10 例 の SOS 患 者 が同 定 され、こ
れを参 照 標 準 として用 いた。Cairo 診 断 基 準 では、EBMT16 診 断 基 準 に比 べ、
有 意 に早 く SOS の診 断 が可 能 であった( Cairo 診 断 基 準 を用 いた診 断 日 から
EBMT16 診 断 基 準 での診 断 日 までの期 間 の中 央 値 5 日 、範 囲 0–16 日 ) 。感
度 は 100.0% 、特 異 度 は 72.2% であり、偽 陽 性 が多 いと推 定 され、診 断 精 度
の点 ではやや問 題 があると考 えられた 。なお今 回 の検 討 では、観 察 期 間 中 に
エコーにおける門 脈 血 の逆 流 の所 見 は 1 例 で認 められた。肝 生 検 や門 脈 楔 入
圧 の測 定 を施 行 された例 は存 在 しなかった。
続 いて、Cairo 診 断 基 準 のカットオフとなる項 目 数 を、7 項 目 中 3 と設 定 して
検 討 を行 った。この場 合 でも EBMT16 診 断 基 準 と比 較 して有 意 に早 く SOS 診
断 が可 能 であり( 中 央 値 3 日 、範 囲 0–16 日 ) 、かつ診 断 精 度 は向 上 した( 感
度 100.0% 、特 異 度 86.1% ) 。カットオフを 4 と設 定 すると、診 断 精 度 はさらに
向 上 した( 感 度 100.0% 、特 異 度 93.8% ) が、統 計 学 的 に有 意 な早 期 診 断 は
達 成 できなかった( 中 央 値 0.5 日 、範 囲 0–9 日 ) 。カットオフを 5 と設 定 すると、
診 断 精 度 の悪 化 が見 られた( 感 度 70.0% 、特 異 度 100.0% ) 。
また、Cairo 診 断 基 準 を達 成 した群 の HSCT 後 100 日 生 存 割 合 は 65.4% 、
未 達 成 の群 では 96.0% であり、Cairo 診 断 基 準 の達 成 によって生 命 予 後 が有
意 に悪 化 することが示 された( ハザード比 2.55、95% 信 頼 区 間 1.53–4.22) 。
デフィブロチドによる治 療 では出 血 や低 血 圧 といった、時 に致 命 的 な副 作 用
が認 められるため、SOS と過 剰 に診 断 して治 療 を行 うこともまた問 題 といえる。
そのため元 のカットオフ 2 の使 用 は、早 期 診 断 が可 能 という意 味 では有 用 であ
るが、偽 陽 性 が多 く過 剰 に SOS と診 断 してしまうリスクも含 んでいると考 えた。こ
れをふまえて、同 様 に 早 期 診 断 が可 能 で診 断 精 度 も比 較 的 良 好 である、カッ
トオフを 3 に設 定 することがより妥 当 と考 えた。また、早 期 診 断 には寄 与 しなか
ったが、診 断 精 度 の点 から、カットオフを 4 に設 定 することも有 用 と考 えられた。
なお、カットオフを 5 以 上 に設 定 すると感 度 の低 下 が発 生 し、致 命 的 合 併 症 で
ある SOS の見 逃 しに繋 がるため、不 適 と考 えた。

今 回 の検 討 では、エコー所 見 の陽 性 例 が少 なく、診 断 へ の寄 与 があまり見
られなかった。その原 因 として、門 脈 血 の逆 流 は SOS の晩 期 に認 められる所 見
で あ る こ と が 挙 げ ら れ た 。 エ コ ー に よ る SOS の 診 断 で は 、 最 近 優 れ た 指 標
( HokUS-10) が報 告 されているため、これらを参 考 とした Cairo 診 断 基 準 の改
良 が望 まれる。
本 研 究 の限 界 として、単 施 設 で行 われた小 規 模 後 方 視 的 検 討 であること、
肝 生 検 によって組 織 学 的 に診 断 された古 典 的 SOS 症 例 が存 在 しなかったこ
と、HSCT 後 22 日 以 降 の遅 発 性 SOS に関 しては検 討 できていないこと、が挙
げられた。
以 上 の結 果 により、Cairo 診 断 基 準 は、確 立 された診 断 基 準 と同 等 ・ あるい
はそれ以 上 に臨 床 的 に有 用 であること、特 にカットオフの項 目 数 を 3 あるいは 4
と設 定 した場 合 に有 用 であることが結 論 付 けられた。

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

論文題目
Ti
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l
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Di
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a
t
ion

甲第

3
31
6 号





受付番号

市川大哉

血小板輸血不応の項を含む修正診断基準による、類洞閉塞症候群の
早期診断

g
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a

主 査
審査委員
Exam
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Chi
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fExami
n
e
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副 査
Vi
ce-exami
ne
r
副 査
Vi
c
e
-exa
mi
ne
r

臼亨冑:

(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)

【背景と目的】

O
S
) は、造血幹細胞移植術 (
H
S
C
T
) における致命的な合併症の一つで
類洞閉塞症候群(S
OSの治療薬としては、唯一承認されているデフィブロチドが広く用いられている
ある。 S

、 1日でも早い冶療介入が予後を改善させることが知られており、早期診断が非常に重

0
1
6年に E
u
r
o
pe
anSoci
etyf
o
rBloodandMarrow
要である 。 SOSの診断には 2
t
at
ion (
E
B
M
T
) が提唱した診断基準 (
E
B
M
T
1
6診断基準)がgolds
t
andardとし
T
ransplan
B
M
T
1
6診断基準では、診断の遅れが生じる可能性が指摘され、
て用いられている 。しかし、 E
Cai
r
oらは輸血不応性の血小板減少の項を含む修正診断基準 (
C
ai
ro診断基準)を提唱した。
Cai
ro診断基準の適用によって S
O
Sの早期診断が可能となることが期待されるが、この診
断基準の有用性や妥当性などについて検討した報告は無い。 そこで本研究では、神戸大学
医学部附属病院

5
4例に対して Cai
ro診
腫瘍・血液内科において同種 HSCTを施行された 1

断基準を適用し、その早期診断における有用性などに関する後方視的検言寸を行った。

方法 】

1日までとした。Cai
ro診断基準における血小板輸
今回の検討では、観察期間を移植後 2
4時間後の補正血小板増加数( c
o
r
r
e
ct
e
dc
o
u
nti
ncrement;C
C
I
) が 4.
5
血不応性とは、 2
X1
0
9
/
L以下であることと定義した。それぞれの診断基準による診断日の差を、

Wi
l
c
o
x
o
n

符号付順位和検定を用いて有意性を判定した。全生存割合は Ka
pl
a
n
M
ei
e
r法を用いて描出

og-rank検定によって比較を行った。統計学的有意性は、 P値が両側 0.
0
5末満である

、 l
ことと定めた。
【結果】

BMT16診断基準によって 1
0例の SOS患者が同定され、これを参照標準として用
現行の E
ro診断基準では、 EBMT16診断基準に比べ、有意に早 <
sosの診断が可能であ っ
いた。Cai
C
ai
ro診断基準を用いた診断日から EBMT16診断基準での診断日 までの期間の中央値 5
た (
日、範囲 01
6日
) 。感度は 1
0
0.
0%、特異度は 7
2
.2%であり、偽陽性が多いと推定され、
診断精度の点ではやや問題があると考えられた。 なお今回の検討では、観察期間中にエコ
ー における門脈血の逆流の所見は 1例で認められた。肝生検や門脈楔入圧の測定を施行さ
れた例は存在しなかった。

r
o診断基準のカットオフとなる項目数を、 7項目中 3と設定して検討を行 っ
続いて、 Cai
BMT16診断基準と比較して有意に 早 <
sos診断が可能であり(中央値 3
た。 この場合でも E
日、範囲 0
-16日)、かつ診断精度は向上した(感度 1
0
0.
0%、特異度 8
6
.1
%) 。カットオ

0
0.
0%、特異度 93.8%) が、統
フを 4と設定すると、診断精度はさ らに向上した(感度 1
.5日、範囲 0
9日
) 。カットオフ
計学的に有意な早期診断は達成できなかった(中央値 0
を 5と設定すると、診断精度の悪化が見られた(感度

7
0
.0%、特異度

1
0
0.
0%) 。

ro診断基準を達成し た群の HSCT後 1
0
0日生存割合は 65.4%、未達成の群では
また、 Cai

96.0%であり、 Cai
ro診断基準の達成によって生命予後が有意に悪化することが示された

(ハザード比 2.55、9
5%信頼区間

1
.53-4.
2
2
)。


論考・結論】
デフィブロチドによる治療では出血や低血圧といった、時に致命的な副作用が認められ
るため、 SOSと過剰に診断して治療を行うこともまた問題といえる 。 そのため元のカット
オフ 2の使用は 、早期診断が可能という意味では有用であるが、偽陽性が多く過剰に SOS
と診断してしまうリスクも含んでいると考えられた。これをふまえて、同様に早期診断が
可能で診断精度も比較的良好である 、カットオフを 3に設定することがより妥当と考えら
れた。また 、早期診断には寄与しなかったが、診断精度の点から、カットオフを 4に設定
することも有用と考えられた。なお、カットオフを 5以上に設定すると感度の低下が発生
し、致命的合併症である SOSの見逃しに繋がるため不適と考えられた。
今回の検討では 、エコー所見の陽性例が少なく 、診断への寄与があまり見られなかった。
その原因として 、門脈血の逆流は SOSの晩期に認められる所見であることが挙げられた。
HokU
S-10) が報告されているため、 これ
ェコーによる SOSの診断では、最近優れた指標 (

らを参考とした Cai
ro診断基準の改良が望まれる 。
本研究の限界として 、単施設で行われた小規模後方視的検討であること 、肝生検によっ

o
s症例が存在しなかった こと、HSCT後 22日以降の遅発
て組織学的に診断された古典的 s
性 SOSに関しては検討できていないことが挙げられた。
以上の結果により 、 Ca i ro 診断基準は、確立された診断基準と同等 • あるいはそれ以上

に臨床的に有用であること 、特にカットオフの項目数を 3あるいは 4と設定した場合に有
用であることが結論付けられた。

ro診断基準が従来の EB
MT16診断基準と
本研究は、類涸閉塞症候群の診断にお いて、Cai

同等の診断能を有することを示し、その診断項目数のカットオフにより早期診断に寄与し
得る可能性を示した価値ある業績であると認める 。 よって本研究者は、博士(医学)の学位
を得る資格があるものと認める 。

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